ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

少年の旅 ギリシアの星

2013-08-08 19:39:26 | 本のレビュー

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昨日に続いて、本についてです。久保喬 作「少年の旅 ギリシアの星」です。これは、私が小学校の頃読んだ本で、もう三十年以上も前に出版されたもの。だから、古書店でも、あまり手に入らないかもしれません。(小学館 1980年)

十二歳の少年明は、ギリシアで事故死した彫刻家である父の足跡を追って、父の助手でもあった大学生の三木さんと一緒に、夏休み、ギリシアに旅立ちます。ギリシアの小さな島ーー父が滞在していた宿屋の娘エレニ(明と同い年)と心を通い合わせたりしながら、ギリシアの島々を巡ります。果たして、父は本当に事故死したのか? 父が残したスケッチブックはどこへ消えてしまったのか? そうした謎とは別に、ギリシアの自然や風物、古代の遺跡は美しく、また優しく明に語りかけてきます。そうして、明の前を通り過ぎてゆく、もう決して会うことはないだろう、けれど鮮烈な出会いの喜びをもたらしてくれた人たち・・・

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この本を初めて読んだ時、私も同い年くらいであったせいか、明の旅に心から共感したもの。エレニというギリシアの少女にも、ぽっちゃりした白い肌に、金茶の髪をしてるにちがいない、とイメージがむくむく湧いてきたほど。今も、ロドス島に行ったら、お母さんの後を継いで、宿屋をやっているエレニの姿があるかもしれません。

そして、この本の魅力は挿絵。上の写真でも見る通り、青い線で描かれたスケッチ調の絵は、深みのある味わいをたたえていて、最近の児童文学書の挿絵にはない魅力があります(この頃のものは、コミック調の軽いものが多いですから)。ギリシアの空の青さや、異国の街角の風が感じられそうです。

古代ギリシアの神殿の壁画に描かれたイルカに合わせて踊るシーンや、エーゲ海を渡るときの、夜空を埋めつくす星・・・この本には、ギリシアという異国の魅力を立ち上らせる場面が幾つも登場し、私もすっかり「いつか、ギリシアへ行くんだ!」と決心してしまったほど(まだ、その願いは果たせていませんが)。

明とエレニに会いたくなったら、また読みたくなる本。