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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

中国版プラザ合意は実現するのか?・・・中国はもっとシタタカだろう

2016-02-08 08:11:00 | 時事/金融危機
 

■ 台頭する「中国版プラザ合意」の待望論 ■

市場の崩壊を止める為には投入される資金の増加が不可欠です。FRBも、ECBも、日銀も「実弾が切れつつある」中で、にわかに台頭してきたのが、「中国版プラザ合意待望」です。

中国は現在、減り続ける輸出をテコ入れするために元安政策を取り始めています。これは両刃の剣で、中国国内からの資本流出を伴います。外国企業も中国人も価値の減り始めた人民元から資産をドルなどに大急ぎで組み替えています。

現在、中国の外貨準備が急速に減少していると主張する「中学版プラザ合意待望論者」達は、中国がどこかの時点で「元高に切り替えて資産流出を抑止すべき」と主張します。

■ ダボスで黒田総裁やIMFのラガルドはドルと元の関係に言及■

ダボス会議で黒田総裁は個人的な見解としたうえで、「中国の資本規制について、国内金融政策を緩和的としながら通貨を安定させるうえで適切」と述べたそうです。

本来は自由な金融市場の守護者である中央銀行総裁が、中国の資金の海外流出を規制する「資本規制」を評価するのは異例とも言えますが、元安が現在の世界の市場に不安感を齎している事を牽制しているのでしょう。

IMFのラガルド専務理事も「ドルと元の適切な関係を明確にすべき」と発言し、過度な元安の進行を牽制しています。

これらの発言は、現在世界経済を不安定化させている「元の不透明性」をはっきりさせる事で、新興国からの資金流出を鈍化させ、強すぎるリスクオフの流れを抑制する事を意識していると思われます。

SDRの構成通貨に元を組み入れる事を決めたIMFですが、元の安定化にはまだまだ時間が掛りそうです。

■ 「中国版プラザ合意」は可能か? ■

黒田総裁やラガルドの発言と、「中国版プラザ合意」は直接結びつく物ではありあません。

「中国版プラザ合意」は中国にこれまで投資してきた投資家達が自分達の利益を拡大する為に言い出した事で、元の切り上げ(ドルの切り下げ)によって中国の輸出企業に大きな被害が出る事は「日本版プラザ合意」が証明しています。

金融資本家達は、元が切り上がる事で、彼らの保有する中国国内の資産が値上がりする事と、中国の内需が拡大する事を期待していますが、日本のバブル崩壊を研究する中国が、この誘いに乗るとは思えません。

にわかに盛り上がり始めた「中国版プラザ合意待望論」ですが、100年単位で国家運営を考える中国人は、今慌てて元を切り上げなくても、やがてドルが勝手に減価するまでじっくり待つと思われます。

その意味で「中国版プラザ合意」は時間を掛けて達成されるでしょうが、それは今では無いと私は考えます。


まあ、いつもの妄想ではありますが。

課税としてのマイナス金利・・・見えない税金

2016-02-08 06:40:00 | 時事/金融危機
 

■ 羊頭狗肉を市場に見透かされたマイナス金利 ■

日銀のマイナス金利は実際には10兆円~30兆円の日銀当座預金に課せられる様で、実際に市場に放出される金額は大した事は有りません。

市場は、マイナス金利導入当日はこれを好感しましたが、内容が明らかになるにつれて株価も円相場も元の水準に戻ってしまいました。サプライズ効果は早々に剥げ落ちています。

■ マイナス金利がもたらした金利低下 ■

今回の日銀のマイナス金利導入の目的は、市場に日銀当座預金の資金を放出する事よりも、短期金利を押し下げ、さらには国債金利も押し下げる事にあった様です。国債金利は残存8年までがマイナス金利になっています。

私は異次元緩和の真の目的は日本国債のファイナンスにあると考えていますから、国債金利の低下は、日本国債の延命には絶大な効果を発揮します。

短中期国債の金利低下に引っ張られて、長期国債の金利も低下します。現在、短期中期ののみならず長期国債の金利も劇的に低下すると思われ、国は非常に安いコストで国債を発行出来る事になります。

■ 金利の下限はどこに有るのか ■

国債におけるマイナス金利の恩恵は、金利が低下し続ける間は継続が可能です。岩田日銀副総裁は、「マイナス金利はー2%までは実現可能」と発言しています。これはフォワードガイダンスという「マジナイ」の一種ですが、金利低下が進む間は、金融機関もマイナス金利の国債購入で利益を得る事が出来ます。異次元緩和はその間は継続する事が出来ます。

一方、実際的な金利の下限は、マイナス金利の弊害が大きくなった時点で底を打つと思われます。

■ 低金利の弊害 ■

日銀のマイナス金利導入で市中金利も軒並み下がっています。これは企業の資金調達を容易にし、個人の住宅ローン金利も下がるので経済にプラスに働くと思われています。本来はリフレ政策は実質金利のマイナス化でこれを実現する予定でしたが、「マジナイ」の効果が消えうせつつある現在においては、実際の金利をマイナスにする事で景気刺激を期待するしか手が無くなったのかも知れません。

ところで、本来「マイナス」が存在しない金利がマイナスになると何が起きるのか・・・・。

1) 仮に預金金利がマイナスになれば預金が引き出される
2) 金利が低下し過ぎると金融機関はリスクに対するリターンが減少するので貸出を減らす

上記はマイナス金利が預金にまで及ぶ極端な例ですが、銀行が持つ「金融仲介機能」が阻害される事で、経済にむしろマイナス影響を及ぼす様になります。

結果的に余った資金は手っ取り早く金利を確保する為に資産市場で運用される事になりますが、原油を始め、株式市場、ジャンク債市場などが大荒れの状況で、資金は安全資産として米国債に向かうはずです。

結局、日本国内のマイナス金利の恩恵はそれ程大きく無い様に思われます。

■ 過大なリスクを負う個人 ■

マイナス金利の影響が一番大きいのは住宅ローン市場です。現在、日本は景気減速が顕著になりつつ有りますから、一般企業が設備投資などを増やす環境には有りません。

一方、住宅を購入したいと考えている個人は住宅ローン金利が低下すれば具体的な行動に出るはずです。さらに、相続税対策を講じたいと考えている土地の所有者の中には、低金利を利用してアパートを新たに建てたり、あるいは建て替えたりする人達も多く出て来るでしょう。

これらの人々に金融機関は低金利で資金を貸し付けるはずです。もし、仮にローンが焦げ付く様な事があっても、担保が確保されていれば銀行としてはダメージは少ないからです。

これは日本の金融機関で続く「担保主義」の悪習の延長に過ぎませんが、マイナス金利によって資産バブルが助長されなければ銀行のリスクは拡大しません。

一方、個人は将来起こるであろう金融危機による経済ショックを織り込んでいません。リストラによる所得の低下を全くヘッジしていません。さらに、アパート経営は現在でも供給過剰になっているので、余程立地が良く無ければ将来的には空き室の増加によって経営が行き詰まります。

「低金利」のリスクを過大に負うのは、実は低金利の恩恵にあずかる個人なのです。

■ 金利機会の喪失という見えない税金 ■

さらに個人は預金金利の低下という見えない損失を追います。

現在、普通預金金利はほぼゼロですが、定期預金金利もだんだんとこれに近づいて行きます。本来、銀行にお金を預ければ2%とか4%という利息が付くのは当たり前でしたから、下がり過ぎた金利は国民の利益機会を奪っているとも言えます。

一方で、政府は安いコスト(マイナス金利では国債発行益が出る)で国債を発行出来ます。これにより増税を防いでいる様に見えますが、これは国民の金利機会の喪失とバーターとなっている事に注意が必要です。

私達は極端な低金利によって「見えない税金」を払っているのです。これを「金融抑圧政策」と言います。

■ インフレの進行で効率的に債務を圧縮する「金融抑圧」 ■

「金融抑圧」政策によって実質債務を圧縮する為には、国債金利の抑制とインフレの進行が同時に起こる必要が有ります。

日銀の異次元緩和の効果は円安の進行によってインフレを達成していますが、今後、国内の低下し過ぎた金利を嫌気して資金が国外流出する過程で為替は必ず円安に振れます。利上げ以降の円高の進行を逆転させられれば、輸入物価の上昇を通してジリジリとインフレ率は上昇するはずです。

■ FRBの利上げが成功するかどうかで今後のシナリオが変わる ■

日銀のマイナス金利導入は「金融抑圧」という側面からは、それ程悪く無い(政府にとって)政策に見えます。しかし、最大の問題は「世界経済が成長を続けられるか」に有ります。

アメリカは3月の利上げ検討を前に雇用が予想を下回るなど、利上げに逆風が吹き始めています。このままアメリカの景気減速が加速するならば、FRBは利上げペースを落とさざるを得ません。これは「利上げの躓き」とはなりますが、低金利によって維持されている市場は延命する事になります。

ここに日本の資金や、中国の資金を上手く呼び込む事が出来れば、アメリカの市場は一時的に回復するでしょう。2004年にFRBが利上げした後、日銀の量的緩和マネーがアメリカの住宅バブルを支えた様に。

一方、米市場への資金流入が思う様に進まなければ、様々な市場が溶け出し始めます。まさに今、その兆項が現れていますが、このままズルズルと市場価格が低下し続けると、どこかの時点でパニックが起きるはずです。