知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

複数の文献から周知技術を認定した事例

2012-12-25 23:13:52 | 特許法29条2項
事件番号 平成24(行ケ)10038
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月11日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香,知野明
特許法29条2項 周知技術の認定事例

(イ) 上記記載によれば,甲第21号証には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けることが記載されていると認められる。
・・・
(イ) 上記記載によれば,甲第22号証には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けることが記載されていると認められる。
・・・
(イ) 上記記載によれば,甲第28号証には,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されていると認められる。
・・・
(イ) 上記記載によれば,甲第29号証には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けることが記載されていると認められる。

カ 甲第21号証等に記載されている周知技術の内容
 上記イないしオによれば,甲第21号証,同第22号証,同第28号証及び同第29号証には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であるといえる。
 また,甲第22号証及び同第29号証に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,例えば甲第29号証に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることである。

 以上によれば,甲第21号証,同第22号証,同第28号証及び同第29号証の記載から,次の事項が周知技術であることが認められる。
「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動倉庫。」

引用発明への組み合わせの検討事例-組み合わせ可否、動機づけ

2012-12-25 22:49:16 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10443
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月11日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
特許法29条2項 引用発明への組み合わせ、動機づけ

 ところで,甲2の解決課題は,電線が挿通される電線挿通孔dと,テーパー面e及び嵌合壁bの間のシール部位とが,径方向の内外において対向していることから生じるものであって,両者が径方向に対向していない場合には,・・・,同様の問題が生じないものである。そうすると,甲2から,「A」が周知の事項と認められるとしても,・・・,両者が径方向に対向していない構造においては当てはまらないものである。

エ そこで,引用発明におけるパッキン及び電線の密着部位とパッキン及びハウジングの密着部位についてみると,審決が引用発明認定の根拠とした甲1の実施例の構造(甲1の図面参照)では,両者が径方向において対向しておらず,軸方向にずれていることが分かる。したがって,引用発明においては,電線の挿通による防水栓本体の外径変化の影響がシール部位に及ばない構造となっており,審決が認定した「A」との周知の事項が当てはまらないものである。

 また,引用発明において,第2のシール部の配設位置を後側に変更すると,・・・。そうすると,・・・,径方向の歪み(変形)の伝達を抑制するという点で,実質的に甲2と同様の構成を備えることとなる。この場合,第1のシール部の外径に変化が生じても,環状のコネクタハウジングによってその変形が第2のシール部には伝達されず,リブ部の防水シール効果の低下が生じないことは明らかである。すなわち,仮想構成1を採用した段階で,甲2の解決手段のみならず,甲2の作用効果も同時に達成されることになる。そうすると,更にそこから仮想構成2のように変更すること,すなわち,リブ部の突出方向を前方から後方に敢えて変更することについては,もはや動機づけが存在しないというべきである。