人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

円は日本国内でしか使えないのか・・・金融緩和のお金は何処に行くの

2013-12-07 03:58:00 | 時事/金融危機
 

■ 三橋教の良く言う「円は日本国内でしか使えない」はホント? ■

三橋教が主張する「円は日本国内でしか使えない」という言葉。

文脈としては、次のようなケースで使われます。

「金融緩和で増えた「円」は日本国内でしか使え無いのだから、いずれは国内の経済を活性化する」

「円は日本国内でしか使えないのだから、外国人投資家が持っていたとしても日本の資産に投資するしか無い」

一見、「そうだよな・・・」って納得してしまいます。

■ 金融市場では通貨はゲームのチップみたいなもの ■

私達の現実の生活では、お金は「欲しい物が買える」ので、かなり「リアル」な存在です。

一方、金融市場で運用されるお金は、ゲームのチップやスコアーの様な存在で「リアル」とはほど遠いと感じます。

1) 日銀が国債を銀行から購入して「円」を銀行に配る(金融緩和)
2) 銀行の円の一部は国際金融市場で運用される
3) 為替で運用する場合は、「円」を売って「ドル」が買われたりする
4) 「円」の一部は外国人投資家の手に移る
5) 「円」が売られるので円安になる。
6) 手元の「円」で、先物市場で日本の株式などに買いを入れる
8) 株式などの日本の資産が値上がりする
9) 為替市場で「ドル」を売って「円」を買う
10)「円」が値上がりする
11)日本の資産を売却する時に円高で差益を生む
12)「ドル」を売って「円」を買い、為替市場を「円安」に振る
13)値下がりしあ「円」を買って、値下がりしている日本の資産に投資する

何もイベントが無ければ、この繰り返しで外国人投資家、特にヘッジファンドなどは、日本円を使って日本市場から効率的に「金利」を稼ぐ事が出来ます。

■ 為替市場がコントロール出来る事がミソ ■

ここで問題になるのが、「為替市場がコントロール出来る」という事。
外為市場は巨大なので、一部の者の売り買いで大きく値動きする事はありません。日銀の為替操作も兆円単位で行われます。

ですから、上に書いた様な循環が発生する為には、それなりの量の「円」や「ドル」が同じ目的で投資される必要があります。要は、投資家達はある程度連携して「円安」や「円高」を仕掛け、ある程度の値動きが実現すれば、利益を求める他の投資家が追随して、市場価格が変化します。

為替市場を操作する為には、兆円単位の資金が手元にプールされている必要があり、日銀が発行した円は、為替市場の中にある程度の量が滞留する事になります。

短期の値動きを別にすれば、為替が一定の水準で安定する為には、それぞれの国の為替市場内での通貨の量が均衡している必要があります。

FRBが金融緩和でマネタリーベースを拡大したら、当然、為替市場でドルがダブついて「ドル安」が発生します。リーマンショック以降の「円高」は「ドル安」の裏返しでしたから、日銀の異次元緩和によって円が安くなり、100円/1ドル近辺で現在はバランスしています。これは、為替市場内の円の量が増えてた事を意味します。

この様に、通常の為替市場では「通貨定量説」は、中期的には成立している様に思われます。

但し、これは市場と通貨が通常状態にあるという前提条件が付きます。

例えば、金融崩壊が意識される状況では、エマージェンシー通貨(新興国通貨)などは売られ、それらの通貨に対してドルやユーロや円が値上がりします。

一方、財政危機などがクローズアップされる状況になれば、例えドルや円だとしても値下がりを余儀なくされます。

■ 円キャリートレード ■

もう一つ、円が日本国内では無く国外で運用される例を考えてみます。

いわゆる「円キャリートレード」です。

1) 金利の安い円を借りる
2) 為替市場で円でドルを買う
3) ドルで効率的な運用を行う
4) 儲けの中から為替市場でドルを売って円を買い、円の借金を返す

日本と国外(得にアメリカ)の金利差を利用する取引が「円キャリートレード」です。この場合の円は「調達通貨」と呼ばれます。

金利差が2%以上あれば、ドルでリスクのある投資をしなくても確実に利益を稼ぐ事が出来ます。

「円キャリートレード」が継続している間は、「円安が進行」している事により投資家達は儲けを拡大する事が出来ます。

円安が進行する状況としては、通貨定量説的には、金融緩和によって為替市場が円安に振れる状況が一般的ですが、それ以外の要素としては、円キャリートレードが拡大している間は、円売りが円買いを上回るので、円安が進行します。

リーマンショック直後の極端な円高は、日米金利差が縮小したので、円キャリートレードのポジションが一気に解消された事によって発生しました。円高によって、キャリートレードの利ざやが消失するので、我先にポジションの解消が発生したはずです。

■ 円は市場に滞留している ■

「円は日本国内でしか使えない」というのは、一面では正しい見方です。

日本株や不動産への投資で、外国人投資家が手元の円を日本の市場に投資すれば、一見、円は日本国内に還流して来た様に見えます。

しかし、日本の株式市場のプレーヤーの7割は外国人投資家ですから、例え日本の市場に投資された円であっても、それを手にする多くは投資家は外国人です。

今年の前半の株価上昇局面では、日本国内の銀行や投資家達が、塩漬けになっていた株式を一部売却して利益を得ています。これらの利益の一部は、消費に使われたので、今年前半はデパートなどで高級品が良く売れました。

しかし、日銀の緩和規模に比べれば、極小さな量の円が実体経済で使われたに過ぎません。残りの円の多くは、銀行の日銀口座にブタ積され、又は、為替市場にプールされています。

■ 設備投資よりも資産運用の方が短期間で確実に儲かる ■

企業にした所で、将来的な消費が期待できない状況では、手持ち資金は設備投資よりも資産運用に回した方が利益が出ます。

現在の日本の企業は、本業で稼いでキャッシュフローを生み出し、そのキャッシュフローを市場で運用して拡大している投資家とも言えます。トヨタやソニーなどの企業の資産運用の利益はバカに出来ません。

この様に、成熟した消費社会を持つ国や、少子高齢化で消費が落ち込む国では、国内の設備投資よりも、資産運用に資金が流れがちになります。

■ 金融緩和でデフレを克服できない訳 ■


リフレ論者は、大規模な金融緩和が予想インフレ率を上昇させて、デフレ脱却が達成されると主張しました。

異次元緩和直後は確かに予想インフレ率が上昇しました。しかし、景気改善を演出していた株価の上昇が停滞した途端、予想インフレ率の上昇は頭打ちになっています。

結局、拡大したマネタリーベースが実体経済に投資されないので、所得の改善も限定的で、当然、消費も拡大しない事が明確になりつつあります。

グローバルに拡大した巨大な金融・資産市場を有する世界では、資金は国境を越えて一番金利の稼げる場所に流れて行きます。金融緩和の効果は、この様な世界では限定的で、国内経済を強く刺激する事が出来暗線。


三橋教はこの点には始めから気づいている様で、公共事業の拡大とセットで無ければ金融緩和の効果は限定的と主張して来ました。

この点は、高橋洋一氏の様な、金融資本家の手先のリフレ論者よりも、三橋貴明氏が評価されるべき点だと思われます。尤も、三橋氏は、財政拡大の危険性を軽視し過ぎているので、似たり寄ったりではありませすが・・・。




本日は「日銀の緩和マネーの行先」について、妄想を巡らせてみました。



それでは皆さん、楽しい週末をお過ごし下さい。
出来れば、日本経済の回復の為に、観光地で散財などは如何でしょうか。