人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

炭鉱のカナリア・・・美しい声に酔いしれているうちに・・・

2013-08-20 09:09:00 | 時事/金融危機
  



■ ジワジワと上昇する世界の国債金利 ■

米国10年債金利が3%に迫り、30年債金利が4%に迫りつつあります。

これをどう解釈すべきでしょうか。


<楽観論> 
米国の景気回復を反映して、リスク資産である米国債かリスク資産への資金移動が起きている

<市場的見方>
FRBの緩和縮小を警戒して、国債金利の上昇を先取りした動きである

<悲観論>
FRBの量的緩和はきっと失敗に終わるので、国債金利に上昇圧力が掛かっている


市場は短期なので<市場的見方>が現在の米国債金利の上昇の理由としては正しいと思います。リスク市場で一度警戒感が高まれば、短期的には米国債に資金還流が起こり、金利はスーーと下がるはずです。

ドイツ国債の金利の動きも同様で、欧州リスクが低減したという観測から、イタリアなどの国債が買われ、ドイツなど安全だけど金利の低い国債が売られているのでしょう。


■ イタリア国債と米国債の金利差が1.5%程度・・・ ■

ここで気になるのが、米国債金利とイタリア国債の金利差。
1.5%程度になっています。

この金利差がどんどん縮小して行くと、財政が懸念されるイタリア国債と米国債金利が肩を並べる事になります。

同じ金利であったとしても、安定度は圧倒的に米国債の方が高いので、金利だけで比較するのはナンセンスではありますが、何だか短期筋が仕込みをしていそうな雰囲気が漂います。

欧州でチョコっと危機が表面化すれば、やはり南欧国債の金利は急上昇して、一気に米国債に資金還流が起こりそうな気配がします。

■ 国債金利は資金循環の指標と化していないか? ■

国債金利は本来はその国の景気動向を反映すべきものです。しかし、リーマンショック後の世界の国債金利は、過剰流動性の資金循環の指標の様な存在になっていると感じられます。

株と同じ様に、期待で買われで事実で売られる存在に成り下がっています。

唯一、日本株だけは、異次元緩和後の混乱期を除けば、比較的安定しています。
国債保有者が国内の金融機関が主体となっているので、パニックが起きなければ国債の極端な売却は、むしろ自分達の首を絞める事を理解しているからです。

さらには日銀が新発国債の7割を買っているので、金利上昇圧力を抑え込んでいます。
結局、異次元緩和後も目立った景気回復の動きは見られず、株価下落や増税問題がグズツイテいるので、「期待インフレ率」も抑制されています。要は、景気回復にプロの人達は未だ懐疑的なのです。

国債の金利コントロールという点にかけては、日銀は世界でトップクラスの実績を出しています。

■ 崩壊は弱い所から始まる ■



注目すべきはインドです。

FRBの緩和縮小予測は、世界中で資金の逆転を発生させていますが、その影響を最も強く受けているのが新興国です。

インドの10年債金利は10%に迫ろうとしています。
インドのルピーや、ブラジルのレアルなど、新興国通貨の下落も止まりません。

世界の大きな流れとしては、FRBの緩和縮小を材料に5月頃からリスクオフの流れが定着しています。

■ 不気味な米国株 ■

8月はバカンスシーズンで株式市場の参加者が少ない月です。昨今の値動きを見て、世界経済の状況を語るのは問題が多い事を承知で言うならば、米国のダウ平均株価が15000ドルの大台を割り込もうとしています。

9月に入って、決算期のお化粧相場となるでしょうから、あまりココを問題視しても始まりません。


一方、日本株は薄商いの中、日銀のPKOや年金資金が、必死に水準を維持している感じがします。

■ 9月に緩和縮小予測が遠のけば、米国株高、債権金利の低下 ■

ここに来て、アメリカの経済指標を好悪マダラ模様です。
長期金利の上昇が住宅市場の重りにもなるので、先行きの見通しは明るくはありません。

多分FRBは9月には緩和縮小を実施しないはずです。
決算期の株価維持を考えれば当然の選択です。

そこで市場は一気にリスクオンに走りますが、その資金の行く先は米国株では無いでしょうか。

問題は日本の株式市場から、米国債への資金流出がどの位発生するかですが、緩和縮小の後退予測はドル高、円安を発生させるので、日経平均は13,500円を挟んでの攻防となるのではないでしょうか?

13,000の大台を割ると、アベノミクスの期待感が一気に萎むので、日銀や年金、ゆうちょ資金を振る動員して、株価維持が図られるのでしょう。(プレゼントですね)

■ リスクが国債金利から読み難い ■

国債市場の流動性が高まり、価格決定要因が短期要因になってくると、長期のリスクが読みにくくなります。国債金利は既にリスクを正確には表していないのでしょう。

同様に日銀が主要な買い手となった日本国債市場もリスクを反映し難くなっています。

■ 新興国市場で囀り始めたカナリア ■

現在、カナリアは新興国市場で盛んに囀り始めています。

従来も新興国市場は、先進国の景気の浮沈で大きく影響を受けて着ました。しかし、今回のインドやブラジル、中国の危機は、いよぴよ新興国バブルの崩壊を予感させるものがあります。

そろそろ金融緩和バブルの影響が、末端部から顕在化して来るのでしょう。

はたして、先進国の危機がその先に訪れるのか、それともアメリカの景気は回復基調とか、ヨーロッパのリセッションは終わったなどと報じるマスコミの見方が正しいのか?

非観論者は嫌われますが、いつの危機においても非観論者の声を市場は無視します。
そして、崩壊後に、「○○は2年前から今回の危機を予見していた」などと持ち上げられるのです。

カナリアは美しい声で囀ります。
これに酔いしれていると、いつしかカナリアの声は聞こえなくなり・・・・。