goo blog サービス終了のお知らせ 

徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

2019年観能記

2019-11-14 20:30:47 | 音楽芸能
 今年の総括をするには早過ぎるが、もう年内には観能の機会がなさそうなので一応まとめてみた。
 今年は1月の喜多流「久留米座能」から始まった。20数年前久留米に住んでいたが、この新しいホールへ入るのは初めて。立派な特設能舞台が組まれ、素晴らしい雰囲気だ。番組では狩野了一さんがシテを務める能「船弁慶」は迫力十分。義経を務めた子方の石田大雅君が凛々しかった。
 4月には大倉源次郎さんを中心とする囃子方をフィーチャーした「音と舞」。熊本震災復興祈念として行われ、各流派合同の公演となった。なかでも観世流・菊本澄代・美貴姉妹の相舞による舞囃子「小袖曽我」は見ごたえがあった。そしてこの公演が平成最後の観能になった。
 8月は毎夏恒例の出水神社薪能。今年は第60回記念ということで十四世茂山千五郎さん演じる狂言「彦一ばなし」。金春流・本田光洋さんの「羽衣 替ノ型」というスペシャルな番組が組まれた。お二人とも堂々たる風格を感じさせる舞台だった。
 9月は毎年恒例の藤崎八旛宮例大祭御能組。喜多流・金春流が交互の番組だが、今年特に印象に残ったのは、喜多流・狩野祐一さんの半能「熊坂」だった。23歳の若手らしい長刀振り回しながらの「飛び返り」はダイナミックだった。
 そして10月は、3年ぶりの開催となった熊本城薪能。大いに期待したのだが、最後の金春流「半蔀」が残念な結果となった。ただ、救いは観世流・菊本澄代さんの舞囃子「経正」の気迫のこもった舞を観ることができたことだ。
 さて、来年はどんな能を観ることが出来るだろうか。


出水神社薪能 金春流 能「羽衣 替ノ型」(シテ:本田光洋)

熊本節 ~沖縄の歌~

2019-11-13 17:21:49 | 音楽芸能
 秋のくまもとお城まつりの定番となった「古謝美佐子 熊本城島唄コンサート」は今年18回目を迎えた。演目の中で毎回必ず、熊本にちなんだ曲目として演奏されるのが「熊本節」。
 明治21年、熊本鎮台を母体に陸軍第六師団が編成され、司令部は引き続き熊本城本丸に置かれた。太平洋戦争当時、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄の各県は第六師団の管下にあり、沖縄からも多くの若者たちが徴兵されて熊本へやってきた。そんな沖縄の若者が母や妻を残し熊本へ赴く心情を、沖縄に残る妻と呼応するように歌う。
 古謝さんはこの歌は熊本の公演でしか歌わないらしい。


第18回熊本城島唄コンサート(2019.10.12)

〽出征出船の唄(熊本節)
(男)我身や熊本ぬ城内ぬ努み 無蔵や母親ぬ御側勤み
(女)我身や母親ぬ孝事方すむぬ 里や国の為尽くちたぼり
(男)三年ぬ努み終ち来る間や手本立てぃる事願てぃ呉りよ
(男女)那覇港来りば寂しさや無蔵よ 袖濡らす涙忘してたぼな

      ▼嘉手苅林昌(かでかるりんしょう)「戦友〜軍人節〜熊本節 琉球情歌行」より

第14回 味取観音 もみじ祭り

2019-11-11 19:18:30 | イベント
 今年で14回目を迎える「味取観音 もみじ祭り」
 毎年、貴重な講演や写真コンテスト等、楽しいイベントがあります。
 また、見事に色付いた紅葉も見ることが出来ます!
 是非皆さまお誘い合わせの上お出かけください。

 【日時】11月24日(日)10:00 ~ 15:00
 【場所】味取観音瑞泉寺一帯(熊本市北区植木町味取1番地)
 【問い合わせ】うえき・山頭火の会事務局
        電話番号 096-272-2582


名付親もお喜び…

2019-11-10 18:09:56 | ニュース
 天皇、皇后両陛下の祝賀パレードに沸いた一日。オープンカーからにこやかに手を振られる両陛下を見ながら、ふと、宇野哲人先生もきっとお喜びにちがいないと思った。宇野先生とは「浩宮徳仁」(天皇陛下)の名付親でもあり、少年浩宮の教育にも携わった漢学者。明治8年、旧熊本藩士の四男として内坪井町に生まれ、済々黌、五高で学び、明治33年、東京帝大漢学科を恩賜の銀時計を拝受して卒業した秀才。永年にわたり後進の指導と学術の振興に尽力し、昭和49年、99歳の長寿を全うした。僕の高校の大先輩でもあり、在学時から卒業生の中でも特別な存在として認識していた。

今日のテレビから

2019-11-09 21:29:03 | テレビ
▼ブラタモリ秋田編(NHK総合)
 「掘れば出てくる“秋田の魅力”とは!?」をテーマに秋田の地下資源の恵みを探る。名物「きりたんぽ鍋」にも出汁の決め手となる比内地鶏の飼育に緑色凝灰岩が寄与していたり、かつて「日本のテキサス」と呼ばれた豊川油田でとれる天然アスファルトが日本の近代化を支えたという初めて聞く話は興味深かった。豊川油田の跡を見ていたら、56年も前の高校時代、夏の合宿に行った新潟県柏崎市で昔大いに栄えたという西山油田の痕跡を見に行った時のことを思い出した。できれば熊本県内にも残る「ヒナイ」という地名の由来にも触れてもらいたかったのだが。



▼「朝だ!生です旅サラダ」(テレ朝)
 中村玉緒が故郷京都を勝俣州和とともに思い出をめぐる旅。最後に立ち寄ったおく材木町町家では、なんと舞妓とし恵美さんが登場。祇園小唄を舞いました。先日、襟替えをして晴れて芸妓となったとし恵美さんのおそらく舞妓として最後のテレビ出演かもしれない。


西出丸の内側

2019-11-08 17:33:23 | 熊本
 先週初めから風邪でダウンし、寝たり起きたりが続いていたが今日やっと床上げ。毎月恒例の朔日詣りもやっていなかったので、朝から藤崎八旛宮と加藤神社をはしごした。両社とも七五三の家族連れがチラホラ。
 加藤神社では二の丸広場から西出丸を通る仮設通路がオープンしていたので西出丸の石垣付近まで入ってみる。以前、西出丸の内側に入ったのは熊本地震の前のことなので多分5、6年ぶりか。塀とともに上部が崩れ落ち、接ぎが弛んだ石垣を間近に見る。かろうじて隅石で立っている戌亥櫓をいつもとは逆方向から見ているとなんだか可哀想になってきた。修復が一日も早く始まればよいが。


西出丸の石垣と戌亥櫓

新人記者

2019-11-07 21:53:41 | 音楽芸能
 今日の熊日朝刊に「取材前線」というコラム記事があり、文化生活部の新人記者・平澤碧惟さんが熊本の伝統芸能を取材して半年の所感を述べていた。昨今、伝統芸能への関心が高い割には、それぞれの分野においては認知度の低さや継承していくことの大変さが分ってきたという。日本舞踊や吟詠や狂言などの担い手たちに直接取材し、彼らが次世代へどう受け渡して行くか模索する姿や言葉を、新人記者ながら、よく感受しているなと感じた。今後の彼女の記事が楽しみだ。


今年8月の出水神社薪能

レジェンダリー・ビート(legendary beat)

2019-11-06 20:52:27 | 音楽芸能
 今年3月、90歳で世を去った名ドラマー、ハル・ブレインを追悼するニューヨークタイムズのWeb記事の中に次のような一節があった。

 His most legendary beat is the primordial thump-thump-thump-crack heartbeat in the first four seconds of the Ronettes’ “Be My Baby.” Here’s just a fraction of what Blaine tapped into musical history.
(意訳)
 彼の最も伝説的なビートは、ロネッツの「Be My Baby」の最初の「タム-タム-タム-クラッ」という4秒間の原始的な鼓動です。これがまさに、ブレインが音楽史に残した足跡のほんの一部です。

 「タム-タム-タム-クラッ」という表現は日本ではもっぱら「ドン・ド・ドン・タン」といわれるアレである。このわずか4秒のドラムビートはハプニングから生まれたという。「ドン・ド・ドン」の部分がバスドラム、「タン」の部分がスネアドラムで演奏される。当初は「ド」の部分もスネアだったらしいが、たまたまブレインが演奏中にスティックを落としたため、「ド」の部分もバスでたたいたところ、そっちの方がいいということになったという。ホントかよ?とちょっと眉唾のにおいがしないでもないが。もし、当初の楽譜通りにたたいていたら、はたして伝説的なビートになっただろうか。
 かくしてロネッツの「Be My Baby」は大ヒットし、「ドン・ド・ドン・タン」は、それ以降のロックやイージーリスニングやその他の音楽に多大なる影響を与え、伝説的なビートとなった。
 ところで、このビートが生まれたのが1963年。その1300年も昔に日本では「三番叟」で同じリズムを刻んでいた。



先笄(さっこう)のはなし。

2019-11-04 11:39:04 | 日本文化
 FB友の竹中邦彦さんから、京都宮川町の人気舞妓とし恵美さんの襟替え情報をいただいた。襟替えというのは舞妓さんが舞妓を卒業し晴れて芸妓となることだが、舞妓としての最後の数日間に結う髷の型を「先笄(さっこう)」というそうだが、その先笄に結ったとし恵美さんの写真も添えられていた。

 その先笄のことを京都では別名「お梶」と呼ぶらしい。それは歌舞伎「藤十郎の恋」に登場する宮川町の茶屋宗清の女房お梶の髷が先笄だからだそうだ。歌舞伎の「藤十郎の恋」は観たことがないが、菊池寛の原作は読んだことがある。京の人気歌舞伎役者坂田藤十郎は、江戸からやってきた役者中村七三郎との厳しい競争にさらされる。近松門左衛門の新作狂言「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」を演じることになるが、通称「おさん茂兵衛」として知られるこの不義密通ものを演じるに当たり、実体験によって芸域を広げるため、茶屋の女房お梶に偽りの恋を仕掛けてしまう。狂言は大成功するが、心を踏みにじられたお梶は自ら命を絶つ。というような話だった。
 
 そんなことも思いながら、とし恵美さんの写真を眺めているとこれからの芸妓としての人生に幸多かれと祈らずにはいられない。


先笄の髷を結ったとし恵美さん

邦楽新鋭展Vol.5

2019-11-01 14:22:56 | 音楽芸能
 筝演奏家の佐藤亜美さんから、今月24日(日)熊本県立劇場で行われる「邦楽新鋭展Vol.5」のご案内のメールをいただいた。「邦楽新鋭展」というのは、毎年熊本で開催されている「長谷検校記念~くまもと全国邦楽コンクール」の最優秀賞受賞者を集めて、節目の年ごとに東京もしくは熊本で開催される特別演奏会。今回は第5回目を数える。佐藤亜美さんは、8年前の「第17回くまもと全国邦楽コンクール」で最優秀賞を受賞し、僕が邦楽にハマるきっかけとなった方である。佐藤さんが今回演奏されるのは、伊福部昭作曲の「二十五絃箏曲 琵琶行」だそうだ。伊福部昭といえば映画「ゴジラ」の音楽を思い出す方も多いだろう。「琵琶行」は中国唐代の詩人、白居易による長編叙事詩に材を取った伊福部の代表的な名曲。佐藤さんの演奏が楽しみだ。
 また、今回の「邦楽新鋭展Vol.5」には、今年の「くまもと全国邦楽コンクール」で最優秀賞を受賞し、先般放送された「にっぽんの芸能」(Eテレ)でも紹介された三味線演奏家の本條秀五郎さんも出演される。このお二人はこれまでも度々共演されているが、今回、同じ舞台でお二人を拝見できる貴重な機会となる。

「民謡魂 ふるさとの唄」(NHK総合)で本條秀太郎さん、本條秀五郎さんと共演された時の佐藤亜美さん