事件番号 平成19(行ケ)10006
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年09月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘
『イ 本件補正時
本件補正時の特許請求の範囲も,前記のとおり請求項1ないし5から成るが,その請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりである(下線部は補正部分)。
「【請求項1】使用する<ins>すべての</ins>原料を実質的に脱酸素状態としてなること,窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理すること,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること,を特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法。」』
『第4 当裁判所の判断
・・・
(3) なお原告は,本願補正発明においては,全工程について窒素ガス雰囲気下等,何らかの脱酸素状態が達成されるべきことが既に含意されている旨主張する。
しかし,本願補正発明は,①使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態とすること,②窒素ガス雰囲気下で,脱酸素した水等を用いてコーヒーを抽出処理すること,③コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすることを発明特定事項とするものであって,それ以外の工程における脱酸素処理については何ら特定していない。
このことは,甲3の11の手続補正書から認められるように,請求項2が,本願補正発明の方法に,フィラータンク内のヘッドスペース部分を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする場合を加えたものを発明特定事項としていること,請求項3が,本願補正発明の方法に,抽出処理後,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理する場合を加えたものを発明特定事項としていること,請求項4が,本願補正発明の方法に,原料を含むすべての製造工程において実質的に脱酸素状態としてなることを発明特定事項としていることからも明らかである。
そうである以上,本願補正発明において,全工程について脱酸素状態が達成されるべきことが含意されているとの原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張といわざるを得ない。したがって,この点に関する原告の上記主張は採用することができない。』
『原告の上記主張は,本願補正発明は「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」ではないとする審決の認定は,「本願補正発明は,原告主張の発明の要旨を表わしておらず,実質的には法36条に違反する」との認定にほかならないとの理解を前提に,法36条に違反する旨の拒絶理由を通知していないことの手続違背を主張するものである が,審決は法29条2項に基づき本願補正発明の進歩性を否定したものであって,法36条に基づき原告の請求を排斥したのでないことは,審決書の記載(甲3の18)から明らかである。
したがって,特許庁が原告に対し法36条に違反する旨の拒絶理由を通知しなかったとしても,手続上の瑕疵となるものではなく,原告の主張は採用することができない。
また原告は,上記不意打ちの主張に対する反論として主張する,いわゆるリパーゼ事件判決に反する旨の被告の主張も信義則に反し許されない旨主張する。しかし,審決が法36条に基づき原告の請求を排斥したものではなく,審決に手続上の違法がなかったことは上記のとおりであるから,被告が本件訴訟において上記リパーゼ事件判決等を引用して反論したとしても,それが信義則違反となるものではない。』
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年09月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘
『イ 本件補正時
本件補正時の特許請求の範囲も,前記のとおり請求項1ないし5から成るが,その請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりである(下線部は補正部分)。
「【請求項1】使用する<ins>すべての</ins>原料を実質的に脱酸素状態としてなること,窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理すること,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること,を特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法。」』
『第4 当裁判所の判断
・・・
(3) なお原告は,本願補正発明においては,全工程について窒素ガス雰囲気下等,何らかの脱酸素状態が達成されるべきことが既に含意されている旨主張する。
しかし,本願補正発明は,①使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態とすること,②窒素ガス雰囲気下で,脱酸素した水等を用いてコーヒーを抽出処理すること,③コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすることを発明特定事項とするものであって,それ以外の工程における脱酸素処理については何ら特定していない。
このことは,甲3の11の手続補正書から認められるように,請求項2が,本願補正発明の方法に,フィラータンク内のヘッドスペース部分を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする場合を加えたものを発明特定事項としていること,請求項3が,本願補正発明の方法に,抽出処理後,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理する場合を加えたものを発明特定事項としていること,請求項4が,本願補正発明の方法に,原料を含むすべての製造工程において実質的に脱酸素状態としてなることを発明特定事項としていることからも明らかである。
そうである以上,本願補正発明において,全工程について脱酸素状態が達成されるべきことが含意されているとの原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張といわざるを得ない。したがって,この点に関する原告の上記主張は採用することができない。』
『原告の上記主張は,本願補正発明は「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」ではないとする審決の認定は,「本願補正発明は,原告主張の発明の要旨を表わしておらず,実質的には法36条に違反する」との認定にほかならないとの理解を前提に,法36条に違反する旨の拒絶理由を通知していないことの手続違背を主張するものである が,審決は法29条2項に基づき本願補正発明の進歩性を否定したものであって,法36条に基づき原告の請求を排斥したのでないことは,審決書の記載(甲3の18)から明らかである。
したがって,特許庁が原告に対し法36条に違反する旨の拒絶理由を通知しなかったとしても,手続上の瑕疵となるものではなく,原告の主張は採用することができない。
また原告は,上記不意打ちの主張に対する反論として主張する,いわゆるリパーゼ事件判決に反する旨の被告の主張も信義則に反し許されない旨主張する。しかし,審決が法36条に基づき原告の請求を排斥したものではなく,審決に手続上の違法がなかったことは上記のとおりであるから,被告が本件訴訟において上記リパーゼ事件判決等を引用して反論したとしても,それが信義則違反となるものではない。』