虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

グッバイ、レーニン!(2003/独)

2004年11月10日 | 映画感想か行
GOOD BYE, LENIN!
監督: ヴォルフガング・ベッカー
出演: ダニエル・ブリュール カトリーン・ザース マリア・シモン チュルパン・ハマートヴァ フロリアン・ルーカス

 東ベルリンに住むアレックスは、父が西側して以来、より一層社会主義に身をささげるようになった母と姉の3人で暮らしていた。その母が倒れ、昏睡状態に陥る。8ヵ月後奇跡的に目覚めるが、その間、ドイツは統一され、彼の母の信じた社会主義のドイツはどこかへ消えてしまっていた。
 心臓を病んでショックを与えては命にかかわる母の為に、アレックスは必死にもとのドイツを演出する。

 コメディなんですけど、あまり笑えない、痛ましいドラマでした。そしてとても心にしみるドラマでした。
 確かにおかしいんだけど、一生懸命嘘を作っていって披露しているときのなんとなく落ち着きのなさ、もぞもぞした感覚が見ていて付きまとっていて、笑いも半笑いくらいで固まっちゃう。
 お母さんが、お父さんの亡命のときに心を病んでしまうほどショックだった、そしてその代償のように打ち込んだのが社会主義だった、というアレックスの動機の説明は十分にあるので、話に無理がないけど、やはり見ていてアレックスのもとの世界を整えようとする、そして自分たちのいた世界が負けたのでない形で、今の状況と整合させようという苦闘は急激な社会の変化に取り残される人間のプライドがあげる悲鳴みたいに感じてしまう。
 不自由や窮乏の代名詞のような旧東側社会にしたって、みんな生きて生活してきたわけで、自分が一翼となって支えてきた社会がまさに一夜にして否定され、自分の人生さえも意味のないもののように扱われる。戦後の分断の間に出来た格差の為に、東側の住民はほとんど2級市民扱い。
 でもそれに対する違和感も抗議も西側の物と経済力の前にすごく無力。
 そして最後には、お母さんがアレックスをだます側に回って、お互いに優しい嘘でお互いの傷を癒しながら別れていく。
 ギプス実習のシーンやら、キューブリックへのオマージュだろうな、というシーンも楽しかったけど、これはドイツという国がひとつの時代を乗り越えて生れた映画なんでしょうね。

 あのレーニンのシーンでは、思わず彼の理想を考えちゃった。
 もしレーニンがソ連建国に成功せずに、ルクセンブルグみたいに思想家としてして記憶される存在だったら、果たして今の世の中はどうなっていたんだろうか…?


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