知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

権利濫用を認定した事例

2013-02-24 21:51:36 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)3460
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成25年01月17日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川康,西田昌吾

(1) 本件各商標について商標権者となるべき者
 ・・・本来,被告が出願し,その商標権者となるべきであるといえる(商標法3条1項柱書)。
 このように,・・・,原告が本件各商標権を有し続けることは,私企業たる原告の一存によって,公益法人として設立された被告の事業継続を不安定にさせ得る潜在的な危険があることを意味している。

 原告が本件各商標について登録出願し,商標権者であることを直ちに違法と評価するかはともかく,被告による独占的な使用を許諾する限りにおいて,かろうじて許容されてきたものといえる。すなわち,・・・,原告は,「日本漢字能力検定」などの事業を被告に引き継いだ以上,本件各商標の登録出願をした原告が,その商標権者であり続けるということは,これらの使用許諾が当然の前提となっているというべきである。
 原告は,・・・,最も重要な「日本漢字能力検定」の事業を被告に引き継いだ以上,原告のみが本件各商標を使用することは全く想定されていないというべきである。
 ・・・
(2) 被告による使用状況
 本件各商標は,その商標登録から現在に至るまで,被告の事業の中心である「日本漢字能力検定」の事業を表すもの(本件商標1,2),あるいはこれに付随する事業を表すもの(本件商標3)として使用されてきた商標であり,前記1(2)のとおり,受検者の増加に伴い,その旨一般にも広く認識されてきたといえる。

(3) 危険性の顕在化
 ところが,前記1(4)のとおり,原告は,平成21年11月以降,本件各商標権を,被告とは関係のない第三者に移転したり,被告に対して本件各商標の使用を中止するよう通告したりした上,ついには被告による本件各商標の使用差止めを求める本件訴えの提起にまで至った。このことは,まさに原告が本件各商標権を有することに伴う前記潜在的危険性を顕在化させたものであり,原告は,その権利保有及び行使が許容される根拠を自ら喪失させたといえる。しかも,前記1に認定の事実経過からすれば,原告が本件訴えを提起したのは,本件各商標権が自己に帰属していることを奇貨とし,被告からの損害賠償請求等への対抗策として利用するためといえるが,商標制度が保護すべき権利,利益とは,およそかけ離れた目的といわざるを得ない。

(4)まとめ
 以上のとおり,本件訴えにおける原告の請求は,本件各商標権が本来帰属すべき主体である被告の事業継続を危うくさせるものでしかなく,しかも,商標本来の機能とは関わりなく,被告からの損害賠償請求等への対抗策として本件各商標権を利用しているというのであるから,そこにもはや何らの正当性はなく,権利濫用に当たるというほかない
 したがって,原告が,本件各商標権に基づき,被告による本件各商標の使用差止めを求めることは許されない。

独占的販売店等を通じて輸入された外国法人が商標を付した商品(商標法50条の趣旨)

2013-02-24 20:58:08 | 商標法
事件番号 平成24(行ケ)10250
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌
商標法50条

イ 商標法は,商標を保護することにより,商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする(商標法1条)。したがって,商標法上の保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であり,一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないか,又は発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなるものと解される。商標法50条は,そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し,かつその存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることになるところから,請求によりこのような商標登録を取り消す趣旨の制度である

 商標権は,国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり,属地主義の原則に支配され,その効力は当該国の領域内においてのみ認められるのが原則である。もっとも,商標権者等が商品に付した商標は,その商品が転々流通した後においても,当該商標に手が加えられない限り,社会通念上は,当初,商品に商標を付した者による商標の使用であると解される。そして,外国法人が商標を付した商品が,日本において独占的販売店等を通じて輸入され,国内において取引される場合の取引書類に掲載された商品写真によって,当該外国法人が独占的販売店等を通じて日本における商標の使用をしているものと解しても,商標法50条の趣旨に反することはないというべきである。

ウ よって,本件においては,商標権者である原告が,原告の時計に本件使用商標を付し,日本国内において,独占的販売店であるドウシシャを通じて上記時計に関する取引書類に本件使用商標を付した商品写真を掲載してこれを展示したものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標を使用(商標法2条3項8号)していたということができる。

引用文献の組み合わせに動機づけを認めた事例

2013-02-24 20:46:03 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10414
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 井上泰人、荒井章光

 したがって,荷役用のグラブバケットに係る技術を浚渫用のグラブバケットに適用する際には,浚渫用のグラブバケットにおいて特に考慮すべき強度上の余裕を確保することに支障を生ずるか否かについて,十分配慮する必要があるとしても,浚渫用グラブバケットの上記特性とは直接関連しない,対象物を掬い取って移動させるという両目的に共通する用途に係る技術について,一律に適用を否定することは相当ではない
・・・
 したがって,引用発明1に,引用例3が開示する本件構成1及び2を適用することについて,動機付けが存在する一方,阻害事由を認めることはできない。

引用文献の組み合わせに動機づけを認めた事例

2013-02-24 20:46:03 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10414
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成25年01月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 井上泰人、荒井章光

 したがって,荷役用のグラブバケットに係る技術を浚渫用のグラブバケットに適用する際には,浚渫用のグラブバケットにおいて特に考慮すべき強度上の余裕を確保することに支障を生ずるか否かについて,十分配慮する必要があるとしても,浚渫用グラブバケットの上記特性とは直接関連しない,対象物を掬い取って移動させるという両目的に共通する用途に係る技術について,一律に適用を否定することは相当ではない
・・・
 したがって,引用発明1に,引用例3が開示する本件構成1及び2を適用することについて,動機付けが存在する一方,阻害事由を認めることはできない。