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■ 読書感想が決まらない ■
夏休みも残り数日となりました。お子様達の宿題はお済でしょうか。
この時期になると最大の難関は「読書感想文」ではないでしょうか?
「面白くて」「子供の為になって」、「かつ感想文が書き易い本」はなかなか見つかりません。
■ 「嵐が丘」は読めなかった ■
中学2年の娘は、読書好きです。「伊坂幸太郎」も「乙一」も「恩田陸」も大好きですし、「三崎 亜記」でも平気で読みます。
しかし、彼女に近代小説を読ませると、途端に挫折します。
そこで、「文学少女」という現在人気のライトノベルを読ませてみました。「文学少女」は、文芸部の美少女の部長と部員が、文学作品に良く似た事件に巻き込まれるシリーズです。
これがとても面白くて、1作目は太宰治の「人間失格」、二作目はエミリー・ブロンテの「嵐が丘」に似た事件に翻弄されます。娘とその友人達は、私の目論見通り、すっかり夢中で全巻を読破しました。そして、当然、題材になった名作の数々に興味が向かうと思いきや・・・駄目でした。
そこで、読書感想文の本として、「嵐が丘」を買ってみました。ヒース・クリフのダークヒーローぶりがクールなこの本なら、今時の子供でも興味を持つかと思ったのですが、何と1ページも読めないそうです・・・?
出版当時、問題作として社会に受け入れられなかった程「早すぎた名作」である嵐が丘も、今時の中学生に掛かっては過去の遺物なのでしょうか・・・。サービス満点の小説に慣れ親しんだ娘達には、どうも展開がダルくて受け入れられないようです。
■ 「カラフル」を与えてみる ■
そこで、「今風の本」に変更する事にしました。
昨年は「アヒルと鴨とコインロッカー」で苦労したので(読んで面白しろい本と、読書感想文が書ける本は違います)、今年は「中学生が感動して、教訓を得られる本」を選ぶ事にしました。
そして選んだのが森絵都の「カラフル」です。
単に、原恵一の映画の前に、私が原作を読みたかっただけとも言えますが・・・。
■ これこそ読書感想文の為にある本 ■
「おめでとうございます。抽選に当たりました!」という天使の一言で、死んで魂だけになったボクは、自殺した小林真の肉体に乗り移って、「自分が死んだ理由」を見つけるという修行をするハメになります。どいやらボクは罪を犯した魂らしく、この修行に合格しなければ、輪廻のサイクルから永遠に外れてしまう様なのです。尤も、投げやりなボクにはどうでも良い事に思えますが・・・。
ボクが乗り移った肉体は、中学3年生の小林真です。小林真は睡眠薬を飲んで命を落としました。彼は家族と思いを寄せる後輩の、知りたくない姿を知ってしまったのです。
生き返ったボクは、修行に消極的です。いえ、むしろ投げやりです。だから小林真も適当に演じています。周囲はその変化に気付きますが、どうやら小林真はクラスでも浮いた存在らしく、変なチビ女が彼の変化の真相を執拗に追求してくる以外は、誰も彼に関わりを持ちません。
そんな小林真の楽しみは美術部で絵を描く事。小学生の頃からコンクールで入選をする程、小林真は絵が上手です。小林真になったボクも放課後の美術室に向かいます。尤もボクの目的は「桑原ひろか」に会う事。ひろかこそが彼の自殺の原因ともなった、小林真がひそかに思いを寄せる後輩です。ところが、ボクもひろかに心を奪われてしまいます。あるいは小林真の肉体が反応したのかもしれません。
小林真の肉体を借りているボクですが、だんだんと「小林真の真実」がボクの心を痛めつけます。母親の不倫を生理的に嫌悪し、意地悪な兄を憎み、ひろかの援助交際に傷つきます。いつしかボクは小林真と同じ苦しみに沈んでいきます。
しかし、変化もります。小林真をダサイと思うボクは、髪をムースで固め、小林真の貯めた小遣いで最新のスニーカーを買って登校します。すると、同級生の早乙女君が声を掛けてくれます。「それ、高かったでしょう。」
早乙女君はボクの初めての友達になります。そして彼との交流が、ボクを少しずつ変えていきます。
・・・文体はライトノベルよりも児童文学的で、「つるん」としていて平易。設定は子供でも理解できる内容で、感情も複雑ではありません。しかし、しっかり考えさせられて、しっかりと泣けます・・・大人の私でも。
■ 「カラフル」とは人間の多様性の事 ■
題名の「カラフル」とは、人間の多様性の事です。
自分の世界で精一杯の中学生の小林真にとって、他人の多様性を受け入れる余裕はありません。そして、自分自身の多様性にも気付けないで自殺します。
しかし、代役として、投げやりに小林真を生きるボクには、周囲が冷静に見え始めます。母の真の姿、父との関わり、兄の言動の裏側、ひろかの悩み・・・。
灰色だと思っていた世界は、実は様々な色彩が混じりあってできていたのです。そう、世界は実に「カラフル」だったのです。
■ これから映画に行ってきます ■
今年は娘は一気に感想文を書き上げました。内容は良かったと思います。
ご褒美に原恵一のカラフルのアニメ映画を見に行かせました。本を読まない兄を護衛に付けて。
二人とも感動して帰ってきました。
兄も泣いたと言います。
「原作を読むか?」と聞いたら、「読まない」と一蹴されましたが・・・。
これから家内と映画館に行って、思い切り泣いてこようと思います。
夏休み、読書感想文にお困りのお子様に「カラフル」は一押しです。そして、ご家族で読んで、ご家族で映画に行って感動の涙を流して下さい。
ありがとぉ
お役に立てて光栄です。
是非、原作を読んでみて下さい。
原恵一のアニメも素晴らしい作品です。
読書感想文って難しいですよね。特に作中の人物に感情移入出来ないと、感想文と言うより「評論」的な文章になってしまいます。
この物語で感想文がなかなか上手く書けない人は、多分幸せな人か、対人関係を上手にこなせる方なのでしょう。そういう方が真一に感情移入するのは難しいのかも知れません。そういった場合は、人付き合いの下手な友人を真一に重ねてみるのも一つの方法だと思います。
誰もが人と上手く付き合えるわけでは無く、特に思春期には、「自分だけが特別に不幸ではないか」という思いに囚われて、他人も皆同じ様な悩みを抱えている事に気づかないものです。
幸福な家庭とは、家族全員の細かな気遣いで、その幸福が保たれている事に注意すべきなのかも知れません。
あなたの家庭が、真一の家庭の様な苦悩を味わっていないのならば、それはご両親の努力のたまものなのかも知れません。
少し視点を変えれば、感想文は色々と書き方があると思います。是非、ユニークな視点で、素晴らしい感想文を書きあげて下さい。
ありがとうございました。
素敵な感想文を書いて下さい。
私はあとがきを丸写しして親に直せと反対されてしまいました。それで、ちょうど悩んでたところなので助かりました。ありがとうございます。いまから、書き始めます。
夏休みが早く終わるという事は北国の学校ですね、北海道
でしょうか?涼しくて羨ましい。
頑張って素的な感想文を仕上げて下さい。