知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

パブリシティ権侵害の有無

2008-07-14 06:51:26 | Weblog
事件番号 平成19(ワ)20986
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成20年07月04日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 市川正巳

第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(パブリシティ権侵害の有無)について
(1) パブリシティ権について
ア 人は,著名人であるか否かにかかわらず,人格権の一部として,自己の氏名,肖像を他人に冒用されない権利を有する。人の氏名や肖像は,商品の販売において有益な効果,すなわち顧客吸引力を有し,財産的価値を有することがある。このことは,芸能人等の著名人の場合に顕著である。この財産的価値を冒用されない権利は,パブリシティ権と呼ばれることがある。

他方,芸能人等の仕事を選択した者は,芸能人等としての活動やそれに関連する事項が大衆の正当な関心事となり,雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアによって批判,論評,紹介等の対象となることや,そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されること自体は容認せざるを得ない立場にある。そして,そのような紹介記事等に,必然的に当該芸能人等の顧客吸引力が反映することがあるが,それらの影響を紹介記事等から遮断することは困難であることがある

以上の点を考慮すると,芸能人等の氏名,肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきである。

イ なお,原告らも被告も,通常モデル料が支払われるべき週刊誌等におけるグラビア写真としての利用と同視できる程度のものか否かの基準に言及するが,この基準ないし説明は,東京地裁平成16年7月14日判決(判例タイムズ1180号232頁〔ブブカアイドル第一次事件〕)の事実関係の下では適切なものであるとしても,他の事実関係の事件にそのまま適用することができるものではないことに注意を要する。

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