知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許法29条1項3号所定の刊行物

2011-11-17 23:09:28 | Weblog
事件番号 平成23(行ケ)10189
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年10月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

ウ 取消事由3(引用例には引用文献適格性がないこと)について
原告は,
① 刑事事件において裁判所が引用例(乙1)の内容をでたらめと判断し,これを刊行物として認めなかったこと,
② A教授が,引用例の内容をでたらめと判断したこと,
③ 引用例が絶版となったことの3点を根拠に,引用例は引用刊行物として妥当でない
と主張
する。

 しかし,仮に刑事事件において裁判所が引用例の内容をでたらめと判断し,あるいはA教授が引用例の内容をでたらめと判断し,さらには引用例とされた刊行物が絶版になった事実が認められたとしても,当該刊行物が出版されたという事実自体が消滅するものではなく,引用例は特許法29条1項3号所定の「特許出願前に日本国内・・・において,頒布された刊行物」に該当する

 したがって,引用例が引用刊行物としての適格性を欠く旨の原告の主張は採用することができない。

請求項の用語が誤記であると認められなかった事例

2011-11-17 23:04:29 | 特許法70条
事件番号 平成23(行ケ)10189
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年10月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

イ 上記記載によれば,本願発明は,塩化マグネシウムを利用することで,牛,鶏,豚等の生物の細胞を活性化する方法に関する発明であると認められる。なお,原告は,本願発明における「食品」は「飼料」の誤りである旨主張するが,特許請求の範囲に「食品」と記載されていることから,明白な誤記であるとまでいうことはできないので,上記主張は認めることはできず,いずれにしても,この点が本件訴訟の結論に影響を及ぼすものではない。

固定カメラで撮影したライブ映像の著作物性

2011-11-17 22:55:12 | 著作権法
事件番号 平成21(ワ)31190
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成23年10月31日
裁判所名 東京地方裁判所
裁判長裁判官 大須賀滋

(1) 著作物3の著作物性(創作性)について
ア 前提となる事実に加え,証拠(甲10,15)及び弁論の全趣旨によると,著作物3は,「THE MACKSHOW」の活動初期のライブの映像を収録したDVDであり,
 Yの発意・方針に基づき,関係者への配布を目的として製作されたこと,
 映像は,ライブハウスに設置された固定カメラにより撮影されているが,同カメラは,ステージ全体を捉えることのきる位置及び角度に設置されており,ステージ全体を正面から撮影したり,ステージ上の人物の移動に合わせて左右に角度を変えて撮影したり,望遠によりステージ上の人物を中心に撮影することができるものであること,
 著作物3は,上記バンドがライブにおいて楽曲を演奏する様子を撮影したライブ全体の映像で構成され,ライブの進行に応じて,ステージ全体を正面から撮影したり,特定のメンバーを中心に撮影したり,メンバーのステージ上の移動に伴いカメラの角度を変えて撮影するなどした映像から成っていること,
 著作物3の映像には,ライブの臨場感を損なわないため,特段の編集作業を施していないこと
がそれぞれ認められる。

 したがって,著作物3の映像は,上記バンドのライブにおける演奏の様子が記録され,カメラワークや編集方針により,ライブ全体の流れやその臨場感が忠実に表現されたものとなっており,著作者であるYの個性が現れているということができるから,著作物性(創作性)を認めるのが相当である。

イ 被告は,著作物3のカメラワーク等から,その著作物性(創作性)を争うが,上記のとおり,著作物3は,ライブの進行に応じた撮影を行っていることからすると,著作者の個性が表現されているということができる。
 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。