あれは,あれで良いのかなPART2

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正解は,越後製菓!サトウの切り餅に特許侵害認めた

2012年03月26日 00時07分38秒 | 裁判・犯罪
サトウの切り餅で販売したもちの切り込み方法が越後製菓の切り込み方法と類似しているとして,特許権侵害を理由とした製造差し止め及び損害賠償等の訴訟について,知財高裁は,一審の判決を破棄し,越後製菓側の主張を認めて総額8億円近くの損害賠償請求及び製造機器の廃棄を命じる判決がくだされました。
サトウの切り餅側は,上告をしたため,舞台は最高裁に移ることになります。

「サトウの切り餅」製造差し止め=越後製菓が勝訴、賠償8億円―知財高裁(時事通信) - goo ニュース

特許技術は実に微妙

この訴訟,実は中間判決ということで,特許技術的範囲に属するか否かといういわゆる特許侵害の有無については,去年9月にでており,その段階で,第一審では範囲外という判断をひっくり返し,「切り込み方法も特許技術的範囲内に属する」として,特許権侵害に当たるとしています。
したがって,今回の判決は,それを前提として最終的に損害額を算出したということになるのです。

中間判決で今回の切り込み方法が特許技術的範囲内に属したと判断したのかという理由は非常に高度かつ複雑なのですが,ものすごく簡単に言ってしまうと,「横スジにより,もちがきれいに焼けるという点は,両社共通であり,かつそれは切り餅にとって極めて重要かつ高度な発明内容であった。そこが類似しているとなると,特許技術的範囲内であるといえる。」ということになります。
つまり,単なる切り込みであっても,それで餅がきれいにおいしそうに焼けることで,産業発展に大きく寄与するものになることから,特許として認められるものだ,ということなのです。

そして,日本の特許法は,諸外国同様「先願主義」を採用しているため,先に特許申請をした者が勝ちます。今回,越後製菓が本件について特許申請をしているため,特許権者としての権利を有することになります。
ところが,実はここにも今回は争いがあり,これまた非常に複雑な経緯があるのですが,越後製菓の特許はすんなり認められず,最終的に不服審査においてようやく認められたものでした。その間に補正や意見書を提出するという場面があったのですが,その説明の中で「横に切れ込みがあれば十分で,上下に切り込みがあってもなくてもこの焼き上がりには影響しない。」と説明していました。今回の判決では,この事実を認め,「とにかく横勝負!」っていう特許を先に越後製菓に認めたんだよ,っていう判断を下したことになるのです。

もちろん,他にも特許要件をきちんと認定していますが,サトウの切り餅側は,当然のことながら,特許要件も含め,上記の争点についてすべて争ってきたわけですが,第一審とは異なり,ほとんど越後製菓の主張通りとなったわけです。

この訴訟,最高裁に行きますが,最高裁では事実調べは行いませんから,このままではおそらくサトウの切り餅が負けます。
しかし,サトウの切り餅側の最大の言い分が残っており,それは,「知財高裁が,中間判決後に申請した証拠調べをすべて却下したのは不適法だ」ということです。
裁判所は,中間判決をした以上,特許技術に関する証拠調べをする必要はないということから「時機に遅れた攻撃防御方法の却下」をしたものと思われますが,この成否について最高裁では一定の審査を行うことになるでしょう。仮に,「いやあ,時機に遅れたとは言えないし,そのうえで証拠調べしないと,事実が異なるぞ」ということになったとしたら,破棄差し戻しになる可能性もあります。あとは重大な事実誤認ですが,その可能性は低いでしょう。
いずれにせよ,この訴訟,餅の話だけに,まだまだ伸びそうですね

なお,一つ誤解のないように補足します。
特許権侵害関係の訴訟となると,イメージとして,特許を侵害している被告が「人の権利を勝手にぱくったけしからんやつ」と思ってしまう人も多いかと思いますが,必ずしもそうしたこととは限りません。むしろ,訴訟になるケースは,「うちも独自に開発したんだ」という事例の方がほとんどです
先ほど書いたとおり,特許申請は先願主義を採用しているため,先に言ったもの勝ちなのですが,多くの企業は,ほぼ同じ時期に開発を行っているため,それが先に出るかどうかは紙一重なんです。しかも,開発思想が微妙に違うことから,結果が似ていたとしても,「うちはコンセプトが違うから特許侵害にならない」と胸を張って言えるっていう感じになっているのです
だから,「先後の問題」はあまり争いにならず,「違う特許だ!」という技術的範囲の問題が非常に大きな争いになるのです。しかも,被告には「ぱくった」という意識は0なのです。
決して,中国の知的財産のようなあこぎな手法を訴訟で避難しているわけではないのです。この点だけは,ぜひとも誤解のないようにお願いします。

特許権は奥が深いです。

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