ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

続・ベックリン 「ヴァイオリンを弾く死神といる自画像」 「デポジション」

2017年09月11日 |  ∟ドイツの美術館

 ※ ドイツ ‐ ベルリン/アルテ・ナツィオナールガレリー編 (8) ‐ 中欧美術館絵画名作選 (90)

 この時季、午後になると雨になることが多いよう、前日に続いて小さいけれど冷たい雨が降り出した。

 この日、ベルリンが誇るふたつの美術館を回ったものだから、かなり疲れたふたり。
 エントランスを入ると二階へと続く長い階段、小さく掛け声を交わしながら昇る滑稽さ、カタリナ と顔を見合わせ苦笑い。

 そんな塩梅だから全館をゆっくり回るなんて端端(はな)から無理、目指す作品に絞って鑑賞せざるを得ないのが少し残念でもある。

 で、ベルリン最後の画家、作品はと言うと、前号に続きドイツ象徴派のアルノルト・ベックリン(1827-1901)。

 まず、彼が彼自身を描いた 「ヴァイオリンを弾く死神といる自画像」(1871-74年/75×61cm)から。

 骸骨、つまり死神がG線、4本の弦の左端に張られた一番太い弦。のみを張ったヴァイオリンを奏で、画家は絵筆を持つ手を止めてそれに耳を傾けている。

 本作が描かれた1871年、ドイツのヴァイオリニストのヴイルヘルミ(1845-1908)が、バッハ(1685-1750)が作曲した原曲を、G線だけでも弾けるように編曲したことで広く知られ親しまれる曲となったという 「G線上のアリア」、葬送や追悼に演奏されることが多いのだとか。

 もしも死神が奏でる音楽がその 「G線上のアリア」だとすれば、背後に忍び寄り嗤う骸骨も、懐疑的な眼差しで遠くを見つめる画家も、何やら滑稽に見えなくもない。

 そして、(王位の)廃位を意味する 「デポジション」(1871-74年/160×250cm)も架っていた。

 十字架からキリストを降ろすことそのものが主題の本作、通常を破る柄の入った着衣を纏い登場する人物たち。
 左手で大仰に天を仰ぐのはマグダラのマリア、真ん中でわが顔を両手で挟む女性は聖母マリアか?

 キリスト降架という聊か重いテーマも、彼にかかれば滑稽にも見えて面白い、と言えば不謹慎か。
 とまれ、文学、神話、聖書などを題材に、想像の世界をキャンバスに表そうとする象徴主義、その代表的画家のひとりベックリンの作風に触れた小雨の午後だった。

 これで、ドイツが誇る Intercity - Express でベルリンを離れ、ハンブルクからフランクフルトへと向かう。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1376


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