知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

ホームページの著作物性を否定した事例

2013-02-17 22:34:38 | 著作権法
事件番号 平成22(ワ)47569
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年12月27日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎,裁判官 高橋彩,石神有吾

b 原告は,本件画面1の画面構成は,画面上中央に「大道芸研究会」と黒い太文字のタイトルを,タイトルの下に更新内容の掲載欄を,画面中央やや上,赤色の四角い枠内に大道芸研究会・事務局への連絡先を掲載した点,タイトルの背景は桃色で電話とFAX欄の背景は黄色である点,画面下中央部に大きく写真を貼っている点,背景に花柄模様の画像を使用している点において,原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり,画面全体として創作性がある旨主張する。

そこで検討するに,著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表現など表現上の創作性がないものには,同法による保護は及ばない

 ところで,団体に関する各種の情報を掲載し,広報等の目的で開設された団体のウェブサイトのホームページ(ウェブページ)の画面構成においては,
① 団体名を画面の上に太文字で配置すること,
② 各ページの掲載内容を示すタイトル欄をページごとに設けること,
③ 各記載内容にタイトルを設けること,
④ タイトルを枠や図形の中に配置すること,
⑤ 画面上に,各種の大きさの枠を設けてその中に,あるいは枠を設けずに,更新内容,団体の連絡先,団体の説明,団体の活動内容及び入会に関する情報等の団体のホームページとして必要な内容を掲載すること,
⑥ 写真を中央に大きく掲載したり,小さめの写真複数枚を並べて掲載すること,
⑦ 写真に近接して写真の説明等を配置すること,
⑧ 画面内に他のページへのリンクの案内ボタンを複数並べて配列し,あるいは,単独で配置すること,
⑨ 図柄の背景や単色の背景を使用すること,
⑩ 文字・枠・背景に各種の色や柄を用いること
は,いずれも一般的に行われていることであり(乙11ないし15,弁論の全趣旨),ありふれた表現であるといえる。

 しかるところ,原告が本件画面1に表現上の創作性があることの根拠として挙げる上記諸点は,上記①,⑤,⑥,⑨及び⑩のとおり,団体のウェブサイトのウェブページの画面構成としては,一般的なものであって,ありふれたものであり,表現上の創作性があるものと認めることはできない。また,原告が挙げる本件画面1の色合いの点については,これを認めるに足りる証拠はない(本件においては,モノクロの書証しか提出されていない。)。

 したがって,原告の上記主張は,理由がない。

著作物に該当しないものの利用行為と不法行為の構成

2013-02-17 22:27:49 | 著作権法
事件番号 平成22(ワ)47569
事件名 著作権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年12月27日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎,裁判官 高橋彩,石神有吾

(2) 検討
ア 前記(1)の認定事実によれば,被告は,本件ウェブサイトのウェブページから,本件各画面の画像データ及び本件ソースコードをそのままダウンロードして自己のパソコンに取り込んで,これらをアップロードして,被告ウェブサイトを開設し,その後,本件各画面及び本件ソースコードを利用して被告各画面を作成し,被告ウェブサイトに掲載したことが認められる。

 そこで検討するに,著作権法は,著作物の利用について,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに,その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で,著作権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,独占的な権利の及ぶ範囲,限界を明らかにしていることに照らすならば,同法所定の著作物に該当しないものの利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の独占的な利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(最高裁判所平成23年12月8日第一小法廷判決民集65巻9号3275頁参照)。

 これを本件についてみるに,本件各画面及び本件ソースコードが原告を著作者とする著作物に該当しないことは前記1(1)及び(2)において判示したとおりであるところ,原告が主張する本件各画面及び本件ソースコードの利用についての利益は,著作権法が規律の対象とする独占的な利用の利益をいうものにほかならないから,原告が多大な時間と労力を費やして本件各画面及び本件ソースコードを作成したとしても,被告の上記一連の行為は,原告に対する不法行為を構成するものとみることはできないというべきである。

商標法51条1項の解釈

2013-02-17 22:13:28 | 商標法
事件番号 平成24(行ケ)10187
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌

第4 当裁判所の判断
1 商標法51条1項について
 商標法51条1項は,「商標権者が故意に指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用…であって…他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。同項の規定は,商標の不当な使用によって一般公衆の利益が害されるような事態を防止し,そのような場合に当該商標権者に制裁を課す趣旨のものであり,需要者一般を保護するという公益的性格を有するものである(最高裁昭和58年(行ツ)第31号同61年4月22日第三小法廷判決裁判集民事147号587頁参照)。

 商標法51条1項の上記のような趣旨に照らせば,同項にいう「商標の使用・・・であって・・・他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには,使用に係る商標の具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との間で具体的に混同を生ずるおそれを有するものであることが必要であるというべきであり,そして,その混同を生ずるおそれの有無については,商標権者が使用する商標と引用する他人の商標との類似性の程度,当該他人の商標の周知著名性及び独創性の有無,程度,商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである。  

 そこで,まず,本件商標と使用商標との類似性を検討した上で,上記のような観点から,
① 使用商標と引用商標との類似性の程度,
② 引用商標の周知著名性及び独創性の程度,
③ 使用商標が付された商品と被告の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度,
④ 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
を総合して,使用商標の具体的表示態様が被告の業務に係る商品等との間に具体的に混同を生ずるおそれの有無について検討することとする。
・・・

明確性要件を満たしていないとした事例

2013-02-17 21:54:12 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10158
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 井上泰人,荒井章光

 そして,本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,主界面について,「・・・」ものとしており,本願発明が備える「主界面」について,他の構成である「素子」との位置関係及びそれ自体の形状について明確に特定しているものといえる。したがって,本願発明における「主界面」の構成は,本願発明1の特許請求の範囲の記載において明確にされているということができる。
 また,本願発明9に係る特許請求の範囲の記載は,2次界面について,「・・・」ものとしており,本願発明9ないし11が備える「2次界面」について,それ自体の形状について明確に特定しているものといえる。

イ しかしながら,本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,「主界面」と「2次界面」とは,同一の形状で特定されているばかりか,本願発明9ないし11に係る特許請求の範囲の記載には,「主界面」と「2次界面」との位置関係が記載されていないため,両者を区別することができず,また,本願発明の属する技術分野における技術常識を参酌しても,「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,一義的に明らかであるとはいえない

 そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると,そこには,本願発明における「界面」について,・・・とする旨の記載がある(【0018】前記(1)オ)が,当該記載は,「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係を説明するものではない。また,本願明細書の発明の詳細な説明には,素子の面取りされた側部や素子の端部エッジにもテクスチャ形成を施すことが望ましいとの記載がある(【0034】。前記1キ)が,これらのテクスチャ形成が施される箇所が,本願発明における「主界面」と「2次界面」のいずれに相当するかを特定する記載はない
 さらに,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明9ないし11について記載した箇所もある(【0051】~【0053】。前記1(1)ケないしサ)が,ここには,本願発明9ないし11の特許請求の範囲の記載と同じ内容が記載されているにすぎず,本願発明の「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係を明らかにするものとはいえない

ウ 以上によれば,本願発明にいう「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかではなく,両者を区別することはできないというほかない。
・・・
(3) 小括
 以上によれば,本願発明における「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,不明であり,両者を区別することはできないから,本願発明9ないし11に係る特許請求の範囲の記載には,本願発明9ないし11の構成が明確に記載されていないというほかない。
 よって,本件出願は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。