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中国経済はソフトランディングできるのか?・・・対日軟化したら危険?

2014-09-27 13:35:00 | 時事/金融危機
 

■ 何度目かの正直、中国バブルの崩壊 ■

「中国バブルの崩壊」という言葉をリーマンショック後何回耳にした事でしょう。雨後に筍のように次々に建てられる高層建築や、高級ブティックに群がる中国人の姿を、かつての自分達の姿に重ねてしまう日本人は、いつ中国バブルが崩壊するかと気になって仕方ありません。

これまで中国がバブル化した経済を支えて来れたのには、中国ならではの事情があります。

1) 外貨準備高に連動して増える元
2) 景気後退を知らない中国人のアニマルスピリット
3) 中国人の高い投資志向
4) インフラ整備やボトムアップによる経済成長
5) 共産党の半ば何でもアリの経済政策と金融政策

中国はバブルに穴が開きそうにある度に大量の元をその穴に突込み、さらに行き過ぎた市場は強力な行政指導で強引に冷却しながらもバブルを拡大し続けて来ました。

■ アメリカの4倍の人口が居るのだからGDPも4倍になるのか? ■

中国を巡る楽観論の中には、中国の内需が拡大の余地を残している事を理由に上げる人が多いと思います。

1) 中国の人口はアメリカの4倍
2) アメリカのGDPは中国の1.5倍

この数字だけを見れば、中国のGDPにはまだまだ大きな伸び代が有る様に思われます。中国にはまだまだ貧しい人が沢山居ますから、それらの人の生活レベルが向上する事によって経済は成長余力は充分にあると考える事は確かに可能です。

■ 貧富の差が社会を不安定にするまでに拡大している ■

中国の社会は共産主義の建て前に反して格差が拡大しています。1%の富裕層が1/3の資産を保有する社会です。

ジニ係数は貧富の差を表す数字として活用されますが、0が完全に平等な状態、1が貧富の差が極大化した状態です。

2007年頃の調査で日本が0.329、ドイツが0.295、アメリカが0.378でした。中国のジニ係数は2010年時点で0.6を超えたと西南財経大学(四川省)が試算しており、最近の北京大学の試算では0.7を超える結果も出ています。

リーマンショック以降、日本やアメリカのジニ係数も拡大していますが、社会が不安定になるリミットを言われる0.6を中国は確実に突破しているようです。中国全土で年間に20万件以上の抗議運動が起きており、多くが小規模な暴動に発展しています。中国共産党は警察の強行な姿勢で暴動を抑え込んでいます。

貧富の差が激しく社会が不安定なメキシコですらジニ係数は0.5を下回っていますから、中国の格差は社会を不安定にさせるには十分な数字とも言えます。

■ 都市部の住宅の25%が空室 ■

中国は老後の社会保障が確立していませんので、人々の貯蓄や投資志向が強く、これが不動産バブルを膨らめた要因になっています。

1) 預金金利の上限が定められているので高金利の理財商品にお金が集まる
2) 闇金融市場(シャドーバンキング)を通して資金が不動産開発に投資される
3) 資産としてマンションなどが値上がりする

この様に、資金が富裕層と開発業者の間を行ったり来たりする事で、中国の不動産バブルは膨らんで来ました。ところが、今年に入ってから不動産価格が下落に転じ、不動産バブルの崩壊が秒読み段階に入ったとの見方が高まっています。

1) 資金循環に変調をきたし、開発が途中で中止されるケースが出ている
2) 不動産の需給バランスが明らかに供給過剰になっている
3) 富裕層が不動産を買い控え初めている(国外に資産を移し始めた)

この様な事が原因になって不動産価格が下落する都市が4割にも達しました。都市部の空室率も20%を超えているようです。

■ 大規模商業施設が埋まらない ■

私は仕事柄、中国物件を手がける事も多いのですが、未だに巨大物件の図面が回って来ます。ほとんど冗談としか思えない様な規模の商業施設やホテル、不動産、はたまた競技場施設などが中国各地で計画されています。

一方、出来上がった商業施設の中にはテナントが埋まらずに開店休業状態の施設も少なく無い様です。周辺の住宅施設の開発が頓挫したケースでは当然商業施設の需要は有りません。住宅同様に商業施設も過剰供給となっているのです。

商業不動産の崩壊は住宅の崩壊に先だって発生します。今まさに中国はその様な状況に陥りつつあります。

■ 高級店から客が居なくなった ■

一昔前、海外の高級ブティックに群がっていた人々の姿も無くなったそうです。これは習近平主席が進める汚職追放キャンペーンの一環で、高級品を買ったり身に付けたりしていると汚職をしていると疑われるからだそうです。

中国市場の怖い所は、政治的事情で市場がいきなり消失する事です。

■ GDPの成長率は実際には3~4%に低下している? ■

一昔前は二桁成長が当たり前だった中国ですが、今年の経済成長率予測は7%台です。

しかし、中国政府がGDP成長率を地方官僚の成果の基準にしていた為、中国のGDPは実際よりも水増しされていると言われています。さらには需要の無い開発工事で地方政府はGDPを強引に引き上げています。

ですから、中国の経済の実情は、エネルギー(電力)消費量や、鉄道輸送量から類推する事が一般的になっています。(中国の中央政府ですら・・・)

今年に入ってから石炭生産量が低下している事が話題になっています。-1.5%という数字が本当ならば、成長率がマイナスに落ち込んでいる可能性も指摘されています。

中国経済は依然として外需依存と投資主導型です。世界的な消費の低迷で中国の輸出が落ち込み、不動産価格の下落の影響も出始めているので、中国経済は大きな変節点に達したと見る事が出来ます。

外需に関してはアメリカの景気回復に期待したい所でしょうが、アメリカの消費者支出は横ばいです。

■ バブル崩壊をソフトランディングできるのか? ■

中国が日本の様なバブルの大崩壊に至るのか、それともソフトランディングを達成するのかは意見の分かれる所でしょう。

問題は大手銀行の不良債権が実際にどの程度あるかに掛かって来ますが、本当の数字は隠されていて分かりません。シャドーバンキングに投資していたりしたら、不良債権はかなりの額になる可能性があります。

一方で共産党の独裁政権で、世界のルールからある程度切り放されている中国では、危機が起きても「ミラクル」な手法で危機を乗り切る可能性が有ります。

1) 中国中央銀行が大量に元を発行して銀行に資本注入をする
2) 一定期間、不動産取引を停止する
3) 預金を一部閉鎖し、資金の海外移転も禁止する

元の為替相場は下落し、インフレが発生しそうですが、それすらも価格統制で乗り切ってしまうでしょう。

一方で、腐敗官僚を大量摘発して国民のガス抜きをすると思われます。第二の文化大革命の様な大粛清が行われる可能性を、中央の官僚も、地方の官僚も本気で心配している事でしょう。ですから、妻子と資産を必死で国外に逃がしています。

■ 国民の不満を国外に向けるだろう ■

もし、中国バブルが派手に崩壊した場合、中国国内で暴動が多発する事は想像に難くありあません。これが打倒共産党の運動に発展した場合、天安門事件の様に軍は躊躇無く国民を戦車でひき殺すかも知れません。

そうなる前に中国は国民の怒りを海外に向ける事が予想されます。

尖閣諸島に上陸するとか、南沙諸島や西沙諸島を奪うなどの行動に出る可能性は低くはありあません。

こうなると、欧米諸国は中国を経済制裁するはずですから、世界経済も影響を免れ得ません。ロシア制裁を見ると、結び付過ぎた世界経済に過剰な影響を与えない様に注意しながら制裁のポーズを取っていますが、はたしても中国も生温い制裁で留まるのかは神のみぞ知るです。

中国の経済崩壊は軍事的緊張の高まりを誘発するので、私達日本人にとって好ましい状況ではありあません。自民党が中国共産党と党レベルの会話に向けた動きを見せていますが、中国の国内状況に危機感を抱いている表れかも知れません。


「中国崩壊キタァーーー!!メシウマ」なんて言っているネトウヨ諸君は、気を付けないと日本経済も巻き込まれて失業なんて痛い目に合うかも知れません・・・。