知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

専属実演家契約とパブリシティ権

2010-05-18 06:44:16 | Weblog
事件番号 平成21(ワ)25633
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年04月28日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

(1) パブリシティ権について
人は,その氏名,肖像等を自己の意思に反してみだりに使用されない人格的権利を有しており(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁,最高裁昭和44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照),自己の氏名,肖像等を無断で商業目的の広告等に使用されないことについて,法的に保護されるべき人格的利益を排他的に有しているということができる。
そして,芸能人やスポーツ選手等の著名人については,その氏名・肖像を,商品の広告に使用し,商品に付し,更に肖像自体を商品化するなどした場合には,著名人が社会的に著名な存在であって,また,あこがれの対象となっていることなどによる顧客吸引力を有することから,当該商品の売上げに結び付くなど,経済的利益・価値を生み出すことになるところ,このような経済的利益・価値もまた,人格権に由来する権利として,当該著名人が排他的に支配する権利(いわゆるパブリシティ権。以下「パブリシティ権」という。)であると解される

(2) エターナル・ヨークの地位について
・・・
 したがって,本件専属実演家契約の上記規定内容からすれば,Aがアップ・デイトに独占的に許諾した対象は,Aの実演に係る権利に関係するものであり,第6条によりアップ・デイトに帰属することとされる権利も,上記実演(①~⑤)及び実演家であるAの活動に関係する上記⑥~⑩の業務に関するものをいう趣旨と解するのが相当というべきであり,実演家の活動とは直接の関係を有しない店舗の経営にまで及ぶものと解することはできない

イ 証拠(甲6の2)によれば,アップ・デイトは,平成15年3月1日以降,本件専属実演家契約に基づくAのマネジメント業務に係る契約上の地位をエターナル・ヨークに譲渡し,Aもこれに同意したことが認められる。
 しかしながら,上記経緯によりエターナル・ヨークが取得したのは,本件専属実演家契約上のアップ・デイトの地位であるから,その内容は,上記アに説示したものにとどまり,エターナル・ヨークがAのパブリシティ権の帰属主体になったものということはできない

 そして,エターナル・ヨークの取得した地位が上記のものにとどまる以上,本件専属実演家契約は,実演家の活動とは直接の関係を有しない店舗の経営にまで及ばないから,KNOSがAの芸名や肖像等を使用してラーメン店を経営したことが,エターナル・ヨークの上記契約上の地位ないし権利を侵害するものということはできない