■ ゴールドマン・ショック ■
先週末に金融市場か国債市場で何か大きな事件があるかと予測していましたが、出てきたネタは、米証券取引委員会(SEC)がゴールドマンサックスを訴追したという比較的地味なネタでした。
各市場はお約束通り、ちょっとビックリして値を下げましたが、直ぐに回復を始めています。サメの影に怯えた小魚が、サッっと逃げて、直ぐに又戻って来る様子に似ています。尤も、サメの腹に取り付いたコバンザメ達は、しっかりエサにありついたのでしょう。加熱気味だった株式市場などは、丁度良い調整と、金融資本家達の利益確定になった事でしょう。
■ 詐欺まがいの商売 ■
ゴールドマンがSECに訴追された原因は、「サブプライムローンの住宅債券が下落する事を事前に知っていながら、顧客にそれを販売し、さらには自ら空売りで儲けを出したのでは無いか」という疑惑です。将に詐欺まがいというか、詐欺そのものです。
以前からこの点は指摘されていましたが、サブプライム・ショック直後の評価は、ゴールドマンの先見性を称える記事が多かった様に記憶しています。「サブプライムショックを事前に予測して空売りを仕掛けたゴールドマンは世界一の投資銀行だ。」という論調でした。
冷静に考えれば、ゴールドマンの顧客も損失を被った事は充分想像出来たはずですが、金融商品の中に紛れ込ませたサブプライムの損失分が表面化するには時間を要したのでしょう。
■ ゴールドマンの商品の中身 ■
上図はゴールドマンサックスが一般投資家(老人達でしょうか)向けに販売している「妖精物語」という、ふざけた名前の投資信託のポートフォリオです。リーマンショックでボロボロになった投資ファンドが多い中で、国債運用が多い事などから比較的損失の少なかった金融商品の様です。
さて、この中身を仔細に眺めてみると、彼らの商売が良く分かります。
「国債、社債、モゲージ債に分散投資し、格付けはAAAが7割程度、平均格付けがAA。ドルとユーロに分散して通貨リスクを低減しています。」と説明されても老人達にはチンプンカンプンでしょうが、何だか安心出来る気がしてきます。
AAAが7割、AA以上が8割なのに平均格付けはAA?
先ずこの点が疑問です。残りの2割がほとんどゴミだという事なのでしょうか?
ファニーメイの住宅証券がAAA??
既に事実上破綻して国家管理になっている企業の発行した証券が、ポートフォリオのトップに来ている事からして、既に無神経極まり無いのですが、その格付けがAAA(ムーディーズ)というのも大笑いです。
それぞれの投資先の比率が1%台ですから、表に現れない所で、オゾマシイ投資先の名前がズラリと並んでいそうでゾッとします。
ゴールドマンに騙された大口の顧客は、訴訟を起こしたりしていますが、自分が騙された事も知らず、毎月の配当金に騙されて、事実上は半分以上の価値が失われている投資ファンドを日本の老人達は大事に抱えているのです。
■ 国家ぐるみの詐欺行為 ■
罪はゴールドマン一社にある訳ではありません。
金融危機を口実に、紙屑になった債権の時価会計を停止したアメリカの金融行政そのものが、国家詐欺とも言える存在です。財務長官がゴールドマン出身者なのですから、当然と言えば当然ですが・・・。
■ 今、何故ゴールドマン叩きなのか ■
事の本質は、「今、何故ゴールドマンは叩かれるのか」という点にあります。
リーマンショック後、ゴールドマンはいち早くリスク指向を強め、他社を出し抜いて一人勝ちの様相を呈していました。それが他社の癇に障ったのでしょうか・・・?
世間の見解は、「オバマは中間選挙で勝利を収める為に、金融規制法案(ボルガールール)を成立させたいが。国民の反感を買っているゴールドマンを叩いて法案可決の弾みにしようとしている。」というものでしょう。
しかしオバマの選挙資金の多くはゴールドマンが出していると言われています。ロスチャイルドの大統領が、ロスチャイルドの勇、ゴールドマンを本気で叩くでしょうか?
■ ゴールドマンは2匹目の生贄 ■
フリーメンソンの儀式は生贄を捧げていた様ですが、国際金融資本家達も生贄がお好きな様です。1匹目はロスチャイルドの身内から、リーマンブラザーズを差し出しました。
生贄は敵では効果が薄くなります。自分の身内から出す事で、痛みを伴う犠牲の代償として大きな富を得る事が出来るのです。尤も、王自らが生贄になる事はありません。生贄には、たっぷりと肥え太らせた者が最適です。
悪徳金融商品で焼け太りしたゴールドマンにはピッタリな役回りです。
兄弟のAIGもゴールドマンを非難し始めました。何だか芝居めいていて興醒めします。
■ 金融不安からソブリンリスクが拡大 ■
大統領自ら国民にデリバティブの残高が605兆ドル(6京5兆円)あると語った様ですが、最早、これだけの大金を金融機関が投資家にバックする事は奇跡が起きても不可能です。
ですから、金融はいづれは崩壊する運命です。
<ロイターからの引用>
[ニューヨーク 22日 ロイター] オバマ米大統領は22日、金融改革に向けた議会の取り組みが失敗すれば危機が繰り返されるとして、金融業会関係者に対し改革に反対することを止めて参加するよう呼びかけた。
オバマ大統領は、ニューヨークのクーパーユニオン・カレッジで金融業界関係者を含む聴衆を前に演説し「改革実現に向けた取り組みに抵抗するのではなく参加するよう求める」と訴えた。
「今回の危機から学ぶことが不可欠だ。われわれは危機を繰り返してはならない」と強調し「この機会を逃せば(危機が)再発することは目に見えている。それは自分にとっても国民にとっても受け入れることはできない」と語った。
<引用終わり>
大統領のこの発言は、「我々は未だ金融危機さ最中にある」と読む方が賢明でしょう。
しかし、問題はその先にあります。
各国が莫大な財政を出動して支えていた金融が崩壊すれば、先進各国の財政危機に注目が集まり、結局は巨大なソブリン崩壊を生み出します。
米国債やイギリス国債のデフォルトは、国債とペーパーマネーの信用失墜というダブルパンチで各国を蹂躙します。
■ 日本だけが安全と何故信じるのか ■
巷では「日本国債は日本の国内で96%がファイナンスされているから大丈夫」という意見が多く見られます。しかし、各国の金融危機が深刻化した時点で、日本国民とて預金を現金化しようとするでしょう。それは日本の金融機関や生命保険の国債売却という形で日本の国債市場を崩壊させます。
最後の受け皿は、限度額を2000万円に引き上げた郵便局で、国家補償を盾にして、預金流出を阻止しようとするのでしょうが、危機が去った後の2000万円がどれ程の価値を有しているかは誰にも分かりません。400%程度のインフレは簡単に起きてしまうでしょう。
■ 日本国債こそが失われた20年の元凶 ■
日本の国債残高は750兆円です。
バブル以降の低金利によって、金融機関はリスクを嫌い日本国債を無能にも買い支えています。しかし、国債によって民間から集金された資金は、効率の悪い公共投資に浪費されるか、あるいは、アメリカ国債の形で海外に流出してしまいました。
日本の都市部に投資されていれば、マネーストックは何倍にもなって、日本の経済が20年もの低迷を甘受する事は無かったのに、国民の資産は国債という尤も非効率な部門に集中して投資されてしまいました。
日銀の超低金利政策が、資金を国債に誘導していたのです。
日本の米国債保有高は100兆円、一説には700兆円と言われています。
20年間にこれだけの資金が日本国債を通して海外に流出したとも言える事態です。
日本人は働けど働けど豊かさを実感出来ず、気が付けば経済水準も所得も30年前に逆戻りしてしまいました。頼みの綱の貯蓄も、日本国債というバブルに投資されてしまい風前のともし火です。それでも尚、郵貯2000万円限度額などという国債買い支え論を唱える政治家も居ます。
■ 水が干上がれば、小魚もサメも皆オシマイ ■
世間はゴールドマンショックの動向に目を光らせながらも、小魚は性懲りも無く又浅瀬に集まってきています。
しかし、本当の危機はサメの姿をして現れるのでなく、「経済の引き潮」という形で確実に迫っています。新興国の「上げ潮」は先進国の「引き潮」と表裏一体です。
サメから逃げ回っていた小魚は、サメもろとも潮の引いた砂浜に取り残されてしまうかもしれません。沖に逃げた者達の手には金が握られているのでしょうか?
あまりバカ話ばかりでは申し訳ないので、良識的な見解のブログを紹介しておきます。
http://ssoubakan.blog102.fc2.com/blog-entry-726.html
尤も、この方もゴールドマン問題をあまり追及していくと、とんでもない事態に発展するという事に関しては、見解が一致しています。
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