知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報の開示を認めた事例

2011-12-07 22:56:54 | Weblog
事件番号 平成23(ワ)22642
事件名 発信者情報開示請求事件
裁判年月日 平成23年11月29日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 阿部正幸

第3 当裁判所の判断
1 被告の利用者による原告らの送信可能化権の侵害の有無について
 ・・・
イ 「P2P FINDER」について
 「P2P FINDER」とは,・・・インターネット上の著作権侵害検出システムであり,・・・各種P2Pネットワークに接続し,同ネットワークにおいて流通するファイル(ダウンロードされたファイル)及びダウンロード時の情報(送信元となったノードのIPアドレス,ポート番号,ファイルハッシュ値,ダウンロード完了時刻等)を収集,分析等するものである。
 ・・・

ウ クロスワープ社による調査
 クロスワープ社は,原告らから依頼を受け,「P2P FINDER」を使用して,キーワード名を,原告各レコードの実演家である「RADWIMPS」,「西野カナ」,「aiko」,「perfume」,「いきものがかり」,「コブクロ」,「ヒルクライム」及び「浜崎あゆみ」として検索した。
 その結果,前記第2の3[原告らの主張](1)アないしト記載のIPアドレスから本件ファイル1ないし20(以下「本件各ファイル」という。)が送信され,同項記載の時刻に本件各ファイルのダウンロードが完了したことが確認された(以下「本件調査結果」という。)

エ 本件調査結果の信用性
 ・・・
(3) 本件確認試験の結果等によれば,「P2P FINDER」による検索結果,すなわち本件調査結果については,その信用性を疑わせるような事情は見当たらず,信頼を置くことができるものと認められる。
 したがって,本件調査結果に基づき,前記第2の3[原告らの主張](1)アないしトの事実,すなわち,
○1 本件各利用者は,原告各レコードを複製し,この複製に係るファイル(本件各ファイル)をコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置した上,当該コンピュータを,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続したこと,
○2 そして,本件各利用者は,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件各ファイルを,インターネットに接続している,本件各利用者からみて不特定の他の同ソフトウェア利用者(公衆)からの求めに応じて,インターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態にしたこと(すなわち,原告らの原告各レコードに係る送信可能化権を侵害したこと),が認められる。

2 発信者情報開示請求の要件について
(1) 被告が本件各利用者による原告各レコードの送信可能化権侵害との関係においてプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当することについては,当事者間に争いがない。
(2) また,前記第2の1(争いのない事実等)の(2)(原告らの送信可能化権)及び上記1で認定した事実によれば,本件各利用者は,被告のインターネット接続サービスを利用して,被告からIPアドレスの割当を受けてインターネットに接続し,Gnutella互換ソフトウェアにより,本件各ファイルを公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にしたことによって,原告らが原告各レコードについて有する送信可能化権を侵害したことが,明らかであると認められる。
(3) さらに,証拠(甲1の1~8,甲1の12・13,甲1の17~26)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,原告ら各自が原告各レコードについて有する送信可能化権に基づき,本件各利用者に対して損害賠償請求及び差止請求を行う必要があるところ,本件各利用者の氏名・住所等は原告らに不明であるため,上記請求を行うことが実際上できない状態にあることが認められる。
(4) したがって,原告らには,被告から本件各利用者に係る発信者情報(氏名,住所及び電子メールアドレス)の開示を受けるべき正当な理由がある

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