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MMTの実験場としてのコロナ対策・・・インフレは発生するのか

2020-04-17 03:22:00 | 時事/金融危機
 

■ コロナ対策で急激に財政を拡大する世界 ■

「シン・コロナ」で世界中の経済が停滞し、GDPの減少率は世界大恐慌以来最悪になると予測されています。これは「リーマンショック超級」の危機が必ず起こると予測されているに等しい。

世界各国が減少したGDPに相当する財政出動を行い、経済のダメージを最小限にしようとしていますが、今回ばかりは緊縮財政派のドイツも財布の紐を緩めるでしょう。

■ 世界各国が異次元緩和(日銀スキーム)を導入するだろう ■

今後、各国は大量の国債を発行する訳ですが、これを市場で消化するのは難しい。国債の需給バランスが供給超過になるので、国債金利が上昇し易くなります。これでは、各国とも思う様に国債を発行出来ないので、日銀スキームで中央銀行が全力で市場から国債を買い入れるハズ。要は、「シン・コロナ」で経済が危機的状況に陥った殆どの国で異次元緩和が始まるのです。

■ 国債金利を低く抑えられるかが問題だ ■

ここで問題となるのが、国債の内外保有比率。日本で異次元緩和が可能だったのは、日本国債の多くを日本の金融機関や生命保険会社や年金が保有していたから。彼らは国債の暴落や不安定化を望みませんから、日銀に協力して国債金利の安定に努めます。ご褒美は、保有国債を日銀が高値で買ってくれる事。

一方、国外の国債保有者達は、値動きに少ない国債市場では利益を出し難いので、先物市場を利用して日本国債に揺さぶりを掛けたりします。異次元緩和突入時に日本国債の金利が一時的に上昇しましたが、海外勢力の売り圧力があったと思われます。しかし、多勢に無勢。国内勢のタッグの前に海外勢の仕掛けは不発に終わります。

一方、国債保有者に海外投資家が多い場合は、国債の大量発行は国債価格の下落(金利は上昇)要因になります。国債の供給が過剰になって国債価格が確実に下落すると分かった時点で、損をする国債は売られ易くなるからです。米国債の多くは海外の投資家や国家が保有していますから、ドルに次ぐ信用力を持つとされる米国債でも過剰に発行すれば金利上昇の可能性は高い。

米国債金利上昇を低く抑える為には、市場に流通する国債を減らすしか無いので、中央銀行は市場か新規発行量、或いはそれ以上の国債を買い入れる必要が有ります。これはある意味、国債保有者へのプレゼントとなります。FRBが米国債を言い値で買ってくれる。

「シン・コロナ」後は金融市場も大荒れでしょうから、投資家達は損失を国債売却で補填しようとするハズです。本来は「有事のドル買い、米国債買い」となるのですが、リーマンショック以降、危機で米国債が売られる局面が何度かあったかと記憶しています。今回も同様に米国債に大きな金利上昇圧力が掛かるでしょう。これをFRBが全て吸収するとなると、相当の量のドルが発行される事になります。

■ ユーロ圏は財政規律をどの程度緩められるかが問題になる ■

ユーロ(拡大マルク)も問題を抱えています。財政規律に厳しいドイツも流石に今回は財政の拡大を容認せざるを得ませんが、陽気な南欧諸国が買って気ままに国債を発行してユーロを垂れ流す事をどこまで容認できるかが問題です。

ラテンな連中が勝手気ままに国債を発行しまくって後にギリシャ危機の様な混乱が起こるよりは、ドイツが南欧諸国を資金援助する形を取るかも知れません。世界的な国債増発でドルも円も為替市場で下落圧力が掛かるでの、輸出国ドイツとしてもユーロを増刷して足並みを揃えなる必要が有りますが、そのコントロールレバーは自分で握っていたいでしょう。

ドイツは南欧各国の財政の拡大幅をある程度決めて、その範囲内であるならば資金援助をする。そんな感じになるのでは無いか。これには南欧諸国の反発が予想され、ユーロ離脱圧力が国内から沸き上がりますが、ドラクマやリラが復活した所で、暴落が目に見えていますから、南欧諸国も流石に即ユーロ離脱とはならず、国内の混乱が続くと予想されます。

ユーロはこんなグダグラを上手に使いながら、供給量を抑制しながらも通過安の状況を上手く作り出すかもしれません。これはギリシャ危機の時と同じ。ユーロ危機と言いつつ、輸出大国ドイツは結構オイシイ思いをしたハズです。

■ 国債が不安定な国はやなり危機となる ■

今回、一番ヤバイのが他国通貨建ての国債を発行している国や、自国通貨建てであっても国債保有に外国人投資家が多い国はヤバい。

アルゼンチンとか、ブラジルとか、トルコとか、ロシアとか・・・ポンポンポンと名前が出て来ますが、これらの国は今回の危機でも、国債の下落と通貨安が避けられないでしょう。当然、国内政治も乱れます。

さらに、資源輸出国が多いので、世界的な経済の落ち込みから資源の需要が減るので、一時的な資源価格の下落にも悩まされるハズです。(その後は資源バブルが発生すると思いますが)

■ MMTの実験に入る日本 ■

日本の財政はいつも世界のトップランナーですから、日本は今回の危機でMMTの実質的な実験入ります。(異次元緩和は隠れMMTのプレ実験)

MMTの美味しい所だけ勝手に切り取れば、「日銀が国債を無制限に買い入れるならば、政府は国債を無制限に発行出来る」事になります。今回の危機で政府は世論に押されて大規模な財政拡大を余儀なくされますから、真水(国債発行)もどんどん膨らんで50兆円程度にはなるのでは無いか。

日銀は現在でも年間30兆円程度の国債を市場から買い入れていますが、これに50兆円がくわわるので、短期的に通常の国家予算に相当する国債を買い入れる事になります。これ、短期的ではありますが、ほとんどMMTに近い状況。

財務省のコロナ対策がイマイチなのは、流石に年間80兆円もの国債を発行して、はたして日本国債市場にパニックが起きないか心配な訳ですが、各国とも日本が財政破綻するか興味深々ですから、通貨マフィア達の圧力で日本はMMTの実験に入らざるを得ない。


■ インフレをコントロール出来るかが問題となる ■

MMT批判の主な理由は「数理モデルが無い」という事と「インフレを抑制できるか」という二点。

数理モデルが有るとされるマネタリズムですが、結果として金融システムは自己崩壊の過程を歩んでいます。だから、そんなモノは犬に食われろ!!デス!!

一方、MMTでインフレをコントロール出来るかは大問題です。例えばコロナ危機で国内の経済が大打撃を受け、明日の家賃も払えない失業者が国内に沢山発生している状況で、何等かの理由で(多分、原油価格や穀物価格の上昇)物価が上昇し始めた時。政府は財政規模を小さく出来るのか・・・・。

実はこれは非常に興味深い点で、輸入物価の上昇要因が円安では無く、ダブついた資金がコモデティー市場に流入した結果であるならば、日本の財政を拡大しようが、縮小しようが、インフレ率に大した差は出ません。

一方、輸入物価の上昇が円安によって発生しているのなら、政府は円の信用を高める為に財政を縮小する必要が有ります。危機対応で拡大しきっていた財政支出から、無駄な部分は削る必要が有ります。

しかし、政府が財政縮小を言い出した瞬間に、「この非常時に何事だ、政府は国民を見殺しにするのか」という意見が国内で沸き起こります。国民は円安とインフレの関係を例え理解したとしても、一度手にしたお金は手放そうとはしません。

だから財務省は国民全員にお金を配る案に反対し続けたのでしょう。一度、オイシイ思いをすると、国民は何度もオネダリをしますから・・・。

国民のオネダリ圧力に蒔けて、政府がインフレ率をコントロール出来なくなると、総体的に円の価値が失われ始めます。「インフレ税」を徴収できるので政府としてはオイシイかも知れません。


・・・実はMMTの本当の目的は「インフレ税」なのかも知れません。


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5 コメント

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Unknown (ゆうこ)
2020-04-17 07:23:04
MMTとは言うけれど?今まで国民から搾り取った消費税分の金額と思えばチャラでしょう。
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Unknown (777)
2020-04-17 08:25:50
日銀の金融緩和で既に超円安になっているのにインフレにはならなかったですからね。

日本は内需が壊滅しているから絶対にインフレにはならないのですね。

安倍政権の発足直前(2012年10月~11月)、政府は、80円台から105円(2013年12月)への円安を生むため、30兆円のドル買いを、秘密裏に、郵貯・かんぽ生命等の政府系金融機関に、行わせています。

25円(30%)の円安目的の、「円売り/ドル買い」マネーが、米国系投資銀行に入って、ヘッジファンドから、2012年末から日本株の買い越し(5兆円規模)になり、日経平均が8,500円台だった株価が、1万4,000円に上がっています(2013年末)。

これが、「アベノミクスの成果」とされたのですから、内実は白々しいことでした。

通貨と株価の大きな変化には、いつも、資金量をもっとも大きくできる政府と中央銀行、および政府系金融機関が関与する原因があります。

日本円と日本の物価は異常に安過ぎる _ 1ドル=50円 が適正価格

 経営者は設備投資をせず、資本装備率はだだ下がり。日本経済は次第に労働集約的になっていき、技術や設備ではなく「ヒトの根性」で「安く良い品質の製品・サービス」を提供するという狂気の状況に至ります。

経営者は「ヒトを安く買い叩く」ことのみを求め、資本主義に必須の「リスクを伴う生産性向上のための投資」に乗り出そうとしません。

従って、日本の内需は永遠に低迷を続け、何百兆円国債を増発しても絶対にインフレにはならないのです。
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Unknown (人力)
2020-04-17 11:29:48
777さん

異次元緩和の直後、円は一時125円程度まで下落しますが、この時政府は為替介入を匂わせています。実際にコストプッシュインフレも起きて日本の物価も上昇に転じました。その後原油価格の下落と、消費税増税で景気に冷や水を浴びせてインフレを抑え込んでいます。この当時は震災対策で政府も財政を拡大しており、世界的にもリーマンショックからの回復期でインフレが発生し易い状況でした。

日本は少子高齢化で基本的に成長率はマイナスですが条件が整えば短期的にはインフレになる可能性はゼロでは有りません。

財務省と日銀は財政規模や緩和量をコッソリ調整しながらインフレを抑制しています。0成長率位が日本経済の適温なのでしょう。

日本からアメリカへのプレゼントとしては為替介入のドル買いと言う手段も有りますね。介入して発行された円は不胎化されるので結果的に米国債残高だけが政府に積み上がり、その費用は国債によって国民の税金に付け替えられます。
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Unknown (鍛冶屋)
2020-04-17 20:17:00
”終わりへの道”のトップランナー?。
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Unknown (一ブログ読者)
2020-04-18 23:27:26
真剣なインフレ懸念のもとでは、財政で引き締めるより先
に利上げしちゃえば良いというか、そうするのが普通で
は?
日銀が出口戦略を温めてきたのは無駄ではなかったという
訳です。
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