知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

会社法386条1項の判断事例(取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合)

2010-05-02 20:25:17 | Weblog
事件番号 平成21(ネ)10061
事件名 特許を受ける権利出願人変更請求控訴事件
裁判年月日 平成22年03月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

第2 当裁判所の判断
1 職権により判断する。
2 本件記録によれば,本件訴訟の経過等は,次のとおりであったことが認めら
れる。
・・・

3 ところで,会社法386条1項は,取締役(取締役であったものを含む。)が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合には,当該訴えについては,監査役が監査役設置会社を代表する旨を定めているところ,被控訴人は,上記のとおり平成20年4月8日まで控訴人の取締役であったのであるから,本件訴訟において控訴人を代表すべき者は,代表取締役であるAではなく,監査役であるBであったものと認められる。

しかるに,原審は,上記のとおり,Aを控訴人代表者として訴訟手続を行い,判決に至ったのであるから,原判決は,訴訟行為をする権限を有しない代表者によって行われた訴訟行為に基づいてなされたものである。したがって,原審の訴訟手続が違法であったことは明らかである。

なお,当審において,上記のとおり,口頭弁論期日にBを呼び出したが,同人は出頭しなかったので,Aがなした訴訟行為の追認があったと認めることはできない

4 よって,第一審裁判所においてBを代表者とする訴訟追行をなさしめるため,原判決を取り消し,本件を東京地裁に差し戻すこととして,主文のとおり判決する。

原審
事件番号 平成20(ワ)32587
事件名 特許を受ける権利出願人変更請求事件
裁判年月日 平成21年09月10日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟