のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

飯ごう

2006年12月07日 | 日記・エッセイ・コラム

060720d   ロシア軍の装備品に飯ごうがあるのを見たときは驚きましたが、米を煮炊きするするわけではないので、飯ごうなど必要か?と思いましたが、米を煮炊きするばかりが飯ごうの使い方ではありません。普通の鍋としても使えますから、手に入るものを煮て食べるのも有事の心得。

 以前ハルビンで人民解放軍の移動を見たことがありましたが、食事は個人管理ではないみたいで、食料担当の兵士の背中に背負われていたのは亀の甲羅のように大きな中華なべ。”これだけ大きければ弾除けにも使える”と言ったら、西郷ドンが「そんなことをしたら鍋に穴が開いて料理ができなくなってしまいます。それは大勢の兵士の命に関わることです。兵士はたくさんいますが、鍋がなくなれば彼らも生きられません。」
 そういえば、1950年代の毛沢東の大躍進運動の時代、国の要は鉄!と鍋釜ばかりか鋤や鍬まで供出させて坩堝で溶かして兵器をつくり、その裏で国民は餓死していたんだっけ。

 小学校4年生の夏、祖母が沼田市の国立病院に入院していた時期がありました。この病院は元は軍隊の駐屯地の跡に建った病院で、一部は当時の軍隊の木造の建物を試用していました。
 母が泊り込みで祖母の付き添いに行っており、学校の休みに私も付き添いで泊まるぞ!と意気込んで行った時、看護婦さんが恐~い話をしてくれました。

 軍でいじめにあった兵士がおり、仲間が意地悪をして装備品の飯ごうを兵舎の便所に捨ててしまった。飯ごうをなくしてしまったその兵士は、「陛下からの賜り物をなんと心得る!」と上官に叱られ殴られ自殺してしまい、今でも夜になると病院のトイレから「飯ごう~飯ごう~はどこだぁ~」と声がする。ロシアの軍隊では今でも起こりそうなことです。

 夜、見舞い品のカルピスやジュースなどを景気よくいただいたものですから、当然トイレに行きたくなります。
 これがまた昔の建物ですから、別棟にあって20W程度の薄暗い裸電球がポツリとあるだけで不気味なこと。
 恐いから病院の外に出て、今はモスバーガーになっている畑に小便たれて振り返ると、病院の赤いランプが夜の闇に浮き上がり、これまた不気味なこと。救急病院でもあったので当然ですが、赤いランプの奥の病院玄関にうっすらと灯る裸電球も薄気味悪いものでした。この中に吸い込まれたら再び生きて戻れぬ”よもつひらさか”の入口のような赤いランプ。
 中の廊下を通っていくと看護婦さんに見つかって叱られそうなので、外から病棟に入ろうと建物にそって暗い軒下を忍び足で歩いていると、自転車置き場にふんわり揺らめく白い影と、すすり泣くような声が…。

 見てはいけないものに違いない!子供心にとっさに察しましたが、目は釘付けになっていました。
 看護婦さんと医者が白衣のままちちくりあっていました。スクリーン不要の”愛染かつら”良い子が見てはいけないR指定?

 幼児体験というべきか?近年になって発見したトラウマがあります。

 私が育った土地が温泉地だったので、子供の頃は巡回の映画が来たり、旅の芸人一座がやってきたものです。私が住む湯宿温泉にはもう火事で消失してしまいましたが新生館という小屋があり、ここで映画や旅芝居を上演していました。

 映画と言っても16mmの映画で、オートバイにフィルムや映写機などを積んだおじさんがやってきては上映していました。夏休みなど子供向けの怪獣映画もありましたが、ほとんどは爺さん婆さんが見る古いチャンバラもの。丹下左膳などよくやっていました。祖父母にくっついて行ってはこうしたチャンバラ物の映画や芝居を見たものです。

 子供の頃からへんな夢を見ることがありました。ちょんまげのほどけた真っ白な顔をした落ち武者が追いかけてくる夢で、30歳を過ぎても何度となくその夢を見てはうなされたものです。

051013 やがて、巡回映画も旅芝居も廃れて見かけなくなりましたが、近年、猿ヶ京に芝居小屋ができ、旅芝居の一座が公演するようになって、あの夢の正体が何だったのかがわかりました。

 芝居を見終わった後、一座の俳優達が玄関に出てきて変える客達に挨拶するとき、舞台の上で斬られて死んだ悪役も生き返って挨拶します。

 祖父母と旅芝居を見に行った時に、斬られて曲げがほどけた悪役が挨拶している姿があの夢の原因だったのです。真っ白い顔はドウラン塗りたくった顔で、きっと年配の役者だったのでしょうか、深い皺の奥にはドウランの白が届いておらず肌の色が見えている、そんな微妙なところまで子供はみているものなのか、夢に出てくる落ち武者も一部白い部分が肌色になっていました。

 ”これがあの夢の正体だったのか!”とわかってから、白い落ち武者の夢を見なくなってしまいました。

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