知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

請求項の「所定の範囲」の解釈事例

2009-05-24 21:43:55 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10341
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年04月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

7 取消事由2(相違点2についての誤認)について
(1) 相違点2の認定につき
 本件発明1は,「現在設定されている目的地の位置を基準に所定の範囲にある施設の情報を抽出する」ものである。
 そして,本件発明1の「目的地の位置を基準に所定の範囲」の意義については,「所定」の語義が「定まっていること。定めてあること。」(「広辞苑第3版」1215頁[1988年10月11日株式会社岩波書店発行],甲14)であり,「範囲」の語義が「一定の決まった広がり。かこい。かぎり。区域。」(「広辞苑第3版」1981頁,甲14)であることからすると,「目的地の位置を基準に所定の範囲」とは,「目的地の位置を基準に定まっている一定の決まった広がり」を意味すると解される

 本件特許請求の範囲請求項1には,「所定の範囲」という記載があるのみで,それを超えてその意味を限定する記載はなく,また,本件特許の「発明の詳細な説明」や「図面」の記載からその意味を限定すべきであるともいえないから,上記の意味を超えて「所定の範囲」の意義を限定して解釈することはできない

 この点について原告は,他の公開特許公報(甲15~17)における「所定の範囲」という用語の使用例について主張しているが,他の公開特許公報における「所定の範囲」の使用例によって上記認定が左右されると解することはできない。