■ 米国債金利の上昇は、ジャンク債市場の崩壊によって米株市場を脅かす ■
年初来の米株の下落は「リスクオフ」の一言で片づけられていますが、実はもっと構造的な要因で下げたいます。
米株を吊り上げていたのはアメリカの好景気ばかりではありません。超緩和的金融政策によってジャンク債市場を始め社債市場の金利が異常に低下していたので、米企業は社債市場で低利の資金を調達して自社株を買い上げていました。
株は配当などのコスト(金利)が発生しますから、金利の安い社債発行の資金で自社株を買えば金利コストも削減されますし、株価も上昇して一石二鳥です。ダウを始めとする米株が市場最高値を更新し続けてた背景には、「超低金利による自社株買い」が存在していたのです。
FRBは政策金利を0.25%引き上げましたが、「金利が上がる」というシグナルに社債市場は敏感に反応します。さらに折からの原油安シェール企業を始めとするエネルギー関連企業のジャンク債の金利が跳ね上がっていた時期に重なるので、社債市場の金利は当然上昇に転じます。これによって米株高を演出していた「自社株買い」の歯車が狂います。これが年初来の米株下落の原因です。
■ FRBの3月利上げは無いと見て相場が戻った ■
先日のECBの追加緩和は期待通りでしたが、サプライズでは無かったので市場に大きな影響を与える事は出来ませんでした。しかし、先週末から欧米を中心に株価が上昇に転じています。これはECBの政策に反応したのでは無く。FRBが3月の利上げを見送ると市場が読んだ為でしょう。
世界の市場は日銀やECBの追加緩和にはネガティブに反応し、FRBの利上げ延期にはポジティブに反応する「クセ」が付いてしまった様です。
■ FRBの利上げペースが鈍れば円高が加速する? ■
FRBは年内にもう一度0.25%程度の利上げを実施するでしょう。その為に5月末から6月に掛けて世界の市場は再び混乱します。(逆に言えばそれまでは比較的平穏かと)
市場は利上げを嫌いますから、6月を前にドル安という圧力を掛けるかも知れません。当然円高が加速して、110円/ドルを割り込む事になれば日本株は大きく売られます。
■ 安倍政権は「増税延期と補正予算」で選挙に挑む ■
ポピィリズム(大衆迎合)を絵に描いた様な安倍政権は世界的なリスクオフの流れも利用して「消費税増税延期と補正予算」を占拠の目玉に据えて来ると思われます。ここには金融緩和への反省も、日本株を買い上げた反省も存在しません。ただただ、「世界的な景気後退によって日本の経済も危険な状況になりつつある」事を理由に、前出の政策を前面に出して集票するでしょう。
これで自民党が国会で安定多数を独占すれば・・・後は野となれ山となれ・・・。
■ どこかでオカシイと気づくはず ■
世界景気は徐々に冷えながらもFRBの利上げに一喜一憂します。市場のボラティリティーは確保されますから、上手く波に乗ればそこそこ稼げる展開が続きます。
しかし、徐々に人々は気付き始めます。「何かオカシイ」と・・・。
これはイス取りゲームのイスが減っていく事に近い状況ですが、ボラに踊らされている間に目先の効く資金は市場から徐々に引き上げられ、安定的な資金が抜ける事で、市場変動の振幅がどんどん大きくなるのです。
既にその兆項は十分現れていて、山っ気たっぷりな投資家達が支配する現在、日経平均もダウもかなり荒い値動きになっています。
そうしていう内にも、エネルギー関連のジャンク債が破綻し、新興国市場がどんどんと崩壊して行きます。その影響が米国内に波及し始めた時・・・世界は「金融緩和バブル」の崩壊を目の当たりにするはずです。
巨大銀行が投資部門を急激に縮小していますが、最後まで船に残ったネズミはイス取りゲームに気を取られて船が沈み掛けている事に気付きません。