知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

通知されていない予備的な拒絶理由

2009-05-06 10:38:26 | Weblog
事件番号 平成20(行ケ)10206
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年04月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

2 取消事由3(拒絶理由通知を欠いた手続違背)について
拒絶理由通知を欠いた手続違背の有無(取消事由3)について判断する。
(1) 特許法29条2項の拒絶理由通知を欠いた手続違背について
原告は,本件拒絶査定における拒絶理由は,実質的には,引用刊行物Aのみを根拠とした特許法29条1項3号に該当するとするものであるのに対して,審決は,引用刊行物Aと各引用例を組み合わせることが容易想到であり,特許法29条2項に該当するとしたものであるから,審判手続において,拒絶理由通知を欠いた手続違背があると主張する。
しかし,原告の上記主張は,次のとおり誤りである。

ア 審決の要旨は,①主位的に,本願発明は,引用刊行物Aに記載された発明であることを理由に,特許法29条1項3号に該当すると判断し,②予備的に,本願発明は,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断したものである。
そして,前記検討したとおり,本願発明が特許法29条1項3号に該当するとした審決の主位的な判断に誤りはないのであるから,本件審判手続において,原告の主張する内容の拒絶理由通知を発しなかったとしても,審決に違法を来す取消事由はないというべきである。したがって,原告の主張は,この点において採用できない。

イ のみならず,審査及び審判の手続過程をみても,審判手続において,原告主張に係る拒絶理由を発しなかったとの違法はない。
(ア) 本件拒絶査定(甲5)には,「・・・」との記載があり,本件出願は平成16年10月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由2及び3によって拒絶されたことが認められる。

(イ) 拒絶理由通知書(甲2)には,次の記載がある。
 ・・・

(ウ) 以上の本件拒絶査定及び拒絶理由通知書の記載によれば,特許庁は,原告に対し,本願発明(請求項1に係る発明)が特許法29条1項3号に該当する発明であるとの拒絶理由(理由2)のみならず,同法29条2項の規定による拒絶理由(理由3)をも通知していると認められるから,同法29条2項の規定による拒絶理由に基づく本件拒絶査定についてした審決に,手続的な誤りがあるとはいえない。

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