あれは,あれで良いのかなPART2

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市長にはむかうとクビ?

2009年10月24日 22時15分21秒 | 裁判・犯罪
何かと話題の多い阿久根市長が張り出した職員の総人件費を破った職員を懲戒免職としたことについて,その職員から懲戒免職無効の地位確認等訴訟があり,その前提の地位保全決定について,鹿児島地裁は職員の主張を認め,懲戒免職は無効で職員としての地位保全の決定(懲戒免職の効力停止)をくだしました。
この職員の身分については,今後,本裁判(行政訴訟)を通じて判断されることとなります。

阿久根市長の張り紙はいだ職員、懲戒免は効力停止(読売新聞) - goo ニュース

ポイントは「やったことと処分の大きさが比例しているか」

この決定はあくまでも仮の決定に過ぎませんので,正式決定ではありません。しかしながら,一定の判断基準ははっきりと示されたものと思われます。
すなわち,職員は「懲戒免職は一番重い処分なので,掲示を破っただけで懲戒免職は処分が重すぎ,裁量権の逸脱」を主張しました。一方,市長は,「市長の指揮監督権の範疇」と主張しました。
これを受けて,裁判所は,「市のこれまでの懲戒免職基準は犯罪行為や長期欠勤など結構重たいものに対してであり,張り紙を破る程度では,この基準からすると逸脱していて不適法の可能性が高い。」などとして,懲戒免職の効力を停止させました。

今回,裁判所は,「比例原則」をベースに判断したと思われます。比例原則とは,簡単にいえば,「やったことの悪さの重さに比例して処分の軽重も決めるべき」というものです。一番分かりやすい例は「刑法」で,犯罪の内容に応じて死刑から罰金まで様々になっています。ガム1個盗んで死刑はあり得ないのは,まさに刑法が比例原則で法制化されているからです。
今回のケースは,比例原則から言うと,懲戒免職になるのは犯罪行為(しかも信用を失墜させるような横領や背任,収賄など)や,長期欠勤など仕事やる気0の場合であり,それより軽い行為であれば,懲戒免職では重すぎるため,それより軽い処分に比例するということになります。そして,張り紙を剥がす行為は,市長に対する背信行為であるため,処分対象になり得ますが,著しく信用を失墜させるような犯罪行為とはいえないであろうということで,懲戒免職処分に比例しないということになります。おそらく裁判所もそのような発想で決定を下したのでしょう。
ちなみに,最近よくでている「公務員が酒気帯び運転したら懲戒免職」という事例で,実際に懲戒免職された職員からの地位確認等の訴えが相次いで認められる判決がでているのも,この比例原則をベースにしていると思われます。

ただし,比例原則に関しては,「行為と処分が比例しているかどうかの明確な基準がない」ということに問題があります。また,そもそも論として,「比例原則以前に,民間企業でも,社長の方針に従わない社員はクビになるから,公務員だって市長の方針に従わないなら当然クビだろう」などという意見も聞かれます。
したがって,本裁判では,おそらくこの辺りの問題,すなわち「比例原則で考えるのであれば,基準の明確性」が争点となり,また「比例原則の話ではなく,市長の方針に従わなければ即時クビということでよいのか。」という点も争点となりうるでしょう。

私見としては,そもそも「社長に逆らったらクビ」という発想自体も実はおかしな話ですから(そしたら,経営方針の議論なんか恐くてできません。),やはり「比例原則をベースに考えるべき」でしょう。その上で,懲戒処分の各処分の実績を主張させ,その中から一定の基準を導かせることで,懲戒免職となりうる基準を作り,この事例をその基準に当てはめていけば自ずと判決になると思います。そして,やはり,張り紙を剥がす程度では,少なくとも懲戒免職にはなり得ないでしょう。

さてさて,阿久根市長,裁判ではどのような主張を展開するでしょうか。また,どのような判決を下すでしょうか。注目です。

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