虫干し映画MEMO

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慟哭―小説・林郁夫裁判 /佐木 隆三著

2008年09月26日 | 
 光市母子殺人事件や、昨日の3人の男がネットで仲間になり、何のかかわりもない女性を殺した事件の報道などを見ておりまして、しきりに思い出されたのがこの本で読んだ裁判のこと。

 数年前に読みましたが、最近、講談社文庫から文庫版が出て、本屋に平積みになっておりました。オウム真理教事件の被告の一人、医者でもあった林郁夫の裁判を追ったもの。呼んでいると、被告・林郁夫が「何を考え、どう行動したか」がわかるような気にさせられました。サリン事件そのものを知るという意味でも意義の深いものだと思います。
 林郁夫という人はとても真面目で、責任も含めて物事を正面から受け止めようという姿勢を持った人で、それが希代のまやかし教祖に付け込まれる一因でもあったのかと、物事の皮肉な側面に暗澹ともしました。
 しかし、そういった人間であったからこそ、彼のやってしまった「取り返しのつかないこと」についての悔悟と自責は本物でした。
 そのことで、裁判が遺族の気持ちをさらに傷つけるものにならなかったのです。

 林被告の弁護は私選弁護人一人だけでした。著者の佐木隆三氏は「見事な弁護」と評価しています。光市の弁護団の展開した「真実」について、弁護として評価できるものであるのか、考えずにはいられませんでした。

 文庫版には書下ろし「その後のオウム裁判」も収録だそうです。また買わないといかんかなあ。


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