■ 今そこにある危機とは何か? ■
「危機」とは具体的に何かとのご質問を頂きました。
限定的な意味においては「金融恐慌」の発生を意味しています。
1) リーマンショック前に世界のデリバティブ商品の決済残高は60000兆円
2) 現在は40000兆円程度に圧縮されていると言われている
3) こららの中で2000兆円程度が決済不能の不良債権化していると言われる
4) リーマンショック後、欧米の金融機関は時価会計を止めてしまったので
これらの損失は決済の時期が来るまでは、額面で計上されている
5) 決済が訪れる度に損失が発生し、それを補填する形で中央銀行が
資金を大量に市場に流している
ここまでが民間の危機です。
■ ソブリン危機(国債危機)の破壊力は大きい ■
6) リーマンショック後、各国は国債を発行して不良債権を買い取った
7) これは民間の借金を国に付け替えたのと同義である
8) 国家の財政赤字が大幅に増大し、ヨーロッパでは国債危機(ソブリン危機)が発生
9) ギリシャなど経済力の弱い国から国債危機が表面化している
日米欧ともに国債の過剰発行により、いつかは国債価格が暴落すると言われている。
国債の発行額は膨大で、ギリシャ一国でも世界に大きな影響を与えるので、
フランスや日本、アメリカの国債危機は即ち世界経済の崩壊を意味する。
■ CDSは金融核兵器のはずだったのだが・・・? ■
さらのCDSという保険証券が、事態を複雑化しています。
10) CDSは国債や社債とセットで購入する保険商品
11) 国債の破綻など想定外だったので、ギリシャ一国であってもCDSの決済が
発生すると、CDSを発効した大手金融機関が破綻する危険がある
12) ギリシャの国債のCDSを大量に発効したのはドイツとアメリカの金融機関
13) ギリシャにCDSの残高は一時100兆円を超えると言われたが、
現在の残高は正味で32億ドルと報道されている
14) CDSは簿外取引が多く、32億ドル意外にも発効されている可能性がある
15) CDSを組み込んだCDOが多数作られており、CDSの破綻は
CDOの破綻を連鎖的に生み出す可能性がある
16) CDSの取引を停止すると、債券のリスクを回避出来なくなるので、
債券市場(国債市場)に下落圧力が生じる
以上が、表面化している「金融崩壊」のきっかけになり得る事柄です。
これらの事は公然の事実ですが、日本の新聞やニュースは半ば無視を決め込んでいます。
■ 世界は成長の限界という袋小路を打破する為に崩壊を演出する? ■
さらに、「世界の社会システムの老化」、即ち「成長の限界」が
世界的危機の引き金になる可能性も否定出来ません。
第二次世界大戦までは、「成長の限界」は戦争によって打破されてきましたが、
現在では人道的見地と核戦争の恐怖から、「世界大戦」は回避されます。
一方で、「経済システムの崩壊」は、効率としては「戦争」に敵わないものの
破壊の後に、新しい枠組みによって成長が訪れる事が期待されます。
ですから、社会の発展の為に「金融危機」が発生させられる可能性も捨て切れません。
あくまでも「金融危機」ありきの視点で世界を見ると、
世界は崖っぷちに見えるのです。
但し、一歩踏み間違えば奈落の底という事を知らなければ、
案外ギリギリで渡り切る場合もあります。
「楽天派」は少しでも明るい兆しが無いかと夢中になり、
「悲観派」は少しでも崩壊の兆しが無いかと、夜も眠れない日々を過ごしています。
常識的に考えれば、世界は既に崩壊しか選択の余地が無いのですが、
人間は時に非合理的な決断をするので、
世界が崩壊するとも、崩壊しないとも、どちらも断言できないのです。