知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

無効の抗弁に対する再抗弁の取り扱い

2007-05-27 07:34:19 | Weblog
事件番号 平成17(ワ)27193
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成19年05月22日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 設楽隆一

『6 原告の弁論再開申請について
原告は,本件の弁論終結後,平成19年5月9日付け準備書面及び甲39,40の写しを提出し,平成19年2月9日付けで,本件特許2の請求項1について訂正審判を申し立てたこと,及び,これにより近々訂正審決がなされる予定であるので,弁論の再開を希望する旨の上申をしている

確かに,この訂正審判の申立ては,本件特許2の無効の抗弁に対する再抗弁として主張することが可能な事由ではある(平成19年3月6日の口頭弁論期日においても主張し得る事由ではあった。)。しかし,この訂正審判の申立ては,本件訂正請求2に加え,特許請求の範囲に,①「前記所定のタイミングから計時を開始するタイマが所定時間計時する間に遊技媒体が投入されないときに,遊技がされていない状態であることを検出する状態検出手段」,②「遊技媒体が投入されると前記特別の遊技音を復して出音させる」を追加するものであるにすぎず,これにより前記無効理由が解消されるとはいえないと思料される

すなわち,・・・のであるから,

これらの訂正は,遊技メダルの投入が一定時間なければゲームをしていないと判断する,あるいは,遊技メダルを投入した時点でゲームをすると判断する点を強調しただけにすぎないものである(・・・。)。

結局のところ,この訂正後の本件訂正特許発明2も,乙18発明も,ゲームの進行に必要な動作が一定時間ない場合に,ゲームを行っていないと判断し,その音量を下げる点に差異はなく,前記のとおり,スロットマシンとパチンコ機とは互いに技術の転用が可能なものであることなど,上記3,4で述べたことを考えると,上記訂正後の本件訂正特許発明2も,前記の乙37発明及び乙18発明等から容易に想到し得たものと思料される。したがって,本件においては,弁論を再開する必要性は認められない。』

(筆者感想)
 裁判所は、通常、「明らかである」とか、「言うべきである」とか、断定調に記載するところ、ここでは、「思料する」に留めている。この後、特許庁で行われる訂正審判に過度に鑑賞しないように配慮したものと思われる。
 一体的に早期に解決するには、訂正審判の訂正内容について、侵害訴訟の方である程度踏み込んで判断せざるを得ないのであるから、両者が併走する場合においては、訂正審判の重みは軽くなっていくことだろう。

 ここ数年、判決の品質は向上しているように感じる。裁判所においては量・質ともに両立して体制の充実が図られ、それが奏功しているようだ。代理人(弁理士)、行政(審査・審判官)は、良いお手本から学び、あるいは、議論を深めることができるだろう。

 それにしても、時代の流れを感じる。今後、特に中間に存在する行政は、その在り方を問われることになるかもしれない。

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