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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

「誰得」の理論考えるMMT的な財政拡大とベーシックインカム

2019-06-25 04:00:00 | 時事/金融危機
 

■ お花畑左翼とネトウヨが相乗りする山本太郎 ■


山本太郎氏が立ち上げら「令和維新の会」への寄付が2億円を突破して、安倍総理を越えたそうです。

山本太郎氏は原発事故以来、原発反対を声高に訴えて、「お花畑左翼層」の支持を集めていましたが、今回はMMT的な財政拡大を訴えてネトウヨ層にも支持を拡大しています。

これが何を意味するのか・・・。

私は何度も書いて来ましたが「お花畑左翼と、ネトウヨのメンタルは同一」という事が証明されたのだと思います。

両者は共に「所得さん分配」の機能の低下した日本では不利な存在です。不満が鬱積する中で、一昔前ならばコミュニストのアジテーションが有効に作用し、「誰もが平等な社会」のソ連型共産主義へ流れる若者が多かった。(今は老人となっていますが)


一方、ソ連や東欧が民主化して以降に成人を迎えた世代は「共産主義の幻想」を抱く事は有りません。一方で「就職氷河期」など、新自由主義の弊害も身をもって体験しています。ところが、彼らの不遇を味わった時代は「リーマンショック後と東日本大震災後の民主党政権」だったので、「リベラル政党アレルギー」が強い。「悪夢の民主党政権時代」というキャッチコピーに踊らされた世代とも言えます。

実際には麻生政権が崩壊して自民党が下野したリーマンショック直後が、経済的には最悪期でたが、これは民主党政権の失敗によってオーバーライトされています。(私個人としては、麻生政権を非常に高く評価しています。だからこそ、中川元財務大臣の犠牲によって、今の日本が保たれている事を国民は知るべきだと・・・)

初期の「ネトウヨ」はネット環境に親しんだ若者がメインでしたが、「団塊の世代」が定年を迎えるにあたり、「ネトウヨの高齢化」という現象が発生します。スマホなどでネットをある程度使える高齢者が、ネトウヨに「感染」したのです。

「お花畑リベラル」と「ネトウヨ」は本来反目する存在でしたが、実はメンタルが非常に似ています。それは「政府がどうにかしてくれる」という他人に依存した思考です。それが、本来社会主義的な財政理論であるMMTによって共通の「メリット」を発見した。

それは、「誰の負担も発生せずに皆が幸せな社会が実現できる」という「ダダ乗り」の妄想。

そして彼らの一部が持ち上げるのが「山本太郎」です。

■ 主流派経済学(マネタリズム)の敗北 ■

私が最近、MMTを批判するのは、「筋が悪すぎる」からです。MMTよりもベーシックインカムの方が余程マシです。

MMTは「民間投資が減少するならば、政府部門が財政を拡大して雇用を確保し、経済成長を後押しするべきだ」という従来のケイジアンと同じ主張をしています。ただ、ケインズ的財政拡大では、政府の債務残高が拡大するので、従来の「財政均衡」を求める経済学では、「債務残高の拡大」という限界を突破出来ませんでした。これが「新自由主義」や「シカゴ学派」と呼ばれる現在の主流派経済学の台頭を招いた。

ところが、主流派経済学の「マネタリズム」は、資産市場の拡大と、リーマンショックに代表だれる「不安定なバブルに依存した経済」を生み出す結果となります。そして、リーマンショック以降の「量的緩和」によって、「マネタリズム」も敗北します。マネタリーベースを無制限に拡大しても、バブルは膨らみますが、実体経済の成長にはあまり寄与しない事が証明されてしまったのです。(実は金融市場を通して、先進国の成長を、新興国の高成長に置換しただけなのですが)

■ シムズ以降の「インフレを達成する為の財政政策」 ■

主流派の中で、サマーズ(米元財務大臣)らがこの問題を最初に指摘し始めます。彼はリーマンショックのしばらく後に「長期停滞論」という考え方を提示し始めます。「先進国においては、最早バブル無くして経済は成長しない」と看過?したのです。

さらに、クリストファー・シムズ教授が「物価水準の財政理論(FTPL,Fiscal Theory of the Price Level)」を提唱すると、従来は「財政拡大は債務残高の上昇によって経済に悪影響」と主張していた主流派経済学者達が、「財政政策によてインフレ率を向上させる」という主張を始めました。

「財政拡大は通貨の価値を棄損する」と否定していた彼らが、金融政策の限界を実感する事で、「ケインズ的な財政拡大」を「シムズ的な財政拡大」に翻訳する事で正当化したのです。

異次元緩和でもゼロ金利の日本は、まさにMMTの実験場ですが、アメリカの経済学会のリーダーであるブランシャイル元IMFチーフエコノミストまでもが「無限の将来まで財政赤字を出すべきだ」と主張し始めます。

■ 既にアベノミクスで証明されているMMTの限界 ■

実はMMT的な財政拡大が失敗する事を、既に2012年に日本は証明しています。第二次安倍政権は「国土強靭化」という財政拡大製作を掲げ、民主党から政権を奪還しますが、その年に9兆円の追加補正予算を組み、土木工事を中心に財政出動を拡大します。

その結果、日本で何が起きたのか・・・。

「クラウディングアウト」が起きたのです。政府が財政を拡大して公共事業(土建工事)を拡大すると、民間事業の人手が公共事業に取られ、人件費が急拡大しました。これは、バブル崩壊以降、日本の建設業が労働者を削減して来た事が原因とも言えますが、需要が低迷している中で、労働力を維持する事は、民間企業には不可能です。

こうして、「国土強靭化」という看板は、クラウディングアウトによって早々に降ろされる事になります。

この時点で、安倍政権復活の影の立役者である三橋貴明氏らを支持していた、一部のネトウヨ層
三橋教から離反し、「リフレ製作のみで経済成長を達成すべき」と主張し始めます。彼らは周回遅れで主流派経済学と合流したのです。

一方、三橋教は、都合の悪い事象は無視するいつものスタンスで、財政拡大を訴え続け、アメリカでのMMTの台頭によって最近は「自説の正しさが立証された」かの発言を繰り返しています。

■ MMT的な財政拡大では格差は拡大する ■

MMTはゼロ金利に張り付く世界では「限定的に正しい」。これは私も認めます。ゼロ金利やマイナス金利が続く限り、国債発行コストはゼロ以下ですし、高い金利の既発国債をゼロ金利やマイナス国債で借り換えれば、債務残高を縮小します。これが日銀の異次元緩和の真の目的です。

一方で、MMTを公に認めてしまうと、政治家や政党は支持拡大の為に「財政出動の大盤振る舞い」をする様になります。

仮にMMT的に公共事業の拡大を今の日本で行うとどうなるか・・・

1)国債を発行して公共事業が拡大される(主に土建関連)
2)建築関係の人件費が上昇すす
3)民間事業に採算性が悪化する(人手不足と賃金の上昇)

4)外国人労働者によって人手不足解消を図る ← イマここ
5)建築労働者の賃金が伸び悩む、或いは低下する

6)建築業界の経営者は、公共事業の受注や、人件費の低下で利益が拡大
7)労働者は安い外国人労働者によって賃金水準が低下する

8)経営者と労働者の格差が拡大する

これは建築業界に限った事では無く、ソフトウェアー業界でも発生する事です。


■ 「労働力の不一致」によってニートやフリーターの問題は継続する ■ 

団塊の世代の定年によて、日本では労働力不足が発生しました。しかし、ニートやフリーターが正社員の職に就けるかと言えば、そんなに世の中は甘くありません。

何故なら、増えたのはパートやアルバイトや契約社員などの非正規雇用の枠だからです。正社員はコストが掛かりますから、実績の無い労働者を受け入れる事は有りません。(新卒の雇用は改善しましたが)

バブル崩壊後にニートやフリーターを選択された方々が中高年になる事で将来的な生活保護者が拡大するであろう事が社会的問題となっていますが、彼らが就業する機会などいくらでもありました。ただ、人手不足の業界を彼らが好まなかっただけ。大学を出たのに建築の現場で働くと言う選択肢は、彼らには有りません。


■ MMT的なモラトリアムが発動しているうちにベーシックインカムの議論を高めてはどうか?■

政治や政府の目的は「国民の暮らしを支える」事です。ところが、実際の政治では「支持者の利益を拡大する」ことが優先されています。そして、「支持者」とは企業経営者の場合が多い。

MMT的な政策を、政治家の手に委ねると、それに群がる企業経営者に利益を誘導する結果となり、格差が拡大します。

MMTを支持する多くが「恵まれない人」である事を考えると、MMT的な政策が実施されても、彼らに恩恵は少ない。

それよりも、ベーシックインカムの財源としてMMTを利用する方が、公平性は高いと私は考えます。政治の介入する恣意性も回避出来ます。

例えば、国民一人当たり月額1万円を政府が支給する場合、人口が1億2600万人だとすると、そのコストは凡そ年額18兆円。基礎年金や生活保護費は1万円のアップが無いとするならば、とても雑ですが15兆円程となるとします。(4人家族で月額4万円の支給ですから額とすれば充分でしょう)

うーーんん、とても大きな金額ですね・・・。

まあ、これ程までの規模としなくても、半額の7.5兆円程度ならば補正予算の額として前例が無い訳ではありません。金利が上昇したら、減額する様な法律にしておけば、年額で支出が固定される一般的な財政支出よりも、柔軟に金利上昇に対応できます。


私は仮にMMT政策の実験をするならば、公平性という意味からも、金利上昇に対する対応性のからも、ベーシックインカムの実験が良いのでは無いかと考えますが、皆さんは如何でしょうか?

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6 コメント

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Unknown (一ブログ読者)
2019-06-26 13:21:18
仮に年額18兆円が出せるなら、それを全額少子化対策
(子ども手当とか)に突っ込むと、子供一人あたり年間
100万円程度のバラマキができます。ま、なんとか人口
減少を止められるでしょう。
こっちの方が『国是』にかなうのでは? 月一万円のベ
ーシックインカムよりは筋が良いと思います。
実際は18兆円の財政赤字を恒久予算化するのは厳しいで
しょう。でも、半分くらいは増税を財源にしても、国民
の理解は得られるんじゃないかな。
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Unknown (人力)
2019-06-26 16:13:58
一ブログ読者 さん

「ガキは甘やかすな」というのが私の持論。現在の少子化の一因が、増大する教育費ですが、実際に大学教育を受ける知能の子供は全体の3割でしょう。

AIの時代、不足するのは頭脳労働者ではなく、単純労働者です。下手に大学などに行くと、「大学を出たのにこんな仕事は嫌だ」と行った「職業選択の不一致」が発生してニートやフリーターを増産します。

それよりも不要な大学を淘汰して、大学受験資格試験を設けるなど、こどもも親も早期に将来選択をする社会の方が国民が幸せになるのではないでしょうか。

優秀な人材は海外から受け入れるアメリカの様な国の方が成長力を維持出来ます。

一方で公立大学を無償化するなど、親が貧しくても能力のある学生がしっかり勉強出来る環境を整える事が重要かと思います。

ベーシックインカムはAI化の時代の最低生活補助として必ず必要になりますが、一方で無駄な公共事業を辞めて、優れた学生や研究を支援するなどの、選択と集中が必要なのだと思います。
重要なのは予算配分におけるバカな利権議員達の介入の機会を減らす事ではないかと。これだけで、成長力はかなり高まると思います。
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Unknown (一ブログ読者)
2019-06-26 22:33:17
少子化対策と教育に投資するかは、また別の問題じゃない
でしょうか。
もし子供を増やす政策が可能なら(年間20兆円あればでき
そうですが)、専門学校や高専を増設して吸収する、とい
うのはありな方向性でしょう。
返信する
Unknown (人力)
2019-06-27 02:32:34
一ブログ読者 さん

私はこれからの世界は「人口≠国力」と考えています。確かに賦活型年金制度の維持だけを考えれば、若年人口は多い方が良いのですが、AI化や自動化の時代には、知能労働の多くや単純労働の一部で人間は不要になります。

第一次産業や介護などの分野では、相変わらず人間の手が必用になると思いますが、それらの仕事を率先して選ぶ若者は少ない。特に、大卒ではほとんど居ないのはないでしょうか。

世界では、AI時代の失業問題がベーシックインカムとセットで語られていますが、これからの時代「人口=国家の重荷」になるのでは無いかと考えます。

そうなると、シンガポールや香港型の都市国家が、高い生産性と競争力を武器に世界から優秀な人材を集めて発展する様になるのでは無いかと妄想しています。

仮に、農業の自動化が進んだ場合(アメリカですら成功していない難しい分野ですが)、都市の人口を、ほぼ無人の地方が支えるなどという時代も50年後にはやって来るかもしれません。アニメ『サイコパス』は、この様な未来が描かれています。意外にマンガやアニメ(要はSF)は正確にSF)未来を予見します。

何れにしても50年、100年後の未来ですが、優れた国家とは50年、100年先を見越して運営されるものと考えています。

但し、人口の縮小期にアンバランスとなる老人福祉をどうするのかが、現在、全ての先進国の切実な問題である事も理解しています。

年金受給開始年齢を引き上げるというのは、世界的な風潮です。
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Unknown (一ブログ読者)
2019-06-27 23:25:08
「人口=国家の重荷」の時代は確実に来ると思います。
日本の官僚は人口減を享受して、その時代を待つつもり
でしょう。
ただ、MMTと「次世代のために投資する」というポピュ
リズムは相性がいいはずなので、掲げる政党が現れない
とも限りません(ぱっと思い浮かんだのは小池百合子。
さすがにないか?)。
もしかしたら最悪のタイミングで少子化対策を始めてし
まうかもしれませんが、今からやると労働人口比率がひ
どいことになります。まあ、もしそれで賃金インフレに
なったら金融抑圧で財政再建できそうなので、悪いこと
ばかりではありませんけど……

あと、短中期的に不足する、長期的には淘汰される単純
労働は、高齢者や外国人労働者にできるだけ担わせる方
向性がいいでしょう。
将来のある若者は、できるだけ教育を施して優秀な人材
として活用する……もちろん本人の適性もありますが、
そういう方向性にせざるを得ないと思います。
(教育=大学、ではありませんが)
75歳くらいまでピンピンしている老人が旅行やスポーツ
を楽しんだりしながら年金の心配をしている、というの
は不条理です。人手不足のときは身体が動く人は働いて
いた方が良い社会になるかと。
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Unknown (人力)
2019-06-28 03:50:23
一ブログ読者 さん

以前、高橋洋一氏が、自民党議員に政府通貨のメリットを説いて回っていたら、ゴルフ場のロッカーでロレックスを盗んだとして逮捕された・・。

多分、それだけ政府通貨やMMTというのは、通貨マフィアにとってタブーなのでしょう。

尤も、MMMTが間違いなのでは無く、ニクソンショック以降のドル自体がMMTによって成り立っている事を隠したいが故だと思います。

国民はワガママですから、MMT的政策が可能だと知れば、減税と福祉の拡大を要求し、それを主張する政党が政権を取る。すると、微妙なバランスが崩れて通貨価値が損なわれる。



ガンダムのギレンのセリフではありませんが「せっかく減った人口です・・・・」なのかも知れませんね。これから日本は人口動態の最悪期を迎えます。これから30年程をどうやって乗り切るのか・・・役人の腕の見せ所なのでしょう、。

私が心配するのは、女性の出産年齢の上昇。特に、教育レベルの高い方に顕著です。会社でそれなりの地位や職能を持たれている方は、結婚しても、なかなか出産に踏み切れず、30歳を過ぎた頃に出産準備に入る方が多いのですが、少なからぬ確率で不妊治療をする事になります。どうにか子供を授かっても、今度は障害を持った子供が生まれる確率が高くなる・・・。

住宅取得や教育費にお金が掛かるから、二人で稼げるうちは・・・・そう考えている内に、出産適齢期が過ぎてしまうのです。

資金力があって教育費を掛けられる家庭の子供が遺伝子継承の最適基を逃す一方で、若くして結婚・出産する労働者層の子供は、健全な遺伝子が継承される・・・。教育の重要性を考えるならば、ここら辺を上手く解決できると良いと思います。

「優秀な遺伝子を残す為には若いうちに出産しよう」的なキャンペーンと、「優秀な子供には公的奨学金を支給」みたいな政策を組み合わせて、トップクラスの頭脳を育成する。

・・・・うーーん。国会でこんな主張をしたら、国民から袋叩きに合いますね。


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