平和への道

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5:1(ヨハネの福音書注解)イエスの南北の移動は「旧約の時代」の南王国と北王国の間の移動

2017-11-24 11:04:43 | ヨハネの福音書注解
ヨハネ5:1 イエスの南北の移動は「旧約の時代」の南王国と北王国の間の移動

1 その後、ユダヤ人の祭りがあって、イエスはエルサレムに上られた。(ヨハネ5:1)

 5章の冒頭でイエスは北のサマリヤから南のエルサレムに移動する。ヨハネの福音書のイエスは、南(3章)→北(4章)→南(5章)→北(6章)→南(7章)というように南北間の移動を繰り返している。聖書学者の中にはこの南北の動きを不自然として、写本が伝わる過程で誤ってページが入れ替わってしまったのではないかと考える者たちもいる。
 人間イエスだけを見れば、確かにこのように南北間の移動を繰り返すことは不自然かもしれない。しかし、この南北間の移動は「旧約の時代」に南王国と北王国が並存していた時代があったことを示すものだ。旧約聖書の列王記も南王国と北王国のことを併記している。イエスが7章からは専ら南にいるのは、6章の最後に北王国が滅亡してしまったからだ。6章終盤の次の記述は北王国の滅亡を示すものだ。

こういうわけで、弟子たちのうちの多くの者が離れ去って行き、もはやイエスとともに歩かなかった。(ヨハネ6:66)

 北王国を滅ぼしたのはアッシリヤ帝国だ。そして北王国イスラエルの民はアッシリヤに捕囚として引かれて行った。このことを列王記第二は次のように記している。

アッシリヤの王はイスラエル人をアッシリヤに捕らえ移し、彼らをハラフと、ハボル、すなわちゴザンの川のほとり、メディヤの町々に連れて行った。(Ⅱ列王18:11)

 アッシリヤに引かれて行った北王国の民は二度と故郷のイスラエルに戻ることはなかった。ヨハネ6:66の「多くの者が離れ去って行き、もはやイエスとともに歩かなかった」とは、この状況を描いたものだ。
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