「菅野よう子」をご存知の方は、アニメオタクか、
余程の音楽ファンではないでしょうか?
「菅野よう子」が注目されたのは、
多分、アニメ「カーボーイビバップ」のサントラからではないでしょうか?
NYのダウンタウンを思わせる、ファンキーなJAZZから始まり、
アンダーグランドな匂いがプンプンする、グランジな曲、
洋楽ファンの心のど真ん中に命中するようなスローバラードと盛り沢山なこのアルバムは
アニメのサントラとして一部のファンの間で珍重されるには
あまりにも勿体無いアルバムでした。
その他、「ターンAガンダム」や「マクロスシリーズ」
はたまた、数多くのCM曲など、管野よう子は大変な量の仕事をこなす
超売れっ子作曲家です。
「何飲もーかな、ビタミン・ウォーォター」というフレーズなら、
結構多くの方の耳にも残っているのではないでしょうか?
映像音楽は、クラシックや他の音楽に比べ、
とかく低く見られがちです。
劇音楽が、映像作品を離れて成立するのかどうかは意見が分かれる所ですが、
菅野よう子の楽曲は、どれもクォリティーが高く、
十分、独立した曲、アルバムとして聞くに堪えます。
・・というか、充分なエンタテーメントと成り立ちます。
ニーノ・ロータを初め、マイケル・ナイマン、坂本龍一、
ガブリエル・ヤレー、エリック・セラーと、80年代、90年代初頭は
映像音楽家にも注目が集まった時期がありました。
音楽を専攻しても、カビの生えたクラシックはやりたくない。
自己満足の現代音楽もやりたくない。
そおいった、作曲家の卵たちが行き着くのが、
CMと劇音楽の世界かと思います。
菅野よう子は「テツ100%」というバンド出身ですから、
ちょっと毛色が違うのでしょうが、
その為か、楽しめる音楽、エンタテーメントとしての色合いが、
他の劇音楽の作曲家に比べて強いようです。
マイケルナイマンを初めとするミニマリズム一派より、
エリック・セラー(リュック・ベンソン作品)に近いものを感じます。
彼女を一言で言い表すならば、「コピーの天才」。
映像音楽ですから、シーン毎に「こんな感じの曲」が求められます。
「こんな感じ」は当然。既存の映像作品だったりする訳で、
例えば、ハリウッド映画の様な・・・とか、
前衛作品の様な・・・とか、色々な要求があると思います。
そんな要求や必要性に、
オリジナルの音以上の楽曲を、あたかもそれらしく
さらりと書いてしまうのが、菅野よう子の才能ではないでしょうか。
40才以上の方はまずご存知ないと思いますが、
ガンダムの富野監督が20年ぶりぐらいにTVシリーズでガンダムを製作したのが
ターンAガンダムです。
「ガンダムが出てくるカルピス劇場」という表現がぴったりの作品で、
多分、オリジナルガンダム以外では最良の作品です。(「Z」や「シャーの逆襲」よりも)
とにかく、かつて「皆殺しの富野」と言われた罪を償うがごとく、
物語の前半はひたすら、優しく、牧歌的に進行します。
そして、後半はダイナミックにやはり・・・・。
そんな作品を、完璧に引き立てているのが、菅野よう子の音楽です。
クラシック調のもの、エスニック調、歌曲、ブルガリアンボイス風と何でもありで、
さらにはジョー・ウィリアムスから、アンソニー・ロイド・ウェッバーまで。
とても一人の人が書いた楽曲とは思えないバラエティーの広さです。
そして、その一曲、一曲が素晴らしい。
個々にみていけば、やはりコピーなんだけど、
コピーが昇華して、もはや管野よう子の音楽になっている。
さらに、彼女の得意技である、デタラメなラテン語風の歌曲は、
完全に職人の域に達しています。
(最近、よここれを真似てる作曲家がいますよね)
最近では、多くのアニメの音楽が菅野風。
それどころか、TVのワイドショーの映像バックも菅野よう子の曲。
さらに、NHKのドラマの音楽まで菅野風。
菅野よう子の曲が何故これほどまでに支持されるのか?
それは、CM曲に代表される様に、
10秒程度である世界観を確立してしまう明確性があるからではないでしょうか。
映像作品では、10秒、20秒でシーンごと曲がカットアップされてしまいます。
ですから、その10秒、20秒で何かを伝える必要があります。
これぞまさに、圧縮音楽です。
先日もハルヒの項で書きましたが、
NYの現代音楽化ジョン・ゾーンの圧縮音楽は
アニメーションの音楽にそのルーツがあります。
(確か、カール・スターリングだったか?)
映像と共に、めまぐるしく変化する音楽。
例えば、ジブリの久石譲の曲が、
ジブリ作品を見ないでCDだけで楽しめるだろうか?
答えはNOです。
ジブリは劇場作品中心なので、音楽も長尺で使用されます。
ですから、曲もある程度の時間的長さで世界間を確立します。
ジブリ作品では、インスト曲よりも、
「歌物」があきらかに目だっています。
我が家に「ネコの恩返し」のサントラがありますが、
私も子供も、何回かしか聞いてません。
映像から離れれば、たんなるクラシック曲にしか聞こえません。
CD単体では、エンタテーメントとして成立しないんです。
「つじ あやの」の歌が出てきて、初めて嬉しくなります。
菅野よう子の画曲がどれも強靭なイメージを備えているのは、
めまぐるしくシーンの変転するアニメの付帯音楽として鍛え抜かれているからでは。
「ターンAガンダム」のサントラは息子のお気に入りです。
この他、「アルジュナ」のサントラもヘビーローテーションしています。
こちらは、私も映像を未見ですが、
プログレッシブ・ロックしてます。
もうカッコイイとしか言い様がありません。
「ピンクフロイドもYESもまとめて掛かって来い」状態です。
どうでしょう。
皆さんも、騙されたと思って、一度「菅野よう子」をお聞きになっては?
追記
マイケル・ナイマン・・・ヨーロッパの芸術映画には必ず付いてきました。
ミニマリズムの巨匠。
ニーノ・ロータ ・・・・フェリーニ映画はニーノ・ロータ無しでは・・・。
ガブリエル・ヤレー・・・ジャン・ジャック・べネックスにはセット。
アラブ人で、濃ーーい音だった気が・・・。
クレプスキュール・レコードから「シャムロック」という
バレー音楽をリリースしていましたが、これはイイです。
エリック・セラー ・・・勿論リュック・ベンソン。
「グラン・ブルー」のサントラは良く聴きます。
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