
■ 低血圧の熱血ロボットアニメ ■
今期のアニメの一番のお薦めは『たまこまーけっと』という方も多いでしょう。
しかし、私はあえてこの作品を推したい。
それは『ROBOTICS;NOTES』(ロボティクス・ノーツ)』。
前期から連続の26話なので、今期アニメに分類するのは不公平かも知れませんが、
このアニメ、盛り上がりそうで盛り上がらない「低血圧」な出だしだったので、
本当に面白くなってきたのは今期から。
以前、このブログでも控えめに取り上げています。
ロボットは「夢と希望とロマン」だ・・・『ROBOTICS;NOTES』に見るサイバニクスの未来
中央種子島高校の「ロボット研究部」の部員達が、
実際に歩行可能な巨大ロボットを製作して
東京で開かれる「ロボット博覧会」に出品するという話です。
ところが、その裏では、世界中のロボットを暴走させるという
恐ろしいプロジェクトが進行していおり、
主人公達が、何らかの形で、その陰謀に巻き込まれて行くというお話し。
原作は所謂、ギャルゲーだった様で、
『STEINS;GATE』(シュタインズ・ゲート)と同じ松原達也 がゲーム・プロデューサー。
シュタインズもそうでしたが、このシリーズ、
何故か、26話構成で、前半がイマイチ盛り上がりに欠けます。
ゲーム原作なだけに、「仕込み」に時間を取られる様で、
ラノベや漫画原作の様に、冒頭にキャッチーな掴みが無い。
人物紹介や背景紹介を丁寧に積み上げてゲーム世界に没入させるのと同様に、
アニメでも出だしは、それぞれの登場人物が丁寧に描写され、
そして、日常のエピソードが丹念に積み上げられてゆきます。
そして、それぞれの回に、チラ見程度に謎や陰謀の欠片がちりばめられています。
視聴者は、あたかもゲームをプレイするが如く、
小さな違和感や、前兆を丹念に収集して、物語の背後で進行する巨大な陰謀に迫ります。
ゲームでは、プレイの楽しみになるこの「陰謀の断片の収集」ですが、
アニメでやられると、いささか、ダルイ。
主人公の八汐 海翔(やしお かいと)の無気力な性格との相乗効果で、
作品自体、非常に低血圧で、寝起きというか、立ち上がりの悪さが目立っていました。
しかし、1話目から、「名作」のニオイがそこはかとなく漂うから困ります。
製作はProduction I.Gで、『サイコパス』と同時進行、
どうしても、それと比べてしまいますが、
私は「出来すぎ」のサイコパスよりも、多少問題はあっても
『ROBOTICS;NOTES』に強く引かれました。
「これは大化けする」・・・これは47歳のアニメファンの勘です。
■ ロボコン的高校生の熱血ストーリーと思いきや・・・ ■
中央種子島高校3年生の瀬乃宮 あき穂(せのみや あきほ)はロボット大好き少女。
伝説的な人気ロボットアニメ『ガンバレル』が彼女の人生のバイブルとも言えます。
彼女は「ロボット研究会」の部長として、
「ロボ部」が代々製作してきた実物大(?)ガンバレルの製作に熱中しています。
ところが「ロボ部」とは名ばかりで、現在は部員二人で予算もありません。
もう一人の部員はあき穂の幼馴染、八汐 海翔(やしお かいと)。
彼はロボット製作など全く興味がありません。
暇さえあれば、携帯端末で「ガンヴァレル キルバラッドON-LINE」というゲームに夢中。
しかし、その腕前たるや、ランキングで上位というもの。
そんな二人ですが、実は重大な病気を抱えています。
あき穂は時間が加速して感じられる発作を抱え、
海翔は逆に、時間が止まって感じられる発作を抱えています。
二人の病気は「エレファント・マウス症候群」と呼称されています。
彼らは幼い頃に、船の上で事故に逢い、その後遺症としてこの病気が発症します。
発作はたまににか起きませんが、発作が起きると危険な為、
海翔はいつもあき穂を気遣って、傍にいる様です。
あき穂のロボットオタクには理由があります。
彼女の姉、みさ希が初代ロボ部の部長であり、
あき穂にロボットの素晴しさを教えたのです。
現在、姉のみさ希種子島を離れ、東京のロボットメーカーに就職しています。
しかし彼女はかつての夢を失ったかの様に豹変しています。
そして、そのロボットメーカー、エグゾスケルトン社には何か秘密が隠されています。
そんな高校生の生活に、ある日異変が混入します。
海翔の携帯端末に愛理(あいり)と名乗る少女が現れたのです。
愛理はAIの一種と思われますが、携帯端末で周囲の画像を映すと、スクリーン上に現れます。
愛理は、海翔にある課題を出します。
それは、とある秘密のファイルのアクセス権を獲得する為の課題です。
面倒くさがりの海翔ですが、好奇心に駆られて秘密ファイルの収集を始めます。
ファイルの名前は、君島レポート。
君島レポートはこう警告します。
世界を支配する300人委員会は重大は秘密を隠している。
その秘密とは、太陽の活動異常で地球の食料生産が将来的に激減する事である。
300人委員会はこの事実を隠蔽すると同時に、
人類削減の為のプロジェクトを始動します。
それは・・・ロボットの暴走を装って、人々を抹殺する計画でした。
この時代、産業用や、生活補助、そして福祉用などのロボットが普及しています。
それらのロボットが、太陽嵐の影響で暴走した様に見せかけて
人々を襲うというプロジェクトが密かに進行しているのです。
そして、あき穂の姉が勤めるエグゾスケルトン社はその中核となる企業でした。
君島レポートの警告す300人委員会の計画は以前から進められており、
あき穂が大好きな「ガンバレル」もこの計画に組み込まれていました。
人気ロボットアニメの「ガンバレル」の最終回は放送されていません。
数々のウワサを読んだ、最終回の身放送ですが、
どうやら、このアニメは「ロボットが太陽嵐で暴走する」という結末が用意されていました。
人々の脳裏に「太陽嵐でロボットが暴走する」という洗脳を施す為の作品だったのです。
製作スタッフも洗脳されていましたが、女性監督ただ一人が洗脳を脱します。
・・・そして、スタッフは全員死亡、女性監督の失踪という前代未聞の事態で、
「ガンバレル」は未完の作品となります。
高校生の熱血ロボコンアニメで始まった物語は、
パズルのピースを少しずつ揃える様にしながら、
巨大な陰謀に、ロボ部の部員が達が巻き込まれるという
サスペンス作品へと、変わってゆきます。
1期13話でやれは、普通のアニメになりそうな作品ですが、
2期26話を費やす事で、ネタが小出しになり、
視聴者はゲームのプレヤーと同じ興奮を味わう事が出来ます。
■ SF的ギミックの素晴しさ ■
実はこのアニメの最大の魅力は、SF的ギミックの素晴しさにあります。
SFは科学をモチーフにしたおとぎ話ですが、
その科学の扱いには、さまざまなパターンがあります。
例えば、『どらえモン』もSF作品と言えますが、
ポケットから出てくる未来のアイテムに科学的現実感はありません。
一方、『エヴァンゲリオン』は、比較的科学的に忠実な描写がされていますが、
その規模が大きい事で、SF的に突き抜けた世界を作り出す事に成功しています。
『サイコパス』もSF的ギミックが満載です。
こちらは『ブレードランナー』に代表される、近未来SFの王道の道具立てです。
所謂、「サイバー・パンク」系と言われる、ネット空間と現実空間のコンビネーションで、
未来の生活を構築しています。
一方、『ROBOTICS;NOTES』が描くのはちょっと先の未来。
子供達は携帯端末を学校に持参し、iPadと同様に様々な用途に活用されます。
ネット検索したり、携帯電話になったり、さらには授業でも使えますし、
ゲームマシンにもなります。
面白いのは、リアルに撮影した風景の上に、画像をオーバーライトする機能です。
AIの愛理は、この機能で端末に現れます。
これなどは、現在の技術で実現可能です。
さらに、この機能を活用したのが、「ロボ部」が製作した巨大ロボです。
「ガンバレル」をモデルにした「ガンツク1」は、
巨大なフレームを、装甲で覆う事で重量が過剰でした。
歩行実験では、2歩ほど、すり足で歩いた所で、ディーゼルエンジンが過負荷で壊れます。
その反省から生まれた「ガンツク2」は、フレームだけの構造で軽量化されています。
しかし、その姿だけではあき穂ちゃんの望んだ「ガンバレル」ではありません。
そこで、この携帯端末の画像オーバーライト機能を利用します。
携帯端末を覗いて見た「ガンツク2」には、「ガンバレル」の装甲がオーバーライトされるのです。

フレームだけの「ガンツク2」

携帯端末をかざして、モニター上で見ると・・・

そこには、ガンバレルの雄姿が!!
こういう、ちょっと先に未来のSF的ギミックの数々が、
『ROBOTICS;NOTES』の作中には溢れています。
モノポールモーターも興味深いギミックですが、
「ガンツク2」のエネルギーの伝送方法の描写の細かさには舌を巻きました。
駆動用の電力は、ケーブルでの伝送では無く、
レーザーによる空中伝送です。
「そんな非効率な!!」という突っ込みは置いておくとして、
素晴しいのは、「ガンツク2」の背中のパラボラミラーでレーザーを受光する事。
放物曲線で設計されたパラボラミラーは、平行光を焦点に収束させます。
こんな、描写が作中でしっかりされているのには感動します。

本当は光軸に平行な光ければ、受光部に導けないんだけどね・・・。
とにかく、SF作品はこういうギミックの積み重ねが大事なのですが、
2シーズン26話だからこそ、こういう描写に拘れるのでしょう。
作品のバランスやスピーディーな話の展開的には問題の多い作品ですが、
SFファンとしては、見ていてゾクゾクします。
■ SFは未来を予見する ■
私は「SFは未来を予見する」と思っています。
そして、『ROBOTICS;NOTES』の16話のこの映像にはドキリとさせられます。
島の食料品店の店主伊禮 瑞榎(いれい みずか)は、事故で下半身の自由を失っています。
親友である瑞榎に、あき穂の姉が送ったのが、
彼女の勤める会社エズゾスケルトン社が開発した、
歩行補助ロボット。

現在でも一部実用化されている技術ですが、
彼女はこのロボットのおかげで、健常者と変わらぬ日常を過ごせています。
ところが、16話のラストで、このロボットが暴走します。
強力なパワーアシストの為に、必死で止める海翔を振り切って、
彼女は崖から転落します・・・。
ショッキングなシーンですが、今後普及するであろうこの手の装置が
もし、現実の世界で暴走したらどうなるか・・・。
そう考えると、一瞬、背筋に寒いものが這い上がってきます。
制御系の暴走は、ロボットに限った事ではありません。
車の操作系も、制御系もコンピューター制御です。
その他、社会の様々なシステムが、コンピューターで制御されています。
大規模な太陽風によって、コンピューターが誤作動する可能性は以前より指摘されています。
あるいは、大気圏上層での核爆発でも同様にコンピューターは電磁波で破壊されます。
軍用のシステムは、強力なシールドと、基盤間を光ファイバーでコネクトして
電磁波の影響を回避していますが、民生用は対策されていません。
アニメの中の出来事でも、実は現実でも起こりうるのです。
■ ボクの瑞榎さんを返せ!! ■
・・・それにしても瑞榎さんが死ぬなんて、
スタッフは血も涙も無いのでしょうか?
(原作通りという事みたいですが・・)
ボクの瑞榎さんを返して!!
瑞榎さん、サバサバしていならが、それでいて影があって、
ミステリアスで、子供達をしっかり見守っていて、
さらに巨乳で、一番好きなキャラでした。
来週から、何を楽しみにこの作品を見れば良いのでしょうか。
・・・そうか、コナちゃんが居た・・・。

こちらは、少し前のネット用語で会話する腐女子。
(シュタインズのダルの女の子版)
コナちゃんの破壊力、ハンパ無いです。
・・・大分話が逸れましたが、これから終盤にかけて
『ROBOTICS;NOTES』から目が話せません。
しかしこのアニメ、主人公の二人にあまりにも魅力が無いのに、
周囲を固める人達が、あまりにも魅力的という、これまた困ったアニメなのだ。
そういった意味においても、この作品が大ヒットするとは思えませんが、
しかし、だからこそ、一部のコアなファンを魅了する作品になると思います。
こういう、工学部の自己満足みたいな作品もたまには良いのでは無いでしょうか?
私的には、極私的な「神アニメ」認定。
興味深いニュースや記事など読んでもあまりコメントしないんですが、書いてある内容に100共感し、なんか書いてしまいました。さーせん∧( 'Θ' )∧
コアなファンが反応してくれて嬉しさ100%。
50歳のオヤジですが、アニメ記事を書く意欲を頂きまし
た!!