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マイナス金利の世界・・・徴税のパラダイムシフト

2016-03-08 06:51:00 | 時事/金融危機
 
■ マイナス金利の国債を誰が買うのだろう? ■

日本国債も金融資産ですから国債の購入者は利益を得る為に国債を買います。ところが、国債を購入して満期まで保有すると確実に損をするのがマイナス金利の国債。

実際には国債ディーラーはマイナス金利の国債でも、それをさらに高値で日銀に売却すれば利益が得られる訳で、金利の幅がマイナス方向に拡張された時点で現代の錬金術は再現無く繰り返す事が可能の様に思えます。

■ マイナス金利が進行すると経済は停滞する? ■

しかし、この循環を維持する為には、市中金利を徐々に下げて行く必要が有ります。「金利が下がるのに何が悪いんだ」とお思いかも知れませんが、それはお金を借りる側の理論であって、貸す側は極端な低金利ではリスクと金利のバランスが崩れるので、貸し出す事が出来なくなります。

同時に預金者は預金金利収入という当然の権利を奪われる事になり、これは観えない税金として作用します。

さらに問題は、高齢者を中心に金利が付かなければ物を買わなければ良い、預金金利がマイナスになるのなら、現金をタンス預金した方が損をしない・・・そういう思考が働き消費が低迷し、資金循環も滞る様になります。

■ 個人口座にマイナス金利を導入すると預金流出が起きる ■

ヨーロッパでもマイナス金利は個人の預金口座までには導入しておらず(手数料を含めるとマイナスですが)、これはマイナス金利を個人預金に導入すると銀行から資金流出が起きて、体力の無い銀行は最悪経営が破たんする可能性が有るからです。

■ 世界的に行われる高額紙幣廃止の動きはマイナス金利への布石か? ■

個人預金にまでマイナス金利を導入する場合は、少なくとも高額紙幣を廃止してタンス預金を防ぐ手立てが必要となります。ヨーロッパでは500ユーロ紙幣の廃止が決まり、アメリカでもサマーズが100ドル紙幣の廃止を低減し、かつ日本の1万円札の廃止も勧めています。理由はマネーロンダリングに使われるからだと言っていますが、これは多分、マイナス金利導入とデンイマネー化を見据えての布石かと思われます。

■ 現金にまでマイナス金利を課す事が出来る「電子マネー」 ■

電子マネーが導入されると、電子化された現金にマイナス金利を課す事も可能になります。これはほとんど課税と同様の結果を生みます。個人の資産の目減りと引き換えに、国債残高が減るのです。

■ バブルによって維持不可能となるマイナス金利 ■

こうなると、人々は減る前に使おうという意識が働きますが、資金は土地や株などの資産市場に集中するのでバブルを発生し易くなります。

日銀を始め中央銀行がここでバブル抑制の為に金利を引き上げると何が起きるのか・・・歴史的にはバブルが崩壊します。

同時に国債金利が市中金利に引きずられる形で上昇を始めるので、国債の需給関係にも大きな影響を与えます。国債の購入者は確実に損をするので、誰も国債の入札に参加出来なくなるのです。

■ マイナス金利導入の為には徹底した成長抑制が必要だろう ■

こう考えるとマイナス金利政策を持続する為には、成長力が低下した経済が好ましく、又、国内でバブルを抑制する為には、資金が国外流出する方が都合が良いと言う事になります。

現在の日本は超高齢化社会の進行によって成長力がゼロ以下になりますから、マイナス金利政策が導入し易く、さらに、日本よりも成長力の高い新興国にアメリカを経由して資金が移動して行きますから、日本国内のバブルはある程度抑制されるかも知れません。但し、この為には日本国内での資産投資よりも海外の金融商品の金利が高い必要が有りますが、極度な円安の進行が有れば為替差益によって海外投資は魅力が増します。

■ 消費税増税で景気に水を差しながら、債務を圧縮する財務省 ■

既に日本の財政は多少の景気上昇による税収の増加でどうにか出来る状況を過ぎています。ですから財務省と日銀は「異次元緩和」と言う財政ファイナンス政策に手を染めましたが、だんだんと市中の国債が減る事で、異次元緩和の継続が難しくなって来ました。

そもそも「異次元緩和」の目的は新発国債の金利低下にあった訳で、マイナス金利の導入によって国債需給によって決まっていた国債金利を、ある意味直接下げる事が出来る様になったのです。

但し、これを持続する為には市中金利のマイナスを維持する必要が有り、景気回復はこれに逆行します。

そこで、景気を回復させない為の政策が必要となる訳ですが、消費税増税はこの最たる物になります。時期を適当に選ぶ事で、景気の腰を折る事が出来るので、財務省は今回の消費税増税にそれ程こだわっていないはずです。世界経済に波乱の前兆が有り、日本の成長もマイナスに落ちつつある現状で消費税を増税する必要が無いからです。

■ マイナス金利というパラダイムシフト ■

今世界は「マイナス金利というパラダイムシフト」の渦中に在るのかも知れません。今までは税金という形で人々は国家に利益の一部を還元していましたが、これからは「現金が目減りする」という形で徴税され、国家はマイナス金利の国債を自由に発行出来るのかも知れません。

一見、無税国家の実現に見えるマイナス金利ですが、現在の抜け穴だらけの税制よりも確実に「見えない税金」を納める事になります。これこそ究極のフラットタックスと言えるのかも知れません。

それでも富裕層はあの手この手で現金以外で資産保全を図るでしょうから、結局は庶民の「見えない税負担」が最大化するだけだと思いますが。そして、マイナス金利は経済成長を阻害しますから、私達の生活はさらに苦しいものと成るでしょう。

まあ、マイナス金利が持続可能だとは、とても思えないのですが・・・。