あれは,あれで良いのかなPART2

世の中の様々なニュースをばっさり斬ってみます。
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銀河鉄道999パクリ訴訟,なんだかぱくってないよーな気がするー

2008年12月28日 12時53分34秒 | 裁判・犯罪
松本零士さんが,槇原敬之さんの曲中に銀河鉄道999の台詞を無断で引用されたとの発言に対し,著作権を侵害していないことの確認と,その発言で槇原さんの名誉が傷つけられたとして松本さんに対する損害賠償の訴訟の判決が東京地裁であり,東京地裁は,槇原さんに対する名誉毀損を認め,松本さんに対して,損害賠償を支払う旨の判決を言い渡しました。
ただし,著作権侵害に対する判断については棄却され,判断はされませんでした。

槇原さんの歌詞、「盗作でない」=松本零士さんに賠償命令・東京地裁(時事通信) - goo ニュース

無難な着地点かも

この事件,発端やその当時の私見については,「夢は時間を裏切らない,人はファンを裏切らないか」をご覧下さい。ただ,その頃と事情がちょっと変わっている感じもします。
ところで,この訴訟,実はちょっと複雑になっているので,争点がぼけやすくなっています。
そこで,新聞報道しかソースがありませんので,一部推測を含めて,この訴訟で何が言いたくて,何が判断されたのかをまとめたいと思います(あくまでも新聞報道ベースですから,違いがあるかもしれません。)。

1 槇原氏の請求の趣旨
(1) 自分の曲が松本氏の漫画の台詞を引用していないこと(著作権侵害はしていないこと)の確認
(2) 仮にそれが認められなかった場合は,松本氏がテレビで「槇原さんが自分の作品をぱくった」という発言で,自分の名誉が侵害されたので,損害賠償2200万円の請求

2 裁判所の判断(判決)
(1)の主位的請求は確認の利益がないとして棄却(却下か?)
(2)の予備的請求については,「確かに槇原さんがぱくったとまでは断言できないので,松本さん,言い過ぎだったかも」ということを認め,請求金額の10分の1の220万円の損害を認定

3 この訴訟で明らかになったことや今後起こりうることなど

(1) 槇原さんは,銀河鉄道999の台詞をぱくっていない可能性が高いこと(断言はしていない)
(2) 少なくとも,槇原さんは,松本さんの発言で社会的信用(名誉)を毀損したという事実があったこと。
(3) 松本さんは,損害賠償請求権を放棄したので,少なくとも今後この件(著作権侵害)について,松本さんから槇原さんサイドに損害賠償請求や著作料支払い請求は起こらないこと。
(4) ただし,仮に槇原さんが,本件訴訟について松本さんの名誉を汚すような発言をすれば,たとえそれが事実であっても,名誉毀損を原因とする損害賠償の請求は理論上ありうる。
(5) もちろん,控訴され,高裁でひっくり返る可能性もあるため,現時点では,(1)と(2)についてはまだまだ流動的であること。

以上になります。つまり,今回の裁判は,メイン論点が「著作権侵害」というよりも,「名誉毀損」になっているのです。そして,名誉毀損については,基本的には「事実を告げても名誉毀損になる」となっているため,著作権侵害の有無はそんなに大きな問題ではなかった,ただ金額算定の際に大きな材料になっていた,という形になっているのです。
したがって,極論ですが,仮に槇原さんが完璧にぱくっていて,本人がそれをしっかりと認識していたとしても,それに対して,松本さんがメディアを使って広く「あいつは俺の作品をぱくりやがった。けしからん。」と発言した場合であっても,槇原さんが「名誉毀損だ」と訴えれば,損害賠償が認められる可能性もあるのです(もちろん,金額は大幅に減少するでしょうが。)。
一方,著作権確認請求は認められませんでした。これは,訴訟法の基本で,「確認するより何か払ったりもらったりしたことで解決ができる」と判断される場合は,「金払え,物返せ」の請求を優先するというものがありますので,おそらくそれにしたがったまでのことだと思います。特に,松本氏が著作権侵害に対する損害賠償請求権を放棄したということなので(ただし,どこでどういう形で放棄したのかはよく分かりませんが),はや著作権侵害自体に「お金がぶら下がっていない」状態になるため,「確認の必要なし。あとは名誉毀損勝負」と裁判所が判断したものと推測されます。
それゆえ,今回著作権については,明確な判断まではしなかったということになるのです。
仮に,松本さんが「著作料払えよ」と主張していたとすれば,「金がぶら下がった」状態になるので,侵害の有無の確認をした可能性は高くなるでしょう。

いずれにせよ,松本さんの反応が不明なので,今の時点ではこの訴訟がどうなるのかまだ分かりません。ただ,この裁判所の判断は,「着地点としては妥当」だと思います。グレーゾーンはあえてそのままにして,あくまでも,「名誉一本勝負」としつつ,その過程で「なんだか著作権侵害してない気がするー」と吟じているため,に高裁にいったとしても,「話し合いの道」がしっかり残されているからです。その上,金額もまあ妥当なラインでしょう。松本さんにとっては,余裕で払える金額ですし,槇原さんもほとんど訴訟費用でなくなるので,「もらったぞ」っていう気分にはならないでしょうから。

さて,今後どう動くでしょうか。注目です。

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コメント (4)
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