外は冷たい雨が降る。頬を打つ風は切るように冷たい。
・・・夏じゃないんだからさぁ、水遊びはやめようよ、かぁちゃ~ん!!
昨日の朝、かぁちゃん家の玄関を開けると異常な物音がした。本人は玄関に背を向けてベッドの柵を握り締めて突っ立っている。
一歩踏み入れて愕然とする。・・・あろう事か、床が水浸し。
台所の水道の栓が全開になり、シンクに当たって辺り一面に水が飛び散っている。
ありったけのタオル類で拭き取った。
その間、「うわぁ!」だの「ひええぇ!」だの「やめて~!」だの叫び倒していたと思うのだが、かぁちゃんは完全無視。
ぜいぜいはぁはぁ言いながら「どう~したんだ~?」と聞くと、大得意のフレーズで嬉しそうに「知らない。」と応えた。
「んな訳ないだろ~!」と叫びたいのをぐっと堪えて濡れた物を洗濯機へ入れる。
・・・こりゃ、三回はまわさないといかんなぁ。まいったなぁ、雨降りだよ。
「何でこんな事をするのかなぁ。」と顔を覗き込んだら、うふふと笑って、次の瞬間、お茶の入ったストロー付きのコップの中身を机の上にぶちまけた。
「わりゃぁ!」思わず振り上げた右手を苦笑と共に慌てて理性で押さえ込む。
しかし、この理性いつまで保っていられるやら最近不安になる事が多い。
良いように考えれば、多分かぁちゃんは私が騒ぐのが楽しかったのだ。
良いように考えれば、先日まで水道の蛇口をひねる事が出来なかったのだから運動機能が一つ復活したのだ。
良いように考えれば、自分の感情を(不満でも怒りでも)表現したかったのだ。
それは無表情より良い。本当にずっと良い。
私が無理やり笑わせようと躍起になるのは、無表情が怖いからだ。
かぁちゃんは表現の方法を忘れてしまったから出来る事で表現してるんだろう。
覚悟や心構えと言うのは、ある程度の予測が出来てこそできるという気がする。
現実に起こる事というのは、予測をはるかに越えるから呆然と立ち尽くすしか出来ない事の方が多い。まぁ、だから面白いって事もあるけれど。
医学的にはどうなのかは知らないが、かぁちゃんに関してはアルツハイマーによって消されて行く行動面の記憶は時に復活する。昨日まで出来た事が出来なくなる代わりに、もう長い間出来なかった事が再び出来るようになる事もある。
私はそれに付いていけるだけ臨機応変でなくてはならないのに、元々そういう事には不器用なので、ついうろたえてしまう。
ショートステイから帰って来てから、やはりまだ落ち着かない。
多分、かぁちゃんなりに気を使ったり緊張したりしてたんだろうなぁ。
・・・夜中、嬉々として眠らず。うろうろと歩き回る事しきり・・・。
頼む、かぁちゃん、もうこれ以上は無理だ。
第一、今回は床にビニールクロスを敷き詰めていたため水漏れ事故には至らなかったから良かったものの、こういう形で他人様に迷惑をかけてしまうとしたら、やはり真剣に入所施設を探すべきなのか・・・。
少々弱気は、体力の衰えかなぁ。ゴスペルの練習も音が遠くで聴こえたなぁ。
私がめげてちゃいけない。さぁ、明日は一緒に歌って過ごそう。
予測不能な明日でもきっと歌は歌える。希望はいっぱい持っててもいいじゃない。
・・・夏じゃないんだからさぁ、水遊びはやめようよ、かぁちゃ~ん!!
昨日の朝、かぁちゃん家の玄関を開けると異常な物音がした。本人は玄関に背を向けてベッドの柵を握り締めて突っ立っている。
一歩踏み入れて愕然とする。・・・あろう事か、床が水浸し。
台所の水道の栓が全開になり、シンクに当たって辺り一面に水が飛び散っている。
ありったけのタオル類で拭き取った。
その間、「うわぁ!」だの「ひええぇ!」だの「やめて~!」だの叫び倒していたと思うのだが、かぁちゃんは完全無視。
ぜいぜいはぁはぁ言いながら「どう~したんだ~?」と聞くと、大得意のフレーズで嬉しそうに「知らない。」と応えた。
「んな訳ないだろ~!」と叫びたいのをぐっと堪えて濡れた物を洗濯機へ入れる。
・・・こりゃ、三回はまわさないといかんなぁ。まいったなぁ、雨降りだよ。
「何でこんな事をするのかなぁ。」と顔を覗き込んだら、うふふと笑って、次の瞬間、お茶の入ったストロー付きのコップの中身を机の上にぶちまけた。
「わりゃぁ!」思わず振り上げた右手を苦笑と共に慌てて理性で押さえ込む。
しかし、この理性いつまで保っていられるやら最近不安になる事が多い。
良いように考えれば、多分かぁちゃんは私が騒ぐのが楽しかったのだ。
良いように考えれば、先日まで水道の蛇口をひねる事が出来なかったのだから運動機能が一つ復活したのだ。
良いように考えれば、自分の感情を(不満でも怒りでも)表現したかったのだ。
それは無表情より良い。本当にずっと良い。
私が無理やり笑わせようと躍起になるのは、無表情が怖いからだ。
かぁちゃんは表現の方法を忘れてしまったから出来る事で表現してるんだろう。
覚悟や心構えと言うのは、ある程度の予測が出来てこそできるという気がする。
現実に起こる事というのは、予測をはるかに越えるから呆然と立ち尽くすしか出来ない事の方が多い。まぁ、だから面白いって事もあるけれど。
医学的にはどうなのかは知らないが、かぁちゃんに関してはアルツハイマーによって消されて行く行動面の記憶は時に復活する。昨日まで出来た事が出来なくなる代わりに、もう長い間出来なかった事が再び出来るようになる事もある。
私はそれに付いていけるだけ臨機応変でなくてはならないのに、元々そういう事には不器用なので、ついうろたえてしまう。
ショートステイから帰って来てから、やはりまだ落ち着かない。
多分、かぁちゃんなりに気を使ったり緊張したりしてたんだろうなぁ。
・・・夜中、嬉々として眠らず。うろうろと歩き回る事しきり・・・。
頼む、かぁちゃん、もうこれ以上は無理だ。
第一、今回は床にビニールクロスを敷き詰めていたため水漏れ事故には至らなかったから良かったものの、こういう形で他人様に迷惑をかけてしまうとしたら、やはり真剣に入所施設を探すべきなのか・・・。
少々弱気は、体力の衰えかなぁ。ゴスペルの練習も音が遠くで聴こえたなぁ。
私がめげてちゃいけない。さぁ、明日は一緒に歌って過ごそう。
予測不能な明日でもきっと歌は歌える。希望はいっぱい持っててもいいじゃない。