知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

超過利益の算定方法

2010-02-07 14:53:55 | Weblog
事件番号 平成20(ワ)14681
事件名 補償金請求事件
裁判年月日 平成22年01月29日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

第3 当裁判所の判断
1 旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」について旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」については,特許を受ける権利が,将来特許を受けることができるか否かも不確実な権利であり,その発明により使用者等が将来得ることのできる独占的実施による利益をその承継時に算定することが極めて困難であることからすると,当該発明の独占的実施による利益を得た後の時点において,その独占的実施による利益の実績をみて法的独占権に由来する利益の額を事後的に認定することも,同条項の文言解釈として許容されると解される。

 また,使用者等は,職務発明について特許を受ける権利又は特許権を承継することがなくても当該発明について同条1項が規定する通常実施権を有することにかんがみれば,同条4項にいう「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,自己実施の場合には,単に使用者が有する通常実施権(法定通常実施権)に基づいて得るべき利益をいうものではなく,これを超えて,使用者が従業員等から特許を受ける権利を承継し,その結果特許を受けて発明の実施を排他的に独占し又は独占し得ることによって得られる独占の利益と解すべきである。
 そして,ここでいう「独占の利益」とは,自己実施の場合には,他者に当該特許発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が上げた利益,すなわち,他者に対する禁止権の効果として,他者に許諾していた場合に予想される売上高と比較してこれを上回る売上高(以下,この差額を「超過売上高」という。)を得たことに基づく利益(以下「超過利益」という。)が,これに該当するものである。

 この超過利益については,超過売上高に対する利益率なるものが認定困難である一方,その額は,仮に本件特許発明を他者に実施許諾した場合に第三者が当該超過売上高の売上げを得たと仮定した場合に得られる実施料相当額を下回るものではないと考えられることからすると,超過売上高に当該実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定する方法によることが許されるものと解される。

最新の画像もっと見る