知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

均等論適用のための第1要件の検討例

2011-04-17 13:09:44 | Weblog
事件番号  平成22(ネ)10014
事件名  意匠権侵害差止等・特許権侵害差止等
裁判年月日 平成23年03月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

・・・
そして,上記①における『特許発明の本質的部分』とは,明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するものである。

エ 均等論適用のための第1要件具備の有無
・・・
以上を前提として,明細書のすべての記載や,その背後の本件発明の解決手段を基礎付ける技術的思想を考慮すると,本件発明が本件作用効果①を奏する上で,蓋本体及び受枠の各凸曲面部が最も重要な役割を果たすことは明らかであって(段落【0009】【0020】等参照),『受枠には凹部が存在すれば足り,凹曲面部は不要である』との控訴人の主張は正当であると認められ,本件発明において,受枠の『凹曲面部』は本質的部分に含まれないというべきである。
なお,明細書の段落【0020】には,『閉蓋状態において,受枠上傾斜面部と蓋上傾斜面部および受枠下傾斜面部と蓋下傾斜面部は嵌合し,蓋凸曲面部と受枠凹曲面部および蓋凹曲面部と受枠凸曲面部は接触しないようにする』という構成を採ることにより,本件作用効果②を奏する旨記載されており,ここでは受枠の凹部が『曲面部』であるかどうかは問題とされていないといえ,本件作用効果②を奏する上でも,受枠の凹部が『曲面部』であることは本質的部分には含まれないというべきである。


(原審)
イ 技術的思想の中核をなす特徴的部分
(ア) 前記ア(イ)の記載によれば,閉蓋時に接触するのは,蓋本体と受枠の各凸曲面部同士であるし,本件明細書全体を見ても,蓋凸曲面部がガイドされるにあたり,受枠凹曲面部が直接的に果たす役割については明示されていない。
 しかしながら,前記ア(イ)の記載は,課題を解決するための手段として記載された同(ア)の構成,すなわち受枠に凸曲面部と凹曲面部を連続して形成し,蓋本体にはこれに倣う形で凹曲面部と凸曲面部を連続して形成することを,本件作用効果①発生の前提として記載されている。
 また,発明の効果についての前記ア(ウ)の記載中には,受枠凹曲面部を含む同(ア)の構成が示された上,同構成によって本件作用効果①が発生する旨説明されている


(イ) これらのことからすれば,本件発明は,受枠に凸曲面部と凹曲面部を連続して形成し,蓋本体にはこれに倣う形で凹曲面部と凸曲面部を連続して形成することをもって,本件作用効果①を発生させる発明といえる。したがって,受枠凹曲面部の形状は,本件発明の主要な根拠となる部分であり,凹曲面部の形状が本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分ではないということはできない。

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