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トランプラリーはいつまで続くのか・・・アベノミクスのスタートダッシュに似ていいる

2016-12-12 01:09:00 | 時事/金融危機
 

■ 市場の空気が変わった? ■

「トランプリスク」などと言われていたのが嘘の様に債券以外の相場が爆上げしています。ダウが2万ドル突破を伺う一方で、米10年債金利は2.5%突破目前となっています。

一般的には「債券→株式」に資金が移動する時は「リスクオン」と呼ばれ、市場が積極的にリスクを取りに行く時と言われています。

大統領選前はFRBの12月の利上げは50%程度の予想だったと思いますが、今では利上げ予測は100%、場合によっては利上げペースが速まるとの見方も出ています。

■ アベノミクスの初期の類似点と相違点 ■

「トランプラリー」などと呼ばれる昨今の急激なリスクオンですが、アベノミクスの初期に似ています。

1)リーマンショック後の閉塞感が長期化していた
2)政権政党が交代する
3)財政拡大が見込まれる


アベノミクスとの違いは安倍政権発足前の2012年11月頃からは日銀の金融緩和の拡大を予測して「円安株高」となっていましたが、トランプラリーでは米金利の上昇を予想して「ドル高米株高」になっている点でしょう。

日本株の場合、株式市場のメインプレイヤーが海外の投資家なので、円安でドル経ての株価は下がり、プログラム取引が日本株の比率を一定に保つ為に日本株を買い増して株価が上昇します。ジム・ロジャースやジョージ・ソロスは自民党が衆議院選挙で勝利したと同時に日本株を買い増し、安倍政権発足後の5月にチャッカリ利確しています。

一方、現在のダウの高値はドル高予測に牽引されています。米金利の上昇でドルが上昇すると、海外の投資マネーが米国内に還流するからです。

■ ドル高と米金利上昇のデメリット ■

トランプは選挙戦で米国産業を復活させると発言していますが、ドル高は輸出産業には不利に働きます。米国債金利の上昇でFRBは利上げペースを速める可能性が在るので、ドルには上昇圧力が働きますから、輸出企業にはマイナスとなります。

ここで、トランプが関税などを引き上げて中国などからの輸入にブレーキを掛けようとすると、輸入に頼るアメリカでは物価上昇の要因となり、庶民の実質所得が低下します。(為替と相殺で物価が変わらない可能性も在りますが)

さらに、米国経済に影響の大きい住宅市場は今まで低金利の支えられて来ました。米実態経済の伸びが期待程で無いのに金利だけがズルズルと上昇し始めると、住宅需要が落ち込んだり、返済が滞る状況になる可能性も在ります。

金利上昇はカードローンやカーローンなどにも影響を与えます。「超低金利」でバランスしていたローン市場では、金利上昇の悪影響が確実に発生します。

■ 国債金利の上昇は財政拡大を制限する ■

トランプが掲げる財政拡大による雇用の創出ですが、米国債金利の上昇で財政拡大にも制約が掛かります。

米国債が売られる(金利上昇)状況で財政を拡大すれば、さらに米国債が売られ、米国債金利が上昇するというスパイラルが発生します。

米国債金利の上昇スピードによっては、トランプの財政拡大路線は早期にブレーキが掛かり、同時にトランプ政権への期待が剥落し始めます。

■ 現在のトランプラリーは就任式前に一回調整される ■

アベノミクス初期と同様に期待先行のトランプラリーですが、年内、或いは大統領就任式前に一回調整されるでしょう。ダウが2万ドルに達したら、さすがに市場も「怖くなる」のでは無いか。

しかし、就任後のトランプは様々な財政政策を打ち出すので、米経済はしばらくは上昇基調が続き、ダウも2万ドルを超えて上昇するでしょう。上手く行けば1年位は「期待」は維持されます。

■ 好事魔多し ■

一見、絶好調の循環に乗るかに見える米経済ですが、一方で金利上昇は低金利でバランスしていた世界を破壊する力を秘めています。

通常の景気循環であれば、金利上昇のデメリットは景気回復によって相殺されます。しかし、リーマンショック語の狂ったような金融緩和では、世界は異常な低金利でリスクを取り過ぎて来ました。

米国債を始めとする債券金利が世界的に急上昇しているのは、市場関係者が低金利時代の終了に恐怖を覚えているからに他ならず、期待によって生まれた「表面的なトランプラリー」の深層では、世界の危機は確実に進行しています。

「金利上昇=景気回復」では無く「金利上昇=債券市場の崩壊」である事に注意すべきなのです。

この崩壊は新興国市場や南欧など弱い所から顕在化し、ヨーロッパの銀行不安へと拡大した後に世界全体へと波及して行くと私は予想します。

折しも、イタリアやフランスで極右政権が誕生しそうな気配です。彼らが利己的な理由で自国の金融機関を救済すれば良いのですが、逆に「金持ちは自分で自分のケツを拭え」なんて言い出して金融機関が破綻するケースも考えられます。

極右政党は自国利益を優先しますからEU内での連携も失われ、危機への対処が遅れる可能性も高い。

世界の目はトランプに集中していますが、私は米国債金利と欧州情勢にこそ注目すべきだと思います。


・・・尤も「逆指標」として名高い「人力でGO」ですから、「全力でリスクオン」が正解だったりして・・・。

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2 コメント

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Unknown (たかやまん)
2016-12-12 22:21:41
ありがたいことに、10月、11月の2ヶ月で、資産が70万円くらい増えました。

12月、出遅れ感のある小型株や天井っぽい動きのリートが堅調に上がってくれれば、3ヶ月で100万円上がりそうです。


人力さんの言う通り、確かに、アベノミクス初期にすごく似た相場だと思います。

今後も逆指標として、ご活躍下さいませ(^_-)

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Unknown (人力)
2016-12-13 10:43:41
たかやまん さん

アベノミクスでは衆議院選直後から相場が上がり始め、翌5月に調整されました。当日のジム.ロジャースのインタビューでは、ある国で財政拡大や通貨の大規模な増刷の噂が立ったら「買い」だそうです。そして遅れて買いついた連中をカモにして利確するのが鉄則。今も日本株を買い上げて居るのは外国勢で年金と個人が売りに回っている。日本株は外国人にも厄介な市場かも知れません。個人がブームと逆の動きをする傾向がある
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