先日,現行の公職選挙法が外国に住んでいる日本人に選挙権がないのは憲法違反だとして訴えを起こした件について,最高裁判所は,そのような法律の規定がないことは参政権の侵害に当たるとして違憲判決を出しました。
(判決文はこちら)
ところで,このニュースの中で,「違憲判決は7件目」とか「立法不作為によるものは始めて」とか「今後国会で検討する」などの説明がありましたが,「もっと違憲判決ってあったような気がするなあ」とか「立法不作為って何」というかた,さらには「何で憲法違反って言われたのに国会で検討するんだろう」と感じた方もいるかと思います。
そこで,今回は,最高裁判所の違憲立法審査権について説明したいと思います。
1 そもそも違憲立法審査権って何
中学校の時に「三権分立」を習ったと思いますが,その中で「国会が法律を作り,内閣が法律を執行し,裁判所が法律をチェックする」と習ったかと思います。
この法律のチェックというのが,違憲立法審査権です。
また,法律以外にも内閣(行政権)の行為に対しても,憲法違反があるかどうかのチェックをします。
ただ,ここでおそらく中学時代(または今でも)誤解している人がいるのが,「国会が法律を作ったら,それを全部最高裁判所に送って,最高裁の裁判官がその法律を全部チェックして,これは合憲,これは違憲と判断している」と思っている点です。
ところが,裁判所はそんなことは全くやっていません。
この違憲立法審査権とは,法律をいちいちチェックするのではなく,裁判で「この法律おかしいよう。」と当事者が主張したときにはじめて裁判官が合憲違憲を考えるのです。
つまり,裁判所に訴えない限り,違憲立法審査権は行使されないことになります。ちなみに,この裁判や,違憲審査権は,最高裁以外の裁判所(地裁など)にもあります。
2 ではどういう訴えを起こすのか
じゃあ,どういう訴えを裁判所に起こせばいいのでしょうか。
普通,思いつくのは,「金返せ」などの裁判です。
では,違憲立法審査権を行使してもらうために,「この法律は憲法違反であることを確認する」という訴えを起こすことができるでしょうか。例えば,「自衛隊は憲法9条に違反するから,自衛隊法は憲法違反であることを確認する」という裁判を起こすことができるでしょうか。
答えは「NO」です。日本の裁判所は,かならず事件(もめごと)がなければ裁判を起こせないのです。
したがって,違憲立法審査権も,その具体的なもめ事を解決する際に適用される法律が憲法に違反しているかどうかを判断することになるのです。
例えば,「金返せ」の裁判の場合,「金を借りたら返さなければならないと規定している民法は財産権の侵害だ。だから憲法違反の法律だ。よって金は返さなくていい。」と被告が主張した場合,裁判官が「確かに返せという法律がおかしい」と思えば,「民法は憲法違反だよ。だから金返さなくていいよ。」という判決になります(あくまでも例ですよ,例。)。
3 違憲立法審査権の範囲は
大きく分けると2種類になります。一つは「法令違憲」ともう一つは「適用違憲」といいます。
法令違憲とは,「法律の規定自体が憲法に違反している」ことをいいます。これについては,後述しますが,今回の判決を含めて戦後7件出ています。
適用違憲とは,法律は憲法に反していないが,その問題についてその法律の適用の仕方が憲法違反だというものです。実例として,公務の中立公平を図るため公務員の政治活動を法律によって禁止していますが,ある公務員が勤務時間外に選挙ポスターを貼ったとして捕まった事案において,政治活動を禁止する法律自体は憲法違反とはいえないけど,この事例にまで当てはめるのはやり過ぎ,というものがあります(ちょっと実例が分かり難いと思いますが,適当な例が思いつかなかったので,こんな書き方にしました。)。
一般に,違憲判決というと「法令違憲」を指す場合が多いですが,「適用違憲」という場合も多いです。例えば,最近の例では,住基ネットが違憲だという判決が金沢地裁ででましたが,ここでは住基ネットを定めた法律自体が違憲といったのではなく,いやがる住民にまで適用することが違憲であると言っています。
長くなりましたので,次回に続きます。
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ところで,このニュースの中で,「違憲判決は7件目」とか「立法不作為によるものは始めて」とか「今後国会で検討する」などの説明がありましたが,「もっと違憲判決ってあったような気がするなあ」とか「立法不作為って何」というかた,さらには「何で憲法違反って言われたのに国会で検討するんだろう」と感じた方もいるかと思います。
そこで,今回は,最高裁判所の違憲立法審査権について説明したいと思います。
1 そもそも違憲立法審査権って何
中学校の時に「三権分立」を習ったと思いますが,その中で「国会が法律を作り,内閣が法律を執行し,裁判所が法律をチェックする」と習ったかと思います。
この法律のチェックというのが,違憲立法審査権です。
また,法律以外にも内閣(行政権)の行為に対しても,憲法違反があるかどうかのチェックをします。
ただ,ここでおそらく中学時代(または今でも)誤解している人がいるのが,「国会が法律を作ったら,それを全部最高裁判所に送って,最高裁の裁判官がその法律を全部チェックして,これは合憲,これは違憲と判断している」と思っている点です。
ところが,裁判所はそんなことは全くやっていません。
この違憲立法審査権とは,法律をいちいちチェックするのではなく,裁判で「この法律おかしいよう。」と当事者が主張したときにはじめて裁判官が合憲違憲を考えるのです。
つまり,裁判所に訴えない限り,違憲立法審査権は行使されないことになります。ちなみに,この裁判や,違憲審査権は,最高裁以外の裁判所(地裁など)にもあります。
2 ではどういう訴えを起こすのか
じゃあ,どういう訴えを裁判所に起こせばいいのでしょうか。
普通,思いつくのは,「金返せ」などの裁判です。
では,違憲立法審査権を行使してもらうために,「この法律は憲法違反であることを確認する」という訴えを起こすことができるでしょうか。例えば,「自衛隊は憲法9条に違反するから,自衛隊法は憲法違反であることを確認する」という裁判を起こすことができるでしょうか。
答えは「NO」です。日本の裁判所は,かならず事件(もめごと)がなければ裁判を起こせないのです。
したがって,違憲立法審査権も,その具体的なもめ事を解決する際に適用される法律が憲法に違反しているかどうかを判断することになるのです。
例えば,「金返せ」の裁判の場合,「金を借りたら返さなければならないと規定している民法は財産権の侵害だ。だから憲法違反の法律だ。よって金は返さなくていい。」と被告が主張した場合,裁判官が「確かに返せという法律がおかしい」と思えば,「民法は憲法違反だよ。だから金返さなくていいよ。」という判決になります(あくまでも例ですよ,例。)。
3 違憲立法審査権の範囲は
大きく分けると2種類になります。一つは「法令違憲」ともう一つは「適用違憲」といいます。
法令違憲とは,「法律の規定自体が憲法に違反している」ことをいいます。これについては,後述しますが,今回の判決を含めて戦後7件出ています。
適用違憲とは,法律は憲法に反していないが,その問題についてその法律の適用の仕方が憲法違反だというものです。実例として,公務の中立公平を図るため公務員の政治活動を法律によって禁止していますが,ある公務員が勤務時間外に選挙ポスターを貼ったとして捕まった事案において,政治活動を禁止する法律自体は憲法違反とはいえないけど,この事例にまで当てはめるのはやり過ぎ,というものがあります(ちょっと実例が分かり難いと思いますが,適当な例が思いつかなかったので,こんな書き方にしました。)。
一般に,違憲判決というと「法令違憲」を指す場合が多いですが,「適用違憲」という場合も多いです。例えば,最近の例では,住基ネットが違憲だという判決が金沢地裁ででましたが,ここでは住基ネットを定めた法律自体が違憲といったのではなく,いやがる住民にまで適用することが違憲であると言っています。
長くなりましたので,次回に続きます。
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