事件番号 平成22(ワ)15487
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年08月26日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎
2 請求原因について
(1)ア 原告は,前記1のとおり,特許庁審判官であった被告が,その合議体の審判長として本件特許に係る特許異議申立事件の審理を担当した際に,特許異議申立人である住石の利益を図って,「前に確定した判決」と抵触する違法な本件決定をしたことが,被告及び住石の共同不法行為に該当し,被告は,共同不法行為に基づく損害賠償としての慰謝料の支払義務を負う旨主張する。
ところで,公権力の行使に当たる国の公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には,国が,国家賠償法1条1項により,その被害者に対して賠償の責に任ずるものであり,公務員個人はその責を負わないものと解するのが相当である(最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁,最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁等参照)。
これを本件についてみるに,被告は,国家公務員である特許庁審判官としての職務として本件特許に係る特許異議申立事件の審理をし,本件決定をしたものであるから,仮に被告が本件決定をしたことが違法な行為に当たり,これによって原告が損害を被ったとしても,国がその賠償の責に任ずるものであって,被告個人がその賠償責任を負うものではないというべきである。
イ これに対し原告は,被告は,本件決定が確定した平成15年10月9日に先立つ同年4月1日に特許庁を退職しているから,被告が本件決定をしたことは,国の公務員がその職務の執行として行った行為に当たらない旨主張する。
しかし,公務員の行為がその職務の執行として行われたものであるか否かは,その行為時点において判断すべきものと解されるから,本件決定をした時点で特許庁審判官であった被告が本件決定が確定する前に特許庁を退職したという事情は,本件決定が被告の職務の執行として行われたことに影響を及ぼすものではなく,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 以上によれば,原告は,被告が本件決定をしたことが違法な行為であることを理由に,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求することはできないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年08月26日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎
2 請求原因について
(1)ア 原告は,前記1のとおり,特許庁審判官であった被告が,その合議体の審判長として本件特許に係る特許異議申立事件の審理を担当した際に,特許異議申立人である住石の利益を図って,「前に確定した判決」と抵触する違法な本件決定をしたことが,被告及び住石の共同不法行為に該当し,被告は,共同不法行為に基づく損害賠償としての慰謝料の支払義務を負う旨主張する。
ところで,公権力の行使に当たる国の公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には,国が,国家賠償法1条1項により,その被害者に対して賠償の責に任ずるものであり,公務員個人はその責を負わないものと解するのが相当である(最高裁昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁,最高裁昭和53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁等参照)。
これを本件についてみるに,被告は,国家公務員である特許庁審判官としての職務として本件特許に係る特許異議申立事件の審理をし,本件決定をしたものであるから,仮に被告が本件決定をしたことが違法な行為に当たり,これによって原告が損害を被ったとしても,国がその賠償の責に任ずるものであって,被告個人がその賠償責任を負うものではないというべきである。
イ これに対し原告は,被告は,本件決定が確定した平成15年10月9日に先立つ同年4月1日に特許庁を退職しているから,被告が本件決定をしたことは,国の公務員がその職務の執行として行った行為に当たらない旨主張する。
しかし,公務員の行為がその職務の執行として行われたものであるか否かは,その行為時点において判断すべきものと解されるから,本件決定をした時点で特許庁審判官であった被告が本件決定が確定する前に特許庁を退職したという事情は,本件決定が被告の職務の執行として行われたことに影響を及ぼすものではなく,原告の上記主張は採用することができない。
(2) 以上によれば,原告は,被告が本件決定をしたことが違法な行為であることを理由に,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求することはできないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。