トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

輪舞曲

2021-10-10 16:44:34 | 
朝井まかてさんの「輪舞曲ロンド」を読みました。大正期に新劇女優として活躍した伊澤蘭奢(本名三浦しげ)の生涯をたどる物語です。三浦しげは、島根県の津和野町の紙問屋に生まれた。日本女学校を卒業後、漢方胃腸薬「一等丸」で有名な津和野の老舗の薬屋「伊藤博石堂」に嫁いだ。20歳の時、息子、佐喜雄を出産する。姑に子供を預け、夫、治輔と事業を起こすべく上京したが失敗し、大正4年に津和野に帰る。しかし、婚家での暮らしは合わず、離婚を覚悟で、女優になるべく一人で上京した。松井須磨子の舞台「人形の家」を見た感動が忘れられなかった彼女は、上京後、新劇女優になり、紆余曲折を経て、亡くなる38歳まで10年間ほど舞台女優として活躍した。代表作は「マダムX」。朝井まかてさんの「輪舞曲」は、伊澤蘭奢の死後に見つかった大量の遺稿を編纂し、遺稿集を出そうとパトロンで愛人だった内藤民治が、昔から恋愛関係にあった徳川夢声、東京帝大の学生で、伊澤蘭奢に憧れていた福田清人、一人息子の伊藤佐喜雄を午餐に呼ぶところから始まる。実際に彼女の遺稿集は、「素裸の自画像」として、昭和4年に世界社から刊行され、1999年3月に伝記叢書319「素裸な自画像ー伊澤蘭奢」として復刊されたそうです。「短くも美しく燃え」という感じのドラマチックな伊澤蘭奢の生涯が徐々に明らかにされていきます。なお、息子の伊藤佐喜雄はのちに作家となり第二回芥川賞に小説「面影」「花の宴」がノミネートされ、戦後も作家として活躍したそうです。しかも、伊藤博石堂は伊澤蘭奢の夫、治輔が第六代「伊藤利兵衛」を継承し、現在は第九代が津和野で営業しているそうです。すごいですね~。お店も健在で良かったですね。お薦めです。
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