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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

この画にゾクゾクしなければ、あなたは不感症だ・・・『シュトヘル』

2013-01-17 17:24:00 | マンガ
 



■ マンガでゾクゾクしたのは久し振りだ ■

2年ぐらい前だろうか?
秋葉原のヨドバシカメラの上の本屋でこのマンガを見つけました。

薄い冊子で、冒頭1話が読める様になっていましたが、
電撃に体を貫かれる様な衝撃を覚えました。
『来訪者バオー』で、荒木飛呂彦の画に初めて出会った時の衝撃に似ていました。

その本の名前は『シュトヘル』。


決して上手い画では無い。
しかし、動きの一瞬を、デフォルメして切り取った見開きの画に、
脳が痺れるような衝撃を覚えました。

近所の西友で見かけた表紙なので、後で買おうと思ったきり、
何故か、近くの書店で見かける事も無く、買えずにいました。

ところが、先日、1巻目だけが、西友の本屋で売られていました。
速攻で購入して、息をする事も忘れて読み終えました。

2巻目以降を、アマゾンで「ポチっとな」しようと思っていたら、
近所のブックオフで5巻目までが売られていた。
・・・これこそが、私とマンガの間にある「縁」です。
当然、大人買い。

■ この画にゾクゾクしなければ、あなたは「不感症」 ■



マンガの画の好みは人それぞれです。
しかし、私は敢えて言いたい。
この画にゾクゾクしなければ、アナタは「不感症」だ!!

上手い絵を描くマンガ家はゴマンと居る。
綺麗な絵を描くマンガ家は、素人にだって溢れている。
しかし、個性的な絵を掛けるマンガ家は限られています。

さらに、「ゾクゾク」させる絵を描けるマンガ家ともなると、
両手の指にも余る。

そして、「ゾクゾクする絵」と「ゾクゾクさせるストーリー」を描けるマンガ家は、
片手の指に余る存在です。

■ 「文字」を巡るスリルングな歴史活劇 ■

舞台はモンゴル帝国勃興の時代。
西夏は宋を退け繁栄を築きます。
西夏では学問が栄え、多くの仏典や歴史書が、西夏文字で翻訳され、遺されています。

一方、繁栄を誇った西夏も周辺から衰退が始まっています。
モンゴルを初めとする騎馬民族に脅かされています。

そして、今まさに西夏の城壁は、モンゴル軍の攻撃に陥落せんとしています。
モンゴル軍の先頭に立つのは、モンゴルに屈したツォグ族の族長の息子ハラバル。
彼の母は皮肉にも西夏の出身ですが、彼はその血に抗うがごとく戦闘に身を置きます。

そして、西夏の城壁の上で、仲間と共に目前の死に無向い合う少女兵士が一人。
彼女は「ウィソ(雀)」と仲間に呼ばれています。

劣勢が確定した西夏軍は、城砦の裏手から退却を余儀なくされますが、
それは敵の罠でした。
一人残らず、討ち取られ、城壁に弓矢で死体が串刺しとなって曝されます。
逃げ遅れた「ウィソ(雀)」は、仲間の代わり果てた姿に愕然とします。

ところが、仲間の死体を目当てにオオカミ達が集まってきます。
群れのボスの体は人よりも大きく、
仲間の死体を食いちぎろうとするオオカミに「ウィソ(雀)」は一人立ち向かいます。
そして、倒したオオカミの死肉を喰らいながら、彼女はオオカミのボスにも打ち勝ちます。
復讐と生への無垢な執着が、彼女をオオカミの様な野生の戦士へと変えてゆきます。

「ウィソ(雀)」は、モンゴル軍が「悪霊=シュトヘル」と恐れる存在となるのです。

■ 守るべき物、守るべき者 ■

ツォグ族の族長の息子ハラバルに復讐を果たすべく、
シュトヘルは執拗にモンゴル軍を襲います。

そんな彼女は、行商人の策謀で、ハラバルの弟ユルールを守る事となります。

ユルールは血の繋がらない西夏出身のハラバルの母に懐いていました。
彼は戦いでは無く、学問を好み、西夏の文字に惹かれます。
そして、西夏の滅亡を目前に、西夏の文字をモンゴルの焚書から守るべく、
玉に刻まれた文字と共に、ツォグ族の下を出奔します。
共には、西夏からハラベルの母が嫁いだ時に付き添った、年老いた従者一人を連れて。

ユルールと行動をともにすれば、彼を追う兄ハラバルと遭遇するだろうと行商人は言います。
そこで、シュトヘルはユルールと行動を共にするのです。

文字を守る事に命を書けるユルール。
西夏文字を何故か徹底的に消し去ろうとするモンゴルの皇帝。
西夏人の血を引く事で、あえて戦いの中で生きる事を選択するハラベル。
そして、モンゴル人を根絶やしするという復讐に燃えるシュトヘル。

物語は、戦いを好まぬ者、戦いに生きる者、戦いでしか生きられない者の
それぞれの思惑を絡めて進んで行きます。

それぞれが、守りたい者と、守りたい物の狭間で揺れ動きます。

■ ナント作者は女性だった ■

この骨太のストーリーと、迫力ある構図から作者は男性とばかり思っていました。
しかし、ナント、伊藤 悠は1977年生まれの女性。

確かに、シュトヘルのキャラクターが男性から見た女性とは一味も二味も違う。
さらに、この作品、もう一つのカラクリがあって、
ジェンダーが非常に不明確になっています。
(・・・・ここら辺は読んでのお楽しみ。)

元町夏生など、青年誌で活躍する女性作家は、
少女漫画の作家達と一線を画する存在ですが、
誰をとっても、個性的で魅力的な作風を特徴としています。

まだまだ荒削りな作家ですが、
それ故に、ペンの勢いを感じずにはいられない魅力的な作家です。

7巻目がまもなく発売になる様です。
はたして、ユルールは文字を守り切る事が出来るのか?
まだまだ手に汗を握る展開が続きそうです。

本日は、レビューというよりも、
ただただ、この作品の存在を知ってもらいたいだけの記事になってしまいました。

マンガはやはり絵を楽しむものです。
私がここで、どんなに言葉を尽くすよりも、
一読して、ゾクゾクするかしないかしか無い作品とも言えます。

そして、この作品にゾクゾクしない方を、私は「不感症」と非難する程に、
私はこの作品が好きだという事を、勝手に皆さんに押し付けずにはいられないのです。




<追記>

伊藤 悠はこの作品のほかに『皇国の守護者』の作画も担当しています。

この作品も、本屋に行く度に「買ってよオーラ」を私に向って放射し続ける作品です。





「噴飯」という言葉はこの為にある・・・政府ファンドで50兆円の外債購入

2013-01-17 03:28:00 | 時事/金融危機
 

■ 政府ファンドを設立して50兆円の外債購入 ■


「FRB議長を安倍首相が手助けか-外債購入ファンド構想で」(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MGLHAA6JIJVE01.html


<全文引用>

1月14日(ブルームバーグ):日本経済を支えようと円安を誘導するため米国債を買い入れようとしている安倍晋三首相は、米国債の投資家の中でも米国の無二の親友となりそうだ。

野村証券と岩田一政・元日本銀行副総裁によれば、安倍首相が総裁を務める自民党は50兆円に上る公算の大きい外債を購入するファンドの設置を検討を表明。JPモルガン証券は総額がその2倍になる可能性もあるとしている。日本経済は2008年以降で3度目のリセッション(景気後退)に陥っており、外債購入となればここ4カ月間で12%下落した円をさらに押し下げるとみられる。

バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチ米国債指数によれば、米国債相場は09年以降で最悪の年初スタートとなったが、こうした外債購入はバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の国債利回り抑制の取り組みを手助けすることになる。米連邦公開市場委員会(FOMC)は月450億ドル(約4兆円)相当の米国債の買い入れを決めたが、米国と欧州、中国の経済見通しが改善していることで、相対的に安全な資産とされる米国債の需要が抑制され、米国債は0.5%値下がりした。

ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントで340億ドル相当の債券運用に携わるファンドマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は8日の電話インタビューで、「日本の米国債購入に米国ががっかりするとは思えない。FRBはあらゆる力仕事をこなしている」と述べた。

米10年国債の利回り は1.87%に上昇。4日には昨年4月以来の高水準となる1.97%に達した。ブルームバーグ・ボンド・トレーダーのデータによると、昨年12月28日の取引終了時からは17ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇している。

米10年国債利回りの平均は2012年、1.79%と少なくとも第二次大戦後で最低となった。日本の10年国債平均利回りは昨年0.85%だった。

<引用終わり>


■ 化けの皮が剥がれた?安倍政権 ■

「アベノミクス」による景気回復期待が集まる安倍政権。

ところが、ブルームバーグの記事によると、
「政府ファンド」を立ち上げて「外債」を50兆円購入するといいます。
「外債」とは即ち「米国債」の事を指す様です。

年額20兆円の建設国債の発行だけで、
マクロ経済の議論が沸騰する中で、
ポンとアメリカに50兆円(100兆円とも見込まれている)プレゼント。

安倍政権の官僚が、円安水準に言及してもアメリカが見逃しているのは、
「政府ファンド」の設立の密約があったからでは無いでしょうか?

■ 為替介入の継ぐ、アメリカ国債買い支えのテクニック ■

為替介入は、円安誘導の手段と思われていますが、
為替操作に見せかけてた「米国債の買い支え」以外の何物でもありません。

1) 政府短期証券を発行して日銀から円を調達する
2) 為替市場で円を売って、ドルを買う
3) 当然、円安に振れる
4) 手元に残ったドルで「米国債」を購入する

5) 日銀が国債を市場に放出して、発行した円を回収する(不胎化)
6) 政府短期証券の償還の為に国債を発行する

7) 為替市場は巨大なので、為替介入の効果はすぐに薄れ、円高になる

せっかく発行した円を「不胎化」してしまうのですから、
日本国内の資金量に変化は無く、
結果として、アメリカ国債を購入した分だけ、日本国債の残高が増えます。

「購入した米国債は、日本の資産となりますから、日本のバランスシートは傷まない」
そう説明されるのでしょうが、これは日本政府が米国債を売却出来る事が前提です。

実際には償還分もロールオーバーされるので、
アメリカは日本に1ドルも払う必要はありません。

この様に、日本政府による円安介入は、アメリカへの上納金に過ぎません。
小泉政権と菅政権(野田財務大臣)の時代に、大規模な為替介入が行なわれています。

小泉政権時代は「日銀砲」などと呼ばれ、30兆円を超える規模でした。

■ 50兆円の政府ファンドで米国債を購入 ■

世界各国が通貨安政策を取る中で、
日本が直接的な為替介入で円安誘導する事に世界は厳しい目を注ぎます。

そこで米国が考え出した、日本政府による米国債買い支えの新たな方法が「政府ファンド」。

ブルームバーグの記事は、「盗人猛々しい」を地で行く記事で、
日本政府が設立予定の「政府ファンド」の運用先を「米国債」と決めて掛かっています。
「外債=米国債」と決めつけています。

しかし実際に流動性や安全性を考えると米国債が主な運用先となるはずです。
後は、ユーロ圏のヤバヤバな国の国債を買い支えたり、
今後混乱が予想される韓国の国債なども購入するかも知れません。

■ 50兆円の原資はどこにあるの? ■

ところで50兆円とも100兆円とも言われる政府ファンドの原資は何処にあるのでしょう?

現在の日本の財政は、借金まみれの真っ赤かの赤字です。
どこを叩いても、50兆円など出てきません。

多分、方法は為替介入と同じでしょう。
政府短期証券で円を調達して、最後は国債で穴埋め。

結局、負担は日本国民に押し付けられます。

■ も少し様子を見る必要があるが、もしこれが事実なら米国債の需給はかなり危ない ■

現在報道されている「政府ファンド」が円安誘導の為のブラフなのか、
それともアメリカの一方的願望なのかが今一つ分かりません。

ただ、安倍政権発足から現在にかけて、
安倍政権のあからさまな円安誘導を、アメリカは非難していません。

これは、何か裏で見返りの密約があると見るのが妥当でしょう。
それが、「政府ファンド」による米国債購入なのではないでしょうか?

ところで、こんな強引な手段を使わなければ米国債の需給は安定しないのでしょうか?

現在、FRBが直接か買い入れている米国債ですが、
どうやら、これだけでは足りない様です。
中国の米国債保有が減少する中で、期待出来るのは日本人の財布だけです。

問題は米国債の需給関係が悪化する理由です。

A) シーリング問題で米国の格下げが発生し、米国債が売られる
B) 米景気の回復で、金利の低い米国債が売られる

Bは「出口」で発生する金利上昇を抑制する手段となりますが、
米経済の復活は、日本の輸出産業の利益拡大につながりますから悪い事ではありません。

しかし、住宅市場が若干回復しているとはいえ、
それはFRBが長期国債とMBSをガンガン買い上げて
住宅投資への銀行のリスクを丸抱えしている結果としては、いささか地味です。
アメリカの景気回復は、まだまだ先の話の様に思えます。

そうなると、残るのは格下げなどによる「悪い米国債の下落」となります。

■ ドルの終焉は、世界経済の崩壊だから仕方は無いのだけれど・・・ ■

米国国債は利払い費だけでも膨大です。
一方、リーマンショック以降、税収は落ち込んでいます。

日本の様に、国内の過剰貯蓄が存在しないアメリカでの
国債の安定消化は非常に困難です。

「ドルが一番安全」「米国債はドルに準じる安定資産」という「ドル神話」ですが、
どこまで、それが保たれるかが、微妙な状況になってきています。

FRBは露骨にドルのマネタイゼーションを行なっており、
をれを、景気回復まで無期限に継続すると宣言までしています。

ドルは誰が見ても「プリンティングマネー」であり、
市場がいつ「ドルはただの紙切れじゃないか!!」と言うか分かりません。
「王様は裸だ!!」と誰かが言った瞬間に、夢は醒めるのです。

そうならない為にもFRBの米国債の引き受け金額を少しでも少なくしたい。
そういうアメリカの厳しい現状が、「政府ファンド」報道の裏に透けて見えます・・。


もし「政府ファンド」で米国債を50兆円規模で購入する事が事実ならば、
安倍政権の支持者達は、これを国民にどう説明するのでしょう。

「円安誘導の為のアベノミクスの隠し玉」とでも言うのでしょうか?
野田政権を売国奴呼ばわりした国民ですが、
安倍政権が売国政権かどうかのリトマス試験紙は、
どうやら「政府ファンド」である様です。