※ オランダ ‐ アムステルダム/ライクスミュージアム編(11)‐ ベネルクス美術館絵画名作選(19)
老人の顔が描けてこそ一人前の画家、との信念を持っていたとされるレンブラント・ファン・レイン(1606-1669)にとって、母は格好のモデルだったとされている。
彼は幼い頃、母の膝で母の語る聖書物語を子守唄として育ったとされ、母を描いた場合の多くに宗教的意味合を持たせた、ともされている。
そんな篤信の母が、息子レンブラントにして描かせたのが「母の像」(1631年/60×48cm)。
エルサレムの神殿に、“ アシェル族のファヌエルの娘でアンナという女預言者がいた ” とルカの福音書(第2章)にある。
ルカ書は、“ 彼女は非常に年をとっていて、若いとき嫁いでから七年間夫と共に暮らしたが死に別れ、八十四歳になっていた。アンナは神殿を離れず、断食したり祈ったりして、夜も昼も神に仕えていた ” と続けている。
また、ヨセフとマリアが<キリストの神殿奉献>のため神殿に行ったとき、“(アンナが)近づいて来て神を賛美し、エルサレムの救いを待ち望んでいる人々皆に幼子のことを話した ” とも記している。
初期作品の傑作のひとつとされる本作は、その年老いたアンナを模した母の姿だとされている。
背後から聖書にあたる柔らかい光り、レンブラントの光と影に対する深い関心と試みは、成熟しかけたこのライデン時代最終期の作品に漸く実を結び始めたのである。
それは、ライデン最初期の作品「<トビトとアンナ>」(1626年)とを対比すれば理解できる。
ちなみに彼、後年、母の最期の絵姿ともされる「<母の像>」(1639年/ウィーン美術史美術館蔵)を描いているが、彼女はこの作品が描かれた翌年に没している。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1514
※ 小編は、2016-10 に投稿した記事をリライト、再投稿したものです。
使い込まれた聖書のページに置かれた手の皺は、信仰の歳月を語っているように見えます。
赤い衣はイエスさまのあがないに覆われた姿のようでもあり、
レンブラントの深い愛を感じます。
良い絵を見せていただいて、ありがとうございます。
何度も書いて手垢にまみれていますが、母というのは、何時まで経っても忘れられないものですね
むくつけき男(お)の子にしても、母は優しく甘酸っぱく、幾つになっても甘えたいと思う存在です