おじたん。的ぶろぐ生活。

おじたん。である。語るんである。

スローライフ。

2004-12-08 22:09:56 | 我思う、故に書くなりよ。
鬱病に散歩が良い理由が判らないが、医者からも薦められたので、なるべく散歩するようにしている。
見渡す限り、自然と言うのか単なる雑木林と言うのか、米を作られなくなった田んぼやら、雑草だらけの畑が大部分を占めている所なので、毎回何か目標があるわけでも無く、散歩する。お供はウォークマンだったり、デジカメだったり、気分で変わる。が、途中の公園で一服するのが慣わしとなっているので、タバコとライターは欠かせない。最近ではハキキンカイロも忍ばせているが、天気が良いとこれはその限りではない。

で、まぁ今日もてくてくと歩き、自販機で缶コーヒーとタバコを買い、そばの公園で黄色く生い茂ったイチョウの大木を見上げながら一服していた。まっ黄色の葉が風にちらちらと流されるが、まだ、バサバサ落ちていく気配は無い。その合間から見える空は薄く白く青い。

ぼーーっと、上を眺めていたらふいに後ろから声を掛けられた。

人間、真上を眺める事に夢中になっていると、声を掛けられてもどっちを向きなおして良いか戸惑う事がある。後ろに倒れかけながら声の主を探すと…

「めちゃくちゃ美人だなぁ!」

言わんで良い事を素直に言ってのけるのも、私の悪い所かもしれない。が、ここ数年で見た事無いと思ったのだから致し方ない。

身長が私と変わらないのも驚いた。普通にアディダスのスニーカーを履いているので、うちの妹とは違い、誤魔化しは無い。洗いざらしの感じが強く出たジーンズからは、腰から下がめちゃくちゃ長い事が判る。

「お散歩ですか?」

眼鏡がとてもよく似合い、アビレックスのMA-1も良く似合うおねいさんに何と返していいのか判らず、「はい、お散歩です…」としか声が出なかった。

初冬の暖かい斜めの陽射しにまして、イチョウの黄色のかかったおねいさんは美しい! モデルが職業だとしても誰も疑わないだろう。陽射しが暖かいついでに、あれこれ聞いてみた。

そしたら、ホンモノのモデルさんだった。自然に囲まれて生活したいと、最近引っ越して来たそうだ。流行のスローライフって事なんだろうか。彼女が言うにはそういう事らしい。確かに、目に見える風景は、たまに厚木基地から飛び立つ戦闘機の爆音が現実を撒き散らす以外にはスローライフそのものかもしれない。

どうも、彼女は私が時たま散歩に歩いているのを知っていたらしい。いつも「重そうな格好で歩いている」と指摘されたが、事実だ。ジーンズの上はシャツ、その上に軍用のパーカを着て歩いている。色調こそ重々しいが、実は軽くて暖かく、汗で困る事も少ないからだ。タバコの吸殻を拾って帰るのも見られていたらしい。携帯灰皿も持ち歩いているが、一度地面で消してから帰る時に周りのもついでに拾って帰る「変な人」だと見ていたらしい。大した公園でもないが、汚して帰るのも気が引ける。

あれやこれや話をしている中で、リハビリついでに散歩をしている事、毎日では無く、気が向いたら歩いている事などを話すと、ひどく気遣われてしまった。正直に言えば、散歩すら面倒である。家でゴロゴロしながら、テレビでも見ていた方が疲れなくていい。それでも散歩に出掛ける理由は何故か、自分でも判っていない。気晴らしになっているかと言うと、そんな事も無いだろうと思う。そんな事で気晴らしになるなら、病気にもならなかったと思う。

気遣わせてしまったお礼とは言ってはなんだが、脅しておいた。

車が無いと生活は厳しいし、交通機関もバス以外に無い。最寄の鉄道からは23時過ぎて帰るにはタクシーしか方法が無い上に少ない。首都圏で生活するのとは違い、8時にはあっちを去らねば家に帰れない。2~3キロ以内にコンビには無い。公衆電話も無いに等しいし、人家も少ない。自然は豊富だが、連れ込まれたら無事では済まない。事実、拉致されてドラム缶で焼かれたなんて事件もある。おやじ狩りする原チャリのキチガイもいるし、露出狂もたまに出る。夜は闇に包まれ、街灯すら少ない。県内でも暴力団組織の幹部が比較的多く住む地域もあり、押しなべて治安は悪い。しかし、110番しても警察官は20分しないとやって来ない等など。昼間でも女性が1人で歩くのはオススメ出来ない所である。場所を伝えるにしても、地元に古くから住んでいない限り、正確にその場所を伝えるのすら困難だと思う。車道から外れたら、そこを伝える術は無い。字名でも知っていれば別だが、それすらも地図に載っている事も稀になった。

「思っているほど、スローライフでもないんですよ。」

彼女は驚いていた。湘南にほど近い事は間違いないが、陸の孤島に等しい。だから手の入らない雑木林が大半を占め、自動車会社のモータープールか、産廃の最終処分場くらいしか開発もされない。地勢的な問題もあって、下水も完備されてはいない。

「それでも、こうした公園は昔とあまり変わらないし、町並みも変わらないのも良いかもです。」

実際、私が泥だらけになって遊んだ子供の頃と変わらない。よそから移り住んだ人間から見ても、特殊な事情は無いように思える。住宅は増えているにも関わらず、過疎化は目に見えて明らかな不思議な現象が起きている。人が増えれば便利な方向に街は進むのが普通なのだが…。

「気を付けて散歩して下さいね。一人ではあまりオススメしません。出来ればお仲間と散歩した方がいいでしょう。冗談ではないですよ。本当ですから。」

彼女の美しい顔は引き攣っていた。あまり脅かしても可哀想だが、事実である。だが、ちょっとおまけしておいた。

「アライグマがいるんです。そう、ラスカル。狸もいますし、ちょっと新幹線よりのススキの中にはカヤネズミって可愛いのもいます。水生生物は全滅に近いですが、春には田んぼでおたまじゃくしも見られるし、そう言う点では悪くも無いかな。」

名残り惜しいが、彼女とは再会を偶然に任せて公園を去ることにした。あまり、彼女の事は聞けなかったが、若くてきれいな女性の1人暮らしには向いていない事は確かだし、嘘を並べたワケじゃない。春先にはスギ花粉の中に生活しているのと何ら変わり無いし、夏は蚊だらけ。それもこれも受け入れるならば、そのスローライフとやらをここで送るのも良いと思う。

果たして、こんなのをスローライフと言うのかどうか非常に怪しいのだが…。
でも、道端で産地直産の野菜が100円ぽっきりで買えるのもスローライフならではかもしれない。無人だし、野菜が高騰しているにも関わらずにね。

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