尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

夢をみない

2006年06月07日 22時49分43秒 | 詩の習作
夏の日
噴水の高鳴りに
鳩たちが驚いて
飛び立つことがあるだろう
彼らは上空を何度か旋回したあと
必ず戻ってくるものだ

透明なきらめきに
同じように
飛び立ちながら
決して戻ってこない
少年の日の
羽ばたきの群がある

ようやく
一羽だけが
大人になった
彼を見つけだし

夢を見なくなった
彼の
夢の窓を叩くのだ

彼の恋人は
彼の頬に涙の跡をみつけ
いぶかしがるだろう

夢をみない
ということが
哀しいわけではない
どんな場合も
夢をみたということが
哀しいのだ

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時間は青い

2006年06月07日 21時16分15秒 | 詩の習作

時間は青い
昨日は黒かった
今日は真っ白だ
明日は紅いだろう
瞬間は黄色いな
嘘は
ビルの影の
虹?
永遠は緑色の
小蛇!

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ゴジラ

2006年06月06日 10時40分39秒 | 詩の習作
木や森や夕日や
ガラスのキリンや
屑の山
ビルの間
テトラポット
から区別されて
どうして あなた が
現れるのだろう
ゴジラじゃないのに
あなた とどうして
解ったのだろう
むしろ
世界のすべては
あなたであって
あなたから
木や森や
ガラスのキリンや
ゴジラが現れた
コメント (2)
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栞(しおり)

2006年06月06日 10時15分14秒 | 詩の習作
夜をめくると昼だ
昼をめくると夜だ
一生はそんな本だ
僕はそんな栞だ
コメント (2)
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明日は雨

2006年06月05日 23時38分33秒 | 詩の習作
みんなと一緒に
もくもくと
弁当なんか食っているのに
いつまで僕は夢を見ているのだろう
と、思うことがある
すると決まって
明日は雨なんだ

それでも
鮭の一切れをもらったり
お茶をすすめたり

いつかは醒める…
なんて
みんなには悪いと思うので
黙っているけれど
窓の外を見ると
やっぱり明日は雨なんだ

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バッタの世界

2006年06月05日 17時19分42秒 | 詩の習作
ヤンマの目
バッタの目
アリンコの目
カマキリの目
昆虫の目
まぶたのない目
まつげのない目
みんな見ている
進化の果てに
凍った世界
反射の世界
終わった世界

人は歩きはじめた
悪い木だ
コメント (2)
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月の舟

2006年06月05日 01時09分25秒 | 少年詩集

 「月の舟」

月の夜には
暗い森の泉にも
宇宙の信号灯のように
月が揺れていましたから
深い天空に迷った
一人のお星様が
流れ星になって降りてきました

月の舟に
銀の星が乗ると
月はうれしくって
笑って
自分を揺りました
お星様も
はじめは一緒に笑っていたのですが
ちょっと怖くなって
言いました

 ふざけないで、
 沈んじゃうよ

月は優しく答えました

 僕たちは
 絶対沈まないんだ

水面の月は
天を指さしました
月は黙って
星を抱いていました

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キッチン

2006年06月04日 23時48分29秒 | 詩の習作
時間が
キッチンに
いる!

絞めている
刻んでいる
潰している
煮ている
焼いている
配っている
噛みついている
呑み込んでいる
ゲップした
歌っている

ありがとう
時間は
汚れたエプロンの
お母さんだ
ふり向いたら
どんな顔?

キッチンな顔

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人間の秘密

2006年06月04日 00時13分35秒 | 詩の習作
子供よ
人間の秘密を教えよう
じっと見てごらん
誰一人
幸せにはなろうと
してないだろう
君たち以外は
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目をこぼす

2006年06月03日 22時26分59秒 | 詩の習作
朝になったら
晴天の帽子をかぶり
きょろきょろ
しながら
はじめの一歩を
歩きだす赤ん坊
結末は
わかっている
わからないのが
空の明るさと
庇(にさし)を斜めに被った
不機嫌な人々の行列だ
線路と机ときんかくし
涙ではなく
両手に
目をこぼす

わかっているのは
未来だ
わからないのは
今だ
鼻も
耳も
歯もこぼす
死んだ
自分を
こぼしながら

ふと 信じる
おっさんと
兄ちゃんの間で
しょんべんが
出ている
つかの間を
虹のように
信じる

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青い帽子

2006年06月03日 20時52分19秒 | 短詩集
星の帽子は
みんな被っているけど
青い帽子を被っているのは
地球です

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北村太郎詩集

2006年06月03日 00時00分14秒 | 読書記録
詩人にはこの世ならざる世界からの視線が必要であるが、北村さんに限っては
あの世からの視線をいやおうなしに持ち続けた詩人だと言うことが出来る。

かどの喫茶店でコーヒーをすすったりメモをつけたい
ひとの心理をいぶかしく思ったり計算したり怒りを感じたりする
怒りは回転する独楽でおのれに目がくらみ
かすかに中心の意識はあるがまもなく倒れることを予期し
声を限りに叫ぼうとするがしかしかぼそく唸るだけで
最後にひと揺れふた揺れしてけっきょくぶざまのものすなわち形が残る
    (十六行と六十行 白露2より)

怒りの現象について述べているようで、
実は人生の全体を俯瞰しているのだと読める。
詩人の意識においては生活の様々な局面が、「まもなく倒れることを予測し」ながら運ばれてゆき、つまるとろ「けっきょくぶざまな形が残る」のだ。

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そこにあるもの

2006年06月01日 20時55分19秒 | 詩の習作
そこにあるもの
それ
わたしが捨てたもの
たとえば窓から夕日ばかり見てた
ガラスのキリン
ガラスの女の左腕とか
ガラスの足のとろい子

わたしも永遠に
こちらにはおれない
いずれ捨てられて
そちらへ行くので
みなさん
許してや

私は
これではない
それ
そこにある
そこの
それ
それである
それ
それでしかない
それ

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何というスクリーン

2006年06月01日 09時57分07秒 | 詩の習作
6月の日差し
信号は青
交差点のアスファルトは
新しいスクリーン

くっきりとした
人々の影が
重なりなりあい
すれ違ってゆく
まばゆい
チカチカする
絵模様

僕の心だけは
影のない
音のない
無人の正午
これは
フイルムを抜かれ
光源だけの

何という
スクリーン
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