■ 台頭する「中国版プラザ合意」の待望論 ■
市場の崩壊を止める為には投入される資金の増加が不可欠です。FRBも、ECBも、日銀も「実弾が切れつつある」中で、にわかに台頭してきたのが、「中国版プラザ合意待望」です。
中国は現在、減り続ける輸出をテコ入れするために元安政策を取り始めています。これは両刃の剣で、中国国内からの資本流出を伴います。外国企業も中国人も価値の減り始めた人民元から資産をドルなどに大急ぎで組み替えています。
現在、中国の外貨準備が急速に減少していると主張する「中学版プラザ合意待望論者」達は、中国がどこかの時点で「元高に切り替えて資産流出を抑止すべき」と主張します。
■ ダボスで黒田総裁やIMFのラガルドはドルと元の関係に言及■
ダボス会議で黒田総裁は個人的な見解としたうえで、「中国の資本規制について、国内金融政策を緩和的としながら通貨を安定させるうえで適切」と述べたそうです。
本来は自由な金融市場の守護者である中央銀行総裁が、中国の資金の海外流出を規制する「資本規制」を評価するのは異例とも言えますが、元安が現在の世界の市場に不安感を齎している事を牽制しているのでしょう。
IMFのラガルド専務理事も「ドルと元の適切な関係を明確にすべき」と発言し、過度な元安の進行を牽制しています。
これらの発言は、現在世界経済を不安定化させている「元の不透明性」をはっきりさせる事で、新興国からの資金流出を鈍化させ、強すぎるリスクオフの流れを抑制する事を意識していると思われます。
SDRの構成通貨に元を組み入れる事を決めたIMFですが、元の安定化にはまだまだ時間が掛りそうです。
■ 「中国版プラザ合意」は可能か? ■
黒田総裁やラガルドの発言と、「中国版プラザ合意」は直接結びつく物ではありあません。
「中国版プラザ合意」は中国にこれまで投資してきた投資家達が自分達の利益を拡大する為に言い出した事で、元の切り上げ(ドルの切り下げ)によって中国の輸出企業に大きな被害が出る事は「日本版プラザ合意」が証明しています。
金融資本家達は、元が切り上がる事で、彼らの保有する中国国内の資産が値上がりする事と、中国の内需が拡大する事を期待していますが、日本のバブル崩壊を研究する中国が、この誘いに乗るとは思えません。
にわかに盛り上がり始めた「中国版プラザ合意待望論」ですが、100年単位で国家運営を考える中国人は、今慌てて元を切り上げなくても、やがてドルが勝手に減価するまでじっくり待つと思われます。
その意味で「中国版プラザ合意」は時間を掛けて達成されるでしょうが、それは今では無いと私は考えます。
まあ、いつもの妄想ではありますが。