■ DNAって何 ■
今日は高校生の生物の授業を復習します。
上のイラストはDNA(デ・オキシ・リボ核酸)の模式図です。
私達の遺伝情報は染色体を構成するDNAによって伝達する事は高校で習います。
① DNAは4種類のアミノ酸によって出来ている。
② アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類
③ DNA1個の原子数はは4200億個(4.2x10_11乗個)
④ 140億個の対になるアミノ酸が存在しする。(一分子平均15原子として)
⑤ DNAは140億個の4種類の文字でコードされている情報。
DNAはどの細胞でも共通です。頭髪の毛根細胞だろうが、心臓の筋肉細胞だろうが、DNAは共通です。
では、DNAはどの様に私達の体を作っていくのでしょうか?
■ DNAはタンパク質の設計図 ■
私達の体は、様々なタンパク質によって出来上がっています。
「骨は違う」とお思いでしょうが、コラーゲンというタンパク質が骨の下地を構成し、そこにカルシウムが集まって補強されたものが、骨です。
DNAからタンパク質を作る方法は少々複雑です。
① あるタンパク質を作れという指令が出る
② RNAポリメラーゼという酵素がDNAのある部分を転写してRNAを作る
③ リボゾーム内でRNAの情報を元にタンパク質を作る
(実際にはもう少し複雑ですが・・・)
■ タンパク質は有機ナノマシーン ■
上のイラストは血液中で酸素の運搬を担う「ヘモグロビン」の分子を模式化した図です。ヘモグロビンもタンパク質の一種です。
私は、「タンパク質は化学的に作用する」と漠然と考えていました。しかし最新の研究でタンパク質は機械的に作用する事が判明してきました。
例えば、ヘモグロビンが酸素と結合したり、放出したりするのは、ヘモグロビンの一部に凹みがあり、ここの電位の変化で機械的に酸素つ捕まえる事が分かっています。(イラストの○の範囲内)
① style="font-weight:bold">■ ほとんどがジャンク情報のDNA ■
これだけ精密なナノマシーン群を作り出すDNAは精密なデータの集合体だとお思いでしょう。
全然違います。人のDNAの97%がジャンク情報(ゴミ)です。タンパク質の合成に関与しているのは全体の3%に過ぎません。
■ 冗長性がエラーを防ぐ ■
ではこの「ゴミ」は不必要なのでしょうか?
私はこの「ゴミデータ」こそが、DNAを破壊から守っていると考えています。
① 活性酸素や放射線や化学物質がDNAの結合を切断
② 普通は正常にDNAが修復される
③ ある確率でDNAの修復に失敗
④ 修復に失敗したDNAの97%はジャンクなので、実害は発生しない
⑤ 複製されたDNAもエラーを残しながらも、正常に働く
コンピューターのデータも冗長性というエラー防止の為の無駄なデータが入っています。DNAの大量のジャンクデータを持つ事で、深刻なエラーの発生頻度を低下させているのでしょう。
■ DNAは「安全姿勢」を取っている ■
上の図は細胞の模式図です。
細胞中央の球体の部分にDNAが納められています。
① DNAは普段はコンパクトに畳まれている
② RNA転写の時に部分的に解ける
③ 細胞分裂の際に、解けて全DNAが転写される
④ 折りたたまれたDNAを染色体と呼ぶ
さて、DNAは何故畳まれたいるのでしょう。
飛行機が墜落する時、皆さんはどんな姿勢を取るでしょうか?
頭を膝の間に入れて、背を丸めた安全姿勢です。
安全姿勢は体表面積を最小にして、外部からのの攻撃を受ける確率を小さくする姿勢です。
細胞内でDNAは「安全姿勢」を取り、細胞の中心に密集する事で、外からの破壊の影響を最小に抑えています。
■ 水というバリアーと抗酸化作用 ■
放射線が細胞に打ち込まれても、DNAの回りは大量の「水」で守られています。多くの放射線がDNAに到達する前に、水の分子を放射線分解して、活性酸素を作ります。
① 水の分子が放射線分解する
② 活性酸素種が発生((O2-)、(H2O2)、(・OH))
③ 様々な抗酸化物質で活性酸素を無害化
④ 活性酸素は放射線の他、化学物質やストレス、運動によっても絶えず発生。
活性酸素は強い参加作用を持ち、DNAの水素結合を破壊します。
しかし、多くの活性酸素がDNAを破壊する前に、抗酸化作用により無害化されます。
何故なら、生物の進化の歴史は酸化(酸素)との戦いだったのです。
以前は独立した生物であったミトコンドリアを細胞内に取り込んで、酸素をエネルギー源に変えるまでは、生物は酸素を最も恐れていました。それ故に、細胞は活性酸素を除去するシステムは進化の初期に獲得しています。
「水」と「活性酸素の除去」という二重の防御機構を有する故、DNAが直接放射線に破壊される確率は低いのです。
■ DNAには自己修復機能がある ■
ところが、DNAの破壊は1細胞あたり1日最大50万回も発生します。
① 紫外線や放射線によるDNAの破壊
② 転写や複製時のエラー
③ DNAは自己修復機能を有し、これらのエラーを修復する
ところが、修復がエラーを起こす事も起きます
① 一般的には修復エラーは細胞の老化として、細胞の死に至る
② エラーの蓄積した細胞は「自殺=アポトーシス」する。
■ 「細胞の自殺=アポトーシス」が癌化を抑制 ■
「低線量の放射線でも癌が発生する」と唱える人達は、アポトーシスの影響を軽視しています。
① 内部被曝によってDNAが繰り返し損傷を受ける
② DNAのエラーが増えていく
③ ある時点で、アポトーシスが発生し、エラーの蓄積した細胞は死に至る
これが自然の成り行きです。
■ 「異常細=癌」では無い ■
多くの人が「異常細胞=癌」だと思っています。
① 癌は「異常増殖」する細胞である
② 普通の細胞は「増殖抑制因子」が働いていて、むやみに癌化しない
③ 稀に「増殖抑制因子」の働きが損なわれ、癌化する細胞がある。
■ 癌を攻撃するT細胞 ■
生体の免疫系は様々なシステムで、癌細胞を駆逐します。
① 癌細胞は通常細胞では生産しないある種の「抗原」を生産
② 原細胞障害性T細胞(CTL)は腫瘍免疫の主役を担う細胞
③ 原細胞障害性T細胞(CTL)が癌の抗原に引き付けられて癌細胞を駆逐
④ NK細胞やNKT細胞、マクロファージ、顆粒球などの自然免疫も癌の進展を抑制
■ 人体の「発ガン」抑制システム ■
どうでしょう?人間の癌駆逐システムがいかに優れたものか理解頂けましたか?
① DNAは冗長性によって耐破壊性がある
② DNAは水と抗酸化作用に守られている
③ DNAの破損と修復は極めて普通の現象
④ DNAにエラーが蓄積すると、細胞は自殺する(アポトーシス)
⑤ 異常細胞が癌細胞では無い
⑥ 異常増殖細胞(癌細胞)は、様々な免疫系によって駆逐される
これらの人間の優れた癌に対する免疫反応を「しきい値なしの直線(LNT)仮説」を支持すり人達は「無視できる」としているのです。これは暴論です。
■ 「内部被曝」と「外部被曝」は同一 ■
LNT仮設派は、低線量率放射線による顕著な発ガン率の増加が立証できないので、「内部被曝」という概念を持ち出しました。
これは、ダイオキシンの一般被曝量での発ガン性が立証できないので、「環境ホルモン」とう新しい概念を持ち出した事に酷似しています。
ところで、ミクロの目で見れば、「外部被曝」と「内部被曝」にどんな差があるでしょか?
反原発論者の間違いは、マクロの放射とミクロの放射を取り違えている点です。
反原発論者はこう主張します
① 放射線強度は距離に二乗に反比例する
② 1mと1μmでは放射線強度は1兆倍の差がある
私も最初は騙されました。光も放射線も同じ輻射ですから、距離の逆二乗則はマクロな視点では正しいと言えます。
ところが、1μmの領域はミクロの領域です。この領域では「集合としての放射線」では無く、「放射性物質の個々の放射線放出」と捕らえるべきです。
ニュートン力学が、量子力学レベルで適用されないのと同様です。
① 体から離れた位置、あるいは体表の放射線源からの放射線は「放射線束」と捕らえるべき
② 放射線強度は「放射線束/単位立体角(ステラジアン)」で定義される。
③ 被曝放射線量は「放射線強度/単位面積」で定義される。
以上はマクロな視点で見た、被曝量の計算です。
① 細胞一個一個といったミクロの視点では、放射線が当たるケースと当たらないケースがある
② 体全体では放射線が存在して人体に当たれば100%被曝する
③ ミクロの領域(細胞一個一個)では、被曝は確率的になる。
どうでしょう、内部被曝はミクロのオーダーを対象にしています。
ミクロの領域では、放射線は存在するかも知れないし、存在しないかも知れないのです。
ミクロの領域での放射線の被曝量と言った時は、存在しない確率を無視しているのです。
ミクロの領域では、内部被曝も外部被曝も作動原理は同一です。
1個の放射線(量子)が、細胞を構成する原子や分子にどう作用するかだけです。
■ 甲状腺と骨や筋肉では放射密度が異なる ■
チェルノブイリで甲状腺ガンが多発した事から、内部被曝の危険性を主張する人達もいます。
① 幼児や子供は甲状腺の働きが活発である
② 子供の甲状腺はヨウ素の代謝が活発である
③ ヨウ素131は甲状腺に蓄積する
④ ヨウ素131の半減期は8日である
⑤ ヨウ素131の1個の原子は、ベーター崩壊して1個の電子を放出すると放射性を失う
⑥ 半減期の短い原子集団は比較的多くの放射線を短時間に放出るす。
⑦ 半減期8日のヨウ素131は、比放射能が4.6*10_15乗
⑧ ヨウ素131は高い放射線を発する原子
⑨ 大量のヨウ素131が甲状腺に集まると、甲状腺は高い被曝をする
確かにヨウ素131は危険と言えます。
その結果、チェルノブイリ周辺では、子供の甲状腺ガンが多発しました。
軍は昔からこの事を知っていて、被曝の恐れのある軍事行動の前には、兵士達は安定ヨウ素剤を服用して、甲状腺にヨウ素131が蓄積する事を防いでいます。
それではヨウ素131の次に多く検出されるセシウム137はどうでしょうか?
① セシウム137は体はカリウムと区別が付かないので、筋肉や神経に分散
② セシウム137の半減期は30.2年
③ セシウム137は30.2年で半分の量が分子がベータ崩壊する
④ セシウム137の崩壊頻度はヨウ素131の1/1377である
⑤ セシウム137のヨウ素より放射線が1377分の1も少ない
⑥ セシウム137は100日程度で体外に排出される
セシウム137は体内に分散的に存在し、半減期も長いので、体外に排出されるまでに体の一部を集中的に被曝させる事はありません。
これは、天然由来のカリウム60がほぼ体に無害なのと全く同じです。
同様にカルシウムの代わりに骨に蓄積するストロチウムもカリウム60と全く同じ振る舞いなので、ほば無害です。
プルトニウムに至っては、半減期が2万年を越えていますから、少量の被曝で怖がる必要すらありません。もし、仮に被曝しても、強力なアルファー波を浴びた細胞はアポトーシスする確率の方が高いでしょう。
■ 甲状腺癌は安定ヨウ素の摂取で予防できる ■
内部被曝で注意が必要なのは、子供の甲状腺である事は明確です。
甲状線の被曝は甲状腺を安定ヨウ素で満たしておけば防げます。
ポーランドではチェルノブイリ原発事故後、全国民に安定ヨウ素剤を服用させた結果、ポーランドでは甲状腺癌の発生を押さえ込みました。
日本人は海産物や海藻類から日常的に安定ヨウ素を摂取しています。
日本人の甲状腺は、平均的な食生活をしていれば、安定ヨウ素で満たされています。
むしろヨウ素お過剰接収は、甲状腺の亢進を起こし、体に障害をおこします。
海藻類の暴食は、手足の冷えなどの症状が現れるようです。
■ 「低線量率被曝でも癌の発生率が上昇する」という統計のトリック ■
「しきい値なしの直線(LNT)仮説」を主張する人達のよりどころは、「47年間、毎年10mSV 浴び続けると1.8%、年間50mSVで8.6%がんで死亡したという追跡調査」だったりします。
年間50(mSv/年)の被曝をする人達とは誰でしょうか。
もし、これが原発作業員であったりすれば、彼らは集団として放射線以外に一般の人と異なる点は無いでしょうか?
① 原発作業員の喫煙率は一般人の平均より高い
② 原発作業員の飲酒量は一般人の平均より高い
あくまでも推測ですが、デスクワーカーより一般的な作業員の喫煙率も飲酒率も一般人より高めでしょう。
人間は実験用マウスとは異なります。
統計処理される集団に、目的因子以外の因子の影響が強く働く事を除外する事が難しいものです。
ちなみに喫煙による発ガン率は、非喫煙者の10倍。11.4%にもなります。
これは全く無視できない因子です。
私は医学的統計をあまり信用しません。
恣意的な母集団を選択すれば、統計データなど変化してしまうからです。
■ 本当に怖いのは、妊婦や将来子供を生む女児の被曝 ■
被曝の影響が最も大きいのは、細胞の分化が活発な受精直後の胚や胎児、そして受精前の卵子、精子でしょう。
細胞数が少ないのですから、被曝によりDNA異常はダイレクトに反映されます。
女の子は胎児の時に既に原始卵包が準備され、それを一生使い続けます。胎児の時や、子供の時の被曝の影響が、その子供の代に現れるかもしれません。
■ 妊娠時の免疫低下 ■
チェルノブイリでは14歳の頃に被曝した女児が成長して妊娠した時に、癌になったケースが報告されています。
新型インフルエンザの死亡率が妊婦で高かったのは、妊娠時に胎児を保護する為に免疫グロブリンが低下するからだとの報告があります。
女の子の場合は、現在の被曝が将来の健康障害につながる可能性があります。
■ 合理的判断を ■
「弱い放射線も危険」という「閾値なしの直線(LNT)仮説」を唱える人達が、いかに無理な理論を振りかざして、放射線の恐怖を煽ってきたか、お分かりいただけたでしょうか?
内部被曝とて、ヨウ素に関する限りは、ある程度コンロールでき、他の放射性元素の影響を取るに足らないのです。
20(mSv/年)という国の暫定基準は、保守的で、それゆえに7万人の人々を故郷から追いたて、さらには謂れの無い差別を生み出しています。
私も「原発はあってはならない」と考えていますが、実際にその原因を作っているのは、放射線による健康被害では無く、過剰な安全意識なのかもしれません。
・・・最後までお付き合いいただいた方、ありがとうごあざいます!!