知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

局面に応じた特許請求の範囲の解釈手法の違い

2007-09-26 06:44:23 | Weblog
事件番号 平成18(行ケ)10561
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年09月13日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長 裁判官中野哲弘


『(2) 次に原告は,特許法70条2項によれば,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意味を解釈すべきであるとして,本願補正発明の明細書(甲4,7,8)及び図面に記載された実施例によれば,請求項1の「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し」との文言は,送信装置がデータを送信する際にカテゴリ別の指示情報をデータに付していることを指すものと解釈できる旨主張する
しかし,本件審決取消訴訟のように,<ins>特許の要件を審理する前提としてされる特許出願に係る発明の要旨の認定においては,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべき</ins>であり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなど,特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないと解するのが相当である(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)。

 特許法70条2項(本願に適用される平成14年法律第24号による改正前のもの。以下同じ。)は「前項の場合においては,願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定しているが,同項は,特許権侵害訴訟等の場合のように,私権である特許権の保護範囲を決定するに当たって適用されるものであって,本件のような審決取消訴訟においては,上記特段の事情がない場合でも明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されると解することはできない。

そして,上記(1)に述べたとおり,「データの各記憶された項目がデータのカテゴリにしたがって指示を有し」との文言は,データにカテゴリを付すのが送信部であるか受信部であるかにつき,何ら特定するものでないことは明らかであって,その用語の意義が一義的に明確でないとはいえないのであるから,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すべき場合であるということはできない。したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。』

最新の画像もっと見る