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虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

工作を通してできたお友だち (社会性の発達がゆっくりさん)

2012-06-23 15:45:48 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

前回までの記事の続きは今晩か明日に書きますね。

ユースホステルに来ていただく方の発表は来週中にはさせていただきます。

 

子どもの能力は無限大 1

子どもの能力は無限大 2

子どもの能力は無限大 3

で記事にさせていただいた時は4歳4ヶ月だった★くん。

今は1年生になりました。

人との関わり方はまだぎこちないところもあるけれど、

協力して物を作りあげたり、衝突しそうになっても何とか

我慢したり、話し合って解決したりできるようになってきました。

 

学校生活も普通級でまずまずうまくやっているようです。

学校の先生からは「休憩時間や昼休みにはセロテープや紙で恐竜などを

次々とこしらえていて、

それをきっかけに仲ののいいお友だちができてきました。

工作がとても上手ですね。どこかで習っていたんですか?」

とたずねられたそうです。

何でも学校に図鑑を持っていって、それを見ながら

ちゃっちゃと何かこしらえているようです。

 

今日から1学年上の子たちのグループに参加してもらうことに

なりました。

最初は照れてぐずぐずしながら、「先生、やどかりはぁ?」

と言ってお友だちの方を見ようとしなかったのですが、

やどかり用の迷路作りを提案すると

「ここんところ高くしないと」「それじゃぁ逃げちゃうよ」「こうしようよ」と

初めて会う子らと楽しそうに

会話を交わしながら迷路作りをしていました。

その後は、もって来た『宇宙』の図鑑を見ながら

「土星が作りたい。それから隕石も」と言い出し、お友だちも引っ張り込んで、

惑星作りに燃えていました。

 

学習タイムには漢字の練習と国語の文章題をしました。

しっかり学べました。

ずいぶん落ち着いて責任感が出てきて

うれしい限りでした。

 

 

 

 


自閉っ子が、ファンタジーの世界から出て、お友だちとの遊びに興味を抱きだすとき 2

2012-06-23 06:51:30 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

●くんも☆くんも写真の電車が気に入っていました。

電車についているボタンを押すと、「電車がまいります。黄色い線まで下がってください~」という

アナウンスが流れます。

「黄色い線、黄色い線」と言いながらわたしがブロックを並べて

ハムスターをその後ろに置くと、●くんも真似てお気に入りのクリーム色のハムスターたちを

並べ始めました。

(写真はそれを見た☆くんがハムスター並べに参加していたところです)

 

この時、●くんが電子音や録音した声などへの反応がとてもいいことに気づきました。

●くんは「~しよう」と遊びに誘うと、「うん、うん」と上の空で返事をしていて、

遊びの見本をこちらが見せ始めると、背を向けて自分の遊びに没頭しだすことが多いのです。

 

「~しよう」と誘って、「~しよう」と返ってきても、

身体も頭もその言葉の指すことをする方向にスイッチが切り替わらない様子です。

 

ですからお家で●くんのお母さんがクーゲルバーンのようなビー玉を転がすおもちゃを用意して

も、まったく遊ばなかったそうなのです。

 

でも虹色教室のビー玉がぶつかると、「タタタタッタタ~ン♪」とメロディーが流れる装置を

ピタゴラスイッチ遊びに加えると、とても熱心にこの遊びを続けていました。

「何かした後で同じ電子音を聞ける」という状況が

●くんの散漫になりがちな注意をひとつの活動にとどめる助けとなってくれているようです。

電車についているアナウンスの声も、●くんが遊びの誘いにスムーズに参加するための

手助けとなっていたようです。

 

他の自閉っ子たちとの遊びでも同様のことを実感したことが何度かありました。

自閉っ子が『バランサープラス』というパソコンソフトで通常よりずっと高い能力をしめすことが多く、

認知能力を向上させる取り組みでも成果をあげやすかったということもひとつ。

このソフトは一問ごとに正解不正解がわかりやすい電子音とともに

目で確認できるように作られています。

どこにも「何となく」というあいまいなところがないんです。

すべて同じシンプルなルールで成り立っているこのソフトは、

自閉っ子のやる気を引き出して、達成感を味あわせてくれるようです。

 

●くんはレッスンへの参加はまだ3回目ですが、わたしといっしょに何かすることに

とても安心感を抱いてくれているようです。

ひとり遊びに興じているときも、常にわたしの手の届く範囲で遊ぶ姿がありました。

 

一方で☆くんは●くんのお母さんがとても気に入った様子です。絵を描いたり、何か作ったりするたびに、

●くんのお母さんに見せに行っています。

警戒心が強くて他人に対する強い防衛的な態度を取り続けてきた☆くんが

次第に人に対する興味や信頼する気持ちが高まっているようで

うれしい変化でした。

 

(↑  ☆くんが●くんのお母さんのところの食べ物のおもちゃを持っていって、

「どうぞ?」「どれがいりますか?」とたずねて遊んでいるところに

●くんも参加しはじめたところです。)

 

☆くんのお母さんからこんな話をうかがいました。

なんでも、☆くんのお母さんが珍しくゲーム機でRPGゲーム(かなり大きい子向けのゲームです)をしていて、

途中で急に用事ができたので、そのままにして席を立ったそうです。

しばらくして戻ってみると、☆くんは自分でコントローラーを操作して

「文字で出てくる選択肢」を選びながら、

さまざまな場所を訪問してアイテムを購入したり、会話を交わしたりする

作業を終えていたそうなのです。

初めての出来事で、そんなことができるとは思ってもみなくて

とてもびっくりしたそうです。

 

わたしも☆くんの知的な力にびっくりするとともに

☆くんがRPGのなかで、いろいろな人のところを訪問し

コミュニケーションを交わそうとしたという話から

☆くんの心の世界の広がりも感じました。

 

現実の遊びの世界でも、以前の☆くんは教室でわたしの注意を引き付けることにしか関心が

ありませんでしたが、今は新しいお友だちの●くんのすることがとっても気になったり、

何か作ったら●くんのお母さんに見せて褒めてもらいたがったりするようになっているのです。

 

 

 


ユースホステルの来年度の予約、新規のレッスンについてのお知らせ

2012-06-22 21:04:01 | 生徒募集 イベント参加募集

大変申し訳ありませんが、来年度の予約等はコメント欄では受け付けていません。

現在、生徒数が多すぎて新規の募集はいっさいおこなっていないのです。

 

教室の生徒さん方は転勤等で遠方にお引越しされても

教室をやめずに数ヶ月に1回のペースで通ってくられる方がほとんどで、

生徒数が減ることはほとんどありません。

 

今年は数年ぶりに何名か新規のベビーレッスンの生徒(幼稚園入園までの期間)を募集して来ていただくことになったのと、

ひとりでレッスンに通っていた発達障がいの子のお友だちとして新しく来ていただいた方がいましたが、

今後数年間は新規のレッスン生を募集する予定や予約を受け付ける予定はありません。

ただ前年までのユースホステルのレッスン等に参加したお子さんたちに関しては

ユースホステルのレッスンの募集時に空きがある場合は来ていただくことにしています。

 

今回、ユースホステルのレッスンで「すでに予約が殺到していて……」と書いたのは、

教室に通っている子どもたちとその親御さんから

何度も何度も「今年もユースホステルのレッスンを楽しみにしています」とうかがっていたので、

「部屋数がどれだけ確保できるかなど未定なので、お約束はできませんが

わかりました」という形で、あいまいな形で「予約」としてお約束していた数があまりに増えたので、

ずっと楽しみにしていた子たちをがっかりさせてはいけないので、新しい応募は取りやめたのです。

 

レッスンの質を保つためと、ひとりひとりの子の成長をサポートするために

わたしが直接見て、きちんと関わることができる生徒数を厳守しています。

ご了承ください。


自閉っ子が、ファンタジーの世界から出て、お友だちとの遊びに興味を抱きだすとき 1

2012-06-22 14:13:17 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 1

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 2

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 3

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 4

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 5

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 6

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 7

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 8

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 9

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 10

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 11

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 12

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 13

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 14

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 15

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 16

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 17

 ファンタジーの世界にどっぷり浸かってしまう自閉っ子に、論理的に考えてることを教えるには? 18

で、一日中、自分のファンタジーの世界に浸かって遊んでいた●くんのレッスンの

様子を記事にさせていただきました。

その後、一度、同じ年長さんの男の子といっしょにレッスンをし、

その日の様子を 広汎性発達障がいの子とお友だちという記事にさせていただきました。

 

今日はその●くんと☆くんの2度目のレッスンでした。

 

前回のレッスン後、わたしはその日のレッスンで起こった出来事を

『ピッケのえほん』というパソコンソフトで簡単な絵本にして

●くんと☆くんのところにネット上で送っていました。

ピッケのおうちに絵本の見本があります。

 

☆くんはそれをお家で印刷して絵本の形にして教室に持ってきていました。

そして「おしろ」という題で

前回の遊びを再現した本を●くんに見せて

面白くてたまらないようにケラケラと笑いだしました。

この話、●くんもパソコンで何度も何度もしつこいくらい見たがって大爆笑していたそうで、(ものすごく単純なストーリー展開です)

紙の絵本の形になったものにも興味しんしんでした。

そこでわたしが、「またお城を作ろうか?」とふたりに提案すると、

☆くんが「高い高いマンションだよ。マンションを作らないと」と言いました。

「マンション、いいね。マンション作ろう」と☆くんにブロックを手渡しながら、

●くんに向かって、「●くんは、お城を作る?」とたずねました。

「うんうん」と少し上の空の表情でうなずく●くん。

土台やブロックを用意してあげました。

 

その隙に、☆くんはどんどんブロックを積み上げて

高層マンションを作っていました。

☆くんがエレベーターが大好きなことを思い出して、

「☆くん、このビルにエレベーターをつけようか?先生といっしょにエレベーターを作ろうか?」

とたずねると、口をへの字に曲げて、

「い~いよ~(いらないよの意)このマンションは中にエレベーターが

通っているんだから」と言いました。

 

☆くんは社会性の発達という面でゆっくりさんなのですが、

言葉を扱うのが上手な機転の利く子なのです。

『子ども脳機能 バランサープラス』というパソコンソフトで

知能テスト形式のゲームをして「発達年齢」を判定したところ、

ひとつを除いて残りのすべての分野で10歳児相当の能力という結果が出たそうです。

工作やドールハウスでの遊びを続けてきたことが、空間認知能力と語彙力や思考力の伸びに

大きな影響を与えてきたと感じています。

 

「い~いよ~(いらないよの意)このマンションは中にエレベーターが

通っているんだから」とわたしの提案をいったんは退けた

☆くん。

でも、しばらくしてから、そっと再び提案すると

快くエレベーターを取り付ける案にOKを出しました。

 

今回の記事では、☆くんという名前で紹介しているのですが、

実はこの☆くんは、

いったん拒否して受け入れる

という記事で★くんとして紹介していた子でもあります。

 

☆くんはどんなに興味を持つものにも、まずいったんは拒絶してみて、

それから長い静かな時間を経ると、

心を切り替えて、「OK!]と快諾することがよくあるのです。

ペットボトルで作ったエレベーターに、

●くんがハムスターを乗せています。

 

次回に続きます。

 


「飽き性の子」「持続力が弱い子」への働きかけ  (絵本大好きクラブ)1

2012-06-22 06:19:07 | 幼児教育の基本

どしゃぶりのなか、絵本大好きクラブを開かせていただきました。

事前に、「台風や大雨の際はできるだけお休みしてください~」とお願いはしていたのですが、

欠席は一組だけで、通常通りわいわい賑やかに過ごしました。

 

レッスンには、「何にでも飛びつくけれどすぐ飽きてうろうろしがち」という3歳後半の★くんと

「絵本を聴くのは大好きだけど、知的な活動にじっくり関わるのは苦手」という4歳後半の●くんが

参加していました。

 

わたしが絵本を読み始めると、絵本の世界に引き込まれて集中して聞いていた★くんが、

唐突に他の絵本を見始めたり、別の活動をしにうろうろし始めたりしていました。

もともとその話に興味をしめさなかったのなら

そうした姿も理解できるのです。

でも夢中になってわくわくした表情で絵本を見ていたかと思うと

いきなり興味がプツンと途切れて別のことをしだす姿が少し気になりました。

 

また、理由をたずねる問いにはきちんと答えられる一方で、

会話や指示のなかで耳にする言葉は誤って聞き取って、

とんちんかんな返事をしても平気という姿がありました。

 

本人の性質もあるし、3歳後半くらいだと

言葉は聞こえても言われている内容をイメージするのが難しい子も

まだたくさんいるので

それほど心配はいらないのかもしれません。

 

ただ親御さんの働きかけ方を少し調整すると

本来この子が持っている子どもらしい強い好奇心や素直に世界を

味わう力が、さまざまな場面でもっと発揮されるようにも感じました。

 

次回に続きます。

 

(風で遊ぶ理科工作の絵本を見て、作品作り。

上の見本どおり作るつもりが

異なるつなぎ方をしてしまったようです。

作った後で、本人が「あれ、あっちと違うね」と言いながら

うちわであおいで、よろよろ転がる様子を喜んでいました。)

 

 

 


親がこんな力をつけると子どもは伸びる

2012-06-21 19:51:30 | 初めてお越しの方

「頭ではわかったつもりになっても、
いざわが子に何かを教えようとすると
うまくいきません」
「同じことをしても、うちの子は
ブログの記事で紹介されている子のような反応をしません」という
声をいただくことがあります。

それで、直接、親御さんに会って、
どのように子どもに接しているのか見ていると、
いくつかの大きな問題に気づくことがあります。

ひとことでいうと、親御さんの、
『シナリオ力』(論理力の1つ)という「相手のことを知るための力が弱い」ため、
(弱いというより、そうした能力を、
自分の中に育てようと考えたことがないために)
子どもがだらだら~いやいや~うろうろ~とする
態度になっていることがよくあるのです。

子どもの無気力、無関心の原因が自分だなんていやですよね。

でも、考えてもみてください。
妙な例えですが……
私たちだって
自分が欲しくないものばかり、しつこく勧めてくるお舅さんとか、
自分の関心のないことばかり話し続ける姑さんとかと
四六時中過していたら、
意欲的に集中して、お舅さんや姑さんの話を聞こうなんて気持ちが
失われてきますよね。


『コミュニケーションのノウハウ・ドゥ・ハウ』  野口吉昭編 HRインスティチュート著  PHP出版

という著書によると、
この『シナリオ力』とは、

情報収集力  (相手の関心を引きつける情報を集める)

ビジョン共有力(相手のベクトルやゴールを共有する)

提案力 (相手の真の課題解決につながる提案をする)

という3つの能力です。

多くの親御さんが、相手ではなく、市場の情報を集めて、
(教材や習い事の情報を集めて)どちらがお得か見比べて、
判断する力は、
これまでの人生で磨いてきているのです。
でも、そうやっていったん集めて、選んで、決めたら、外注~
というパターンに慣れすぎて、
子どもという人間を相手にする場合、
自分自身、どのような能力を伸ばせばよいのか、ピンとこない
のかもしれません。

シナリオ力の3つに

『伝える力』(対話力の1つ)の

わかりやすい表現力

メッセージ力

パワースピーチ力

が加わると、次なる活動が生まれるとされています。
つまり、子どもがやる気を抱いて成長していく可能性が大きいのです。

有名な名コーチやカリスマ先生がいる習い事は、
後で紹介した『伝える力』(わかりやすい表現力・メッセージ力・パワースピーチ力)
はすばらしいノウハウを持っている可能性があります。

でも、個人的なその子の個性にフォーカスして
教室運営はできませんから、
基本的に『シナリオ力』はないものなのです。
だから、子どもの関心やビジョンや好むやり方などにピッタリ合えばいいですけど、そうでない場合のが多いのです。
それか、ある一時期は、ピッタリ合っていても、子どもの知能の成長とともに
飽きて嫌になる可能性も高いのです。

そうしたことを考えても、やっぱり、子どものやる気や伸びへの
家庭や親の影響力は
大きいですよね。
家庭が、教育の土台を作る場となるように、
親も少しずつ学んでいく~というのが、とっても大切なこと
と思っています。

過去記事でこんなことを書いたことがあります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
子どもの自然な知力の発達を見守りながら、
新しい「おわん」を作っては、どこでも、ポタンポタン水がたまり続けている
状態にすることが
親のちょうど良い教え方だと考えています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
実は、子どもだけではなくて、親にしても、
「こういう力が大事なんだ~」
「こういう部分を伸ばさなくては~」と目的をはっきりさせて、
おわんをつくって、それからポタンポタンと能力を溜めていく
というのがとても大切だと思っています。

親って、『フランチャイズ店の店員』の感性じゃいけないと
思うんですよ。

「最初にマニュアルを自分にインプットしたら、その後は、
それを繰り返すだけでOK」という捉え方です。

そうじゃなくて、『レストランの一流コック』のように、日々、自分を磨いて
成長していくような本当の意味での自分の成長が求められる
仕事なのでしょうね。

それは世間的に見て、
すばらしい親になるという意味ではなくて、

子育てという体験を通して、
「自分の中に新しい大切な力を育んでいこう」
「目の前の出来事ひとつひとつから、学んでいこう」
という柔軟な姿勢で、過していくということです。

「○○法」信者になって、
自分のやりたい育児法、教育法を突っ走っていくことや、
自分が夢見るゴールに子どもの手を握って、駆けて行くことではない
はずです。
努力は自分がするなら美しいものでも、
それを幼児という自分ではない存在に無理強いするなら、
支配やコントロールという醜さ以外の何ものでもありません。

「目の前の子どもを深く知る」
「子どもが自分を作り上げていく姿を、一歩下がって見守る」
「子どもが悩んでいるポイントに気づき、的をついた提案をする」

といった
相手を知る力『シナリオ力』を使って子どもと関わっていく技術は、
自分のやりたいことを子どもに投影する前に
学ぶ必要がありますね。

もし、相手の気持ちを察するのが極端に苦手で、
自分の子がどういう子か、何を望んでいるのか、何に関心があるのか、どんなとき喜ぶのか、どんな場合、意欲的か、どんなとき飽きてしまうのかといった詳細が、毎日いっしょにいても少しもわからない~という場合、

学習についてだけ「わからせたい!理解させたい!上手に教えたい!」と対話する力ばかりを
伸ばすのはどうなのでしょう?

親と子が同じ立場や視点に立っておらず、
お互いのビジョンが大きくずれていると、
親が熱心になればなるほど、子どもはやる気を失っていくという結果に
つながるかもしれません。

もちろん、「最初から、そういう能力がいる!」というわけではありません。

子育てにこういう力が必要なんだな~と気づくことで、
おわんができて、
それから子どもと過しながら、少しずつ学び続けることで、
ポタポタ~おわんに水が溜まるように
親の能力もアップしていくのだと思います。

大事なものは何か、気づいてさえいれば、
歩みがどれほどゆっくりでも、
必ず大成功が約束されているのではないでしょうか。

 

算数が得意な年長の★くんが、
去年に続いて夏の算数クラブに参加してくれました。
★くんは、去年は将棋に、今年はボーリングに夢中になっている男の子。

★くんは、好きな将棋やボーリング以外では、
何をするにもやる気がなさそうに
むすっとした態度で「そんなの知ってるし」といって、だらだらする態度が目立ちました。
他の子が、「やりたい!」「私!私!」と手をあげるときも、
「どうせ~なんでしょ」と気のない態度。

そこで、お母さんたちに席をはずしていただいている間に、
「そんなの知っている、つまらないと思うのは、
知っていると思いこんでいるものに隠れているすごいものを、見つけようとしないからよ。それができるようになれば何だって面白いの!」とビシッと告げて、
少し難しい課題をいろいろ与えました。

すると、この子にちょうどいい頭を絞らなくてはならない課題や、
うまくいかなくて四苦八苦する場面にぶつかると、
だんだんと、
笑顔と真剣な表情が浮かんできて、
友だちと協力しあっていきいきと過ごすことができました。

先取り学習といっても、単に暗記しながら先に進んでいくばかりだと、
大人から与えられる課題は、簡単すぎて面白くなかった~
という思い込みにつながる場合があります。

ある程度、力のある子には、
知っている知識も、他の視点から眺めたり、
工作などに生かす新発見を見出したり、より深く考えていく方法を教えていってあげないと、勉強をバカにするようになってしまいます。

帰り際に、親御さんにそのことを伝えていると、
「九九を今から教えるべきでしょうか?」という相談をお受けしました。

★くんタイプの子は
ただ九九を暗唱させる、九九のワークをさせるという
先取り学習をさせるだけでは、
学校で学ぶ際に「そんなの知ってるし~」とだらけた態度を作ってしまうことは目に見えています。

九九をさせるなら、覚えた九九を活用して、
算数パズルを解いたり、
ゲームをしたり、九九によって、算数の概念の理解を広げて、
最小公倍数、最大公約数、鶴亀算数、割算などの問題を考えることを
楽しむなどしないと、
ただ暗記するだけでは★くんの性質なら飽きがくるだろうと思われました。

そうしたときに、
大事なのは、親御さんが、

★くんはどんなとき、いきいきしているのか、

どれくらいのレベルの問題を、どのくらいの量解くのが楽しいのか、

だんだん自立させていくには、親がどこで手を引いていけばいいのか、

★くんの能力がしっかり生かせる勉強以外の活動はないか

といったことを、★くんの姿から受信していく
★くんとの会話から学んでいく

ことなのです。
九九を覚えさせたら良いということにだけ
気持ちがいっていると、
せっかく知的能力の高い子を勉強嫌いにしてしまう
かもしれません。

それと、知力体力がしっかりさんタイプの子には、
機嫌を取るような態度で接するのでなく、
子どもの集団でのリーダー役をまかせたり、家の手伝いをさせたり、
自然でのキャンプを体験させたりして、
精神的な成長をうながす必要があると感じました。
でないと、おませ なのがアダになって、
生意気でダラダラした態度を身に付けてしまいがちだからです。

子育て本で、「子どもを受容して」とあると、とにかく
可愛がってしまう方もいるのですが、
子育て方針は、
子どもの性質や能力、態度などを見ながら、
常に微調節していくことが大事です。

つまり、最初に親のマニュアルを覚えて、それを繰り返すだけでは、
個性にも成長にも対応できないのです。

あれもこれも~と考えるとパニックになってしまいますから、
ひとつずつ少しずつ、子どもとのいい関係を作っていけたら
いいですよね。
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話が少しそれますが、
今、子どもが、経済的な儲けの対象になっていますから、

「子どもというのは、競争心があるものだから、
そうした性質を利用して
頑張る子を作りましょう!」

と、まるで動物の調教師を目指すような感性で、
親を煽る方々もいます。

子どもをコントロールしたり、自分の指定するゴールに向かわせるために、
「子どもの性質や関心を知って」利用するってどうなんでしょう?
私はそういうの気分が悪いです~

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「教えすぎ」「構いすぎ」が人を潰す わが子に、社会で生き抜く真の力を持せたいなら、親は「育てない」を肝に銘じろ!
と言う「伝説の雀鬼」と呼ばれた桜井章一氏が、
『「育てない」から上手くいく』桜井章一著 講談社刊の中で
次のように語っています。
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大人が大事とする考えを一方的に押し付けるのではなく、
大事な考えや教えを間に挟んで大人と子どもが関係を絶え間なく調整しながら
五分五分のつきあいをする。
それが教育のあるべき姿ではないでしょうか。 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この五分五分の関係……を保つために、
子どもをよく知ること、子どもの思いをしっかり受信すること、
少しずつ手を放して、自分で歩み出すのを見守ることが大事なのですね。

子ども神輿作り の 進行状況 2  

2012-06-21 19:00:40 | 初めてお越しの方

子ども神輿作り、子どもたちの協力で着々と進んでいます。

今回は飾り付け部分の小物作りを手伝ってくれる子らがいました。

小2の☆ちゃんがシールを貼って

飾り付ける小物を作ってくれました。

くるみボタンの材料を使って、金色のボタンも手作りしています。

お神輿の下の部分の飾りつけ。

鈴をつけてぶらさげる赤いひもは、100円ショップのものだと細かったので

三つ編みをしています。

6年生の子の手さばきを熱心に眺める☆ちゃん。熱心すぎてにじり寄っています。

こんなにたくさんできました。

 

お神輿作りのお手伝いしてくれていた六年生の○ちゃんは、中学受験を控えています。

すでにかなりの実力がついてきたので、虹色教室には

思考力の必要な難問だけを解くために来ていただくことにしました。

 

受験問題を最後の問題から3つまで解いていく形でチャレンジすると、

きちんと自力で解けていました。

模試では最後の問題に手付かずになっていることがたびたびあったそうなのですが、

どうも時間が足りなくなって解けていなかったようです。

すでにできている問題を効率的に短時間でとくにはどうすればいいのか、

研究していく時期がきたのかもしれません。

 

 


自分の時間を過ごしている子は、脳が、ちゃんと抽象的な思考ができる状態に 自然に発達していく

2012-06-21 07:07:44 | 思考力

コメント欄で次のような質問をいただきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この4月から、4年生の理科を担当しています。
1学期は、自然観察、天気と気温の関係、電気のはたらきと学習を進めてきました。(教科書の順です。)
前の2つの学習では、テストをしても大した差は見られず、平均点もよかったのですが、
「電気」の授業・テストをして、これは!と歴然とした差が子ども達の中にあるのを感じました。
前の二つの学習は、目に見えるものを扱っています。
気温にしても、体感でどの子もある程度の経験量がある。
でもこの「電気」は、目に見えない上に、経験にも大きな差が。
問題を解こうとすると、抽象的な思考を要するんですよね。
するととたんにできなくなる子が続出!
見えないものをイメージするのがかなり難しい様子。
担任の先生方に聞くと、算数でも同じような状態になっているとのこと。
抽象的な考え方って、どれくらいで身につけていくものなんでしょう?

9歳~10歳の4年生の今が、そういう時期なのかなとは思うのですが、
(だからこそ、教科書にもそういった内容を扱う学習が出てくるのだと思うのですが)
一朝一夕に、身につけられる力ではないと思うのですが、
そうであっても、ただ何もせずそういう力がついてくるのを待つしかないのでしょうか?
そんなことを考えながら、ブログを読んでいたら、この記事に出会いました。
自分の手を使って、切ったり、貼ったり、組み立てたり・・・。
「工作」する中で、抽象的なものの見方などを育てることもできるのでしょうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この質問をいただいてから、以前、教員をされていた☆さんと、

このコメントの内容についてお話する機会がありました。

(質問主さんと☆さんは別の方です)

「抽象的な見方や考え方は、どのようにして育つのでしょう?」とたずねると、
☆さんは、小学校高学年と低学年のふたりのお子さんをこれまで育ててくるなかで、
感じた考えを聞かせてくださいました。

☆さんの上のお子さんは、小さい頃から飲み込みが早く、記憶力が良くて、人と関わりながら学ぶのが
大好きな子でした。
おまけにまじめで聞きわけが良く、学習習慣もつけやすくて、
自分から進んでワークをするおりこうさんでした。
それで、☆さんは、この子にさまざまなことを教え、この子は驚異的なスピードで
マスターしていました。

ところが、このおりこうさんぶりが災いして、
9歳~10歳になった頃、抽象概念の理解につまずきはじめました。
この子はとても賢い子ではあるのですが、それまで大人が教えることを
できるだけ効率的に受動的に学ぶ習慣が身についていました。
そうして、教わってできるようになることの繰り返しでは、学習をどれほど先に進んでも、
それが抽象的な見方に発展していかないところがあったのです。

「ひとつの答え」を急いで求めようとする早押しクイズをしているような態度や、
大人から正しい解き方の説明をしてもらって、できるだけ
素早く正確にマスターしようとする態度は、
抽象的な思考につながりにくいどころか、
それを邪魔するような遠ざけるような面があったのです。

一方、下のお子さんは、工作やブロック制作や自由遊び、親子の会話や日常生活の中で、
自分で体験して学ぶことが主で、☆さんは、
極力、「教える」ことを控えて子育てしてこられました。
すると、下のお子さんは、まだ低学年なのにも関わらず、
自分で論理的な筋道を立てて考えたり、抽象的な概念も正確に理解して問題を解いたり、
高い思考力で問題解決をするように
育ってきました。

そこで、☆さんは、上のお子さんにも、教え込んで、その日のうちにわからせてしまうことを避け、
自分で自由に試行錯誤するゆったりした時間を与えるようにしました。
また、日々の生活をゆっくりマイペースに過ごせるようにしたり、
友だちとの遊び時間を大切にしてあげるようにしました。

すると、時間はかかりましたが、上のお子さんにも、
抽象的な見方や考え方が芽生えてきました。

☆さんは、現在も教育関連のお仕事をなさっていて、
そこで、子どもたちの知能の発達や抽象概念を扱えるようになる子とならない子のちがいについて、
ていねいに観察しておられました。

☆さんいわく、
「抽象的な見方や考え方は、
大人に抽象的思考を教えられたから身につくものではなく、

子どもが自分で日常の体験を味わうことが大事で、
そうして自分の時間を過ごしている子は、脳が、ちゃんと抽象的な思考ができる状態に
自然に発達していくものですよ」
というお話でした。



次回は、『よみがえれ思考力』(ジェーン・ハーリー  大修館書店)
に書かれている抽象的な見方や考え方を育むための方法を紹介しますね。

『よみがえれ 思考力』 ジェーン・ハーリー  大修館書店
には抽象的な見方や考え方について、次のように書かれています。(要約して紹介します)

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十代の初期には、物の世界を習熟し終えて、抽象的な考えの操作へ進まなければならない。

ある人は、ピアジェのいう「形式操作の思考」である抽象的な思考の段階に
達しているのは大人のに3分の2だけだと考えている。

おそらく、抽象的な問題に対して創造的な答えを生み出すことが要求される
「課題発見」とよばれる究極の段階に到達する者は、きわめてわずかだろう。

われわれの社会が、そういった能力をもつ人々をもっと多く必要としていることは
誰も異存はないだろう。


<抽象的思考の手立て>


◆ 演繹的推論  

人間の脳は経験の中に規則や秩序をさがし求めるようにされている。
幼い子どもは情報のさまざまな断片に注目し、
大きな規則や広いカテゴリーへとそれらの情報をまとめていくことを
学習する。

「昆虫は全て足が6本みたいだ。だから昆虫であるということの規則は足が6本であることに
ちがいない」というのは、帰納的推論である。
この語、一般的原理を取り入れ、未知の状況へ応用する。


◆ 仮説検証

問題について可能性の高い答えを考えだし、うまく機能する答えが見つかるまで
系統的に検証していくことは、科学的な推論の基盤である。
一つの考えに固執して、事実を無理やりそれに合わせてしまう傾向がある時期は、
大人の援助が必要。
毎日出会うさまざまな問題に、心をひらいて対処していくことは、
この仮説検証という重要な成長へと向かう明確な水路である。


◆ 命題的論理

「メアリーはサリーより背が高く、サリーはマージーより背が高い。一番、背が高いのは誰でしょう」
という問題は、具体的操作を習得した子なら理解できる。

しかし、「雨が降っている。夏にちがいない。とすれば、夏であれば雨が降るのじゃ」といった
命題を理解することは困難である。


◆ 比率

比を扱う問題を心で操作できるようになるには、具体的な材料や公式を必要とする。


◆ 二次表象システム

代数と文法はどちらも別のシンボル体系を表すシンボル体系である。
幼い子たちには、規則を抽象的に応用することを期待すべきではない。

◆ 「抽象的な心的態度」

状況の外側に立ち、通常のかたちでは相伴うことのない考えを
結びつける能力。
隠喩、文の中ではあからさまに述べられていないような推論、ある種のユーモア、類推、
自分自身の現実的な評価などである。

感受性の高い大人であれば、質問を正しくすることで、この種の推論へと
子どもたちを引き上げることができる。 


◆ 抑制することの重要性


われわれは脳が活動的であることを好むが、過度に活性化された脳というのは、
一度にあまりにも多くの刺激に反応し、
考えから考えへと飛躍してしまうといった問題を生じやすい。

前頭葉の発達の研究では「内言」(自分自身との心的な対話)の重要性を強調している。
衝動的に行動を起こすのではなく、問題に対して心の中
で一通りの言葉を使って考えることができる生徒は学校において優秀であり、
高次の思考技術をより早く獲得することができる。

◆ 意志決定

身につけた新しい精神的見識が、個人の意志決定のための全く新しい構造を
若者たちにもたらす。その構造を使って実践するにつれて、
彼らは依存したいことと主張したいことを
ふるい分けるようになる。

            (『よみがえれ 思考力』 ジェーン・ハーリー  大修館書店 より)



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前回の記事で、知人の

「抽象的な見方や考え方は、
大人に抽象的思考を教えられたから身につくものではなく、

子どもが自分で日常の体験を味わうことが大事で、
そうして自分の時間を過ごしている子は、脳が、ちゃんと抽象的な思考ができる状態に
自然に発達していくものですよ」

という発言は、上の<抽象的思考の手立て>を読むと
納得できるものです。


「演繹的推論」ができるようになるには、
自分で身の回りの世界から規則や秩序に気づく体験の蓄積が必要です。

でも、大人が教えたり、図鑑を見て
最初から一般的原理を教えたのでは、脳が経験不足に陥ったり、
考えずに鵜呑みにする悪い癖が身に付きますよね。


また、「仮説検証」についても、
子どもに教え込んでいく学習をさせると、
「自分が大人に教わったものだから正しい」という
よく考えを練りもせずに、
ひとつの考えに固執して、事実の方を無理やりそれに合わせてしまう
癖がつきがちです。

私が、大人や現代の環境が、子どもから、
「内言」が発達することを奪っているように感じています。
自分自身との心的な対話は、子どもが自分でいろんな体験をして、
ゆったりしたその子の時間を与えられなかったら
生じてきませんよね。

子どもをお勉強マシーンのように捉えて、次々課題をこなさせて、
そうした過度に脳を活性化させるばかりの活動が続くと、自分で自分と対話する静かな時間が
失われるのです。
その静かな子ども自身の時間を、
学習漫画やパソコンやゲーム機でする知識をインプットする
知能が向上しているような錯覚を覚える活動で埋めては、
お得感(時間を無駄にせずにすんだという理由で)を感じるという親御さんがいます。

抽象的な思考力の発達という点からすると、そうした反射的な思考回路ばかり
強化するのはとても危険なことのように
思われます。

子どもはボーッとしてゆったり過ごす時間に、
自分で自分と対話をし、自分の経験を振り返ってそこから規則を見出したり、
自分の意志で選びたいものについて夢想したりするからです。

といっても、ただ放任して時間を十分に与えたからといって、
どの子も抽象的な見方や考え方ができるようになるかというと、難しい問題です。

-抽象的な見方や考え方ができるようになるには、
次のふたつの体験がベースになっています。

◆ 身体、五感でする体験。

◆ 物に触れて、操作しながら具体的に考えること。

このふたつの体験の豊かな蓄積の上に、
抽象的思考は成り立ちます。

「抽象的な思考力がないと「9歳の壁」を越えられない……
だから、思考力を鍛えるワークや頭脳パズルを早くから学習に加えよう」
と考える方もいます。

でも、それは抽象的な思考力のごく一部にしか通用しないかもしれません。

思考力を養う教材で抽象的な思考を養おうとするのでは、
実際、抽象的に考える段階になったときに、

身体感覚からのインプットの量も、

遊びや創作活動を通して触れる具体的に目で見て、手で扱って考えた体験の量も
少なすぎるからです。


物事を正しく認識し、文字や数など抽象的なシンボルを扱う思考力は、
身体を通して学び、感覚を統合させていく体験と、
おもちゃや工作の素材に、自由に働きかけて、
手を使って何かを作りだしたり、想像力を使って見立てたり、自分のアイデアを形にしたり、
うまくいかない時には工夫して解決したりする体験を通して養われます。 


↑の写真は、ユースホステルでの工作作品です。
機械が大好きな2歳の★くんが、クーラーの室外機のファンが回る様子に
強い興味を示していたので、
お母さんが★くんといっしょに作ったものです。

★くんは、紙コップで作ったファンをくるくる回したり、
スイッチをつけたり消したりする真似をして、大喜びでした。

2歳くらいの子にとって、「ある物が、何かの内部にある」という関係も、
実際、手で触れて出し入れしてみないと
難しいものです。
このようにティッシュ箱の中に何かが入っている状態というのも、
体験して初めて、「わかる」ものだし、
こうして手で扱えるものになってから、
「こうしたらどうなるのかな?」「こうやったらこうなるのか」
「あの機械は、こんな風な力で動いているのか」「くるくる回るのはこうするから回るのか」
と具体的な体験を通して考えることができるのです。


抽象的な思考をする力を育むには、

「身体と五感を通じてする体験の蓄積」

「遊びや創作活動を通じてする具体的な物の操作」

「内言を育むこと」

「親子の対話」

「読書」

「身近な大人が抽象的な思考を使う姿を見せること」

の6つが、とても大切なように感じています。

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虹色教室のグループレッスンでは、それぞれの年齢の子たちが好む遊びの機会を提供して、
それがより洗練されたものに展開する手助けをしています。

さまざまな年齢のグループレッスンに付き合っていると、
非常にさまざまな内容の濃い遊びや活動を展開する幼児たちに比べて、

小学生のグループは年齢が上がるにつれて、
地味であまり活発とはいえない遊び方に変化していきます。

<教室で子どもたちがしている遊び>

◆機能
 1歳くらいから、目と手を協応させる遊び、手指の感覚を育てる遊び、身体を使ってする遊び
がはじまります。

★象徴
 2歳くらいから、つもりやみたてがはじまり、
  3歳くらいから、ごっこ遊びがはじまります。
  模倣や社会的役割の理解と獲得が進みます。

☆構造
 2歳半くらいから。
 空間認知、創造性、仲間との協調性が育む構造遊び。

○数の世界
 2歳半くらいから。数の敏感期とともに遊びが展開していきます。
 

□ルール
 3歳半くらいから ボードゲーム カードゲーム 

●知恵
 4歳くらいから 頭脳パズルなど ニキーチンの積み木など

■抽象的思考

対話の中で、抽象的な考え方を深めていく



でも、表面的には、同じトランプゲームを繰り返したがったり、
だらだらおしゃべりしていたがったりして非生産的に見える時も、
それに適度に関わっていると、子どもの内面で具象から抽象へ、
興味の変化が起こっていて、大人の手を借りてそれをより深めたがっているのが
わかります。

現代の小学生は、きょうだいが少ないので、自分の家にも近所にも、
少し年上のお姉ちゃんお兄ちゃんという存在と接することができない子が多いです。

そのため、抽象的な思考力が発達する時期には、
同年代の友達同士のおしゃべりや、ひとりでぐるぐるろ同じところを回っていた考えを、
身近な大人にそっと軌道修正してもらう必要があるように思います。

間違いを正してもらうのではなくて、
脱線しそうになる考えを、ひとまわり大きな枠組みから捉えたり、
他の視点から眺めたりできるような
質問をしてもらったり、相槌を打ってもらうことがいるんだな、と感じているのです。

先日も、小学校高学年の女の子たちのグループで、

「私はいつも運が悪いわ。先生(私のこと)は、今、運が悪いんだったら、
後でいいことがたくさん起こるんじゃない?なんて言ってたけど、
前に運が悪かったときから思うと、今は後だと思うけど、やっぱり今も運が悪いわ」とぼやいている子がいました。

「運が悪いって、具体的にいうと、どんなことがあったの?」とたずねると、
「具体的にいうって?」と聞き返します。

「ほら、よく石につまずくとか、くじびきで、はずればっかりだとか、実際に運が悪いと思う理由になった
ひとつひとつの出来事のことよ」

「なら、ウノをするときは、運が悪い。配られたカードが悪いのばかりだから……でも、ボードゲームとかだと、運が良いときもある。トランプのときも、あんまり運が悪くない。」

「Aちゃんは、ウノだと運が悪くて、他のゲームだと運が悪くないのね。
それなら、私はいつも運が悪いわって言葉は、私はウノをするときいつも運が悪いわ、っていう
ある部分に限定した言い方に変えた方がいいんじゃない?」

「そうだけど……」と、ちょっと不服そうに口ごもりながらも、考え込んでいました。グループのお友だちも
この問題についていろいろ考えていました。

<AはBである> (私はいつも運が悪い)

なんていう子どものつぶやきも、それをテーマに対話をすることによって、抽象的に考えていく方法を
学ぶ機会になります。

思春期に近くなるにつれ、子どもたちは、
活発に楽しげに遊びを繰り広げるのではなくて、
こうした日常で感じた心のささくれのようなものを相手に、
「ああでもない、こうでもない、でも……」とぐずぐずと、悩んだり愚痴ったりするように
なります。
でも、よく聞いていると、それは抽象的な思考を試して
練習している場合が多いです。
脳が、そうした脳内の言葉だけの操作を求めるように
なるんですね。

でも幼い頃から、「はやくはやく」とせかされて、
ひとつの正解を求めて練習を積むような訓練をたくさんしている子は、
こうした自然な抽象的な思考への移行が見られないときがあります。

子どもにゆっくりと考えを練る時間を与えてあげたいですね。




子ども神輿作りの進行状況

2012-06-20 23:29:38 | 工作 ワークショップ

閃いたアイデア

の記事で写真を載せていた壊れた蓄音機。

楽器のため響くように作られていたのか

中身を取り除くと見た目よりずっと軽いです。

ぼちぼちと工作をして

おおまかな形ができてきました。

教室に来た子たちが気まぐれに製作を手伝ってくれています。

 

園芸用のはりがねのかごを芯に使っています。

 

飾りつけをしていくのが楽しみです。


現代を蝕む 自己コミュニケーション障害(ディスチミア)と感情制御の障害(アレキシサイミア) 10

2012-06-20 19:26:45 | 教育論 読者の方からのQ&A

前回、紹介した『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』で名越先生が、

こんなことをおっしゃっています。

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小さな合理性ではなく、大きな合理性に向かうこと。

大きな合理性というのは、日常のミニマムなレベルで見ると、実は得てして、不合理な姿を

していると思うんですよ。

それをどれだけ引き受けられるかというのは、結構大きなポイントだと思うんです。

                    心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」 名越康文 角川新書

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タイトルのディスチミアやアレキシサイミアの話からはちょっと脱線するのですが、

今日の年少さんと年中さんのレッスンでこんな話題で盛り上がりました。


レッスンに見学に見えていた生徒の子の祖母が、

「うちの家系はどうも算数や数学が苦手で、英語や社会科なら勉強してなんとかなったけれど

算数や数学はどうにもならなくて……。算数の得意不得意は生まれつきのものでしょうかね?」といった

ことをたずねられました。

 

その場には、別の子のお母さんで、算数や数学がとても得意な方がおられました。

話が盛り上がってきたときに、その方が遠慮がちに

こんなことをおっしゃいました。

 

算数や数学が得意というのは別に特別な能力ではなくて、

「ひとつめはこれこれ」「ふたつめはこれこれ」「みっつめはこれこれ」と

いくつか、もしくは何段階か順を追って考えていければ

誰でもできるようになってくるもの。


算数や数学が苦手とおっしゃる方は、「ひとつめはこれこれ」の時点で

最終的な答えがまだ見えてこないので、あきらめてしまう。

「できない」のではなくて、何段階かの最初の1歩で結果が見えないと

そこから考えるのをやめてしまうだけ。

その点、社会科や英語は、「ひとつめはこれこれ」で問いと答えが

表と裏のようにシンプルにつながっていることが多いですよね

 

ちょっとわたしの解釈を入れて書いていますが、だいたいこんな内容でした。

 

それを聞いて、「本当にそうそう!その通り!」と思わず相槌を打ったわたし。

 

算数の得意不得意が生まれつきの能力に影響されるかどうかは

わたしが意見を言える範疇にはないのですが、

算数や数学が苦手だったとおっしゃる親御さんたちが、

子どもが算数や数学が苦手になるような接し方をしたり、

そうした環境を作ったりしがちなのは、感じているのです。

 

「数学苦手となる接し方や環境」とわたしが考えている決め手となる部分が、

まさしくこの方が指摘したことでした。

 

そして、

記事の最初に紹介した名越先生の言葉とも

重なるように感じられました。

 

算数や数学が苦手だったり、論理的に筋道を立てて考えるのが苦手だったりするのは、

能力的に「できない」というより、

問いと答えが一本の線でつながっているのが好きで、

最初の一手というか、

はじめの一歩目であいまいさが残っているようなら、さっさとあきらめてしまうから

結果的に苦手となってることが多々あるのです。

 

大きな合理性よりも、小さな合理性、つまり

ささいな損得勘定に左右される生活を送りがちなのでしょう。

 

小さな合理性のどこが算数や数学が苦手な子になる接し方や環境作りと

つながるのかというと……。

 

たとえば、子どもと過ごす日常で

大人が最適な判断をして、予定を取り決めて、

合理的に事を運べば、そうすればそうするほど快適に過ごせるし、

目に見える成果も期待できるでしょう。

 

でもそうして合理的に大人が仕切れば仕切るほど、

子どもは与えられたことをこなすだけで

自分で粘り強く頭を使う場面が失われるはずです。

そうして一枚でも多く計算プリントや漢字プリントをこなしたところで、

それは「ひとつめはこれこれ」「A=B]と暗記して

反射的に答えが出せるようになっているだけかもしれないのです。

 

 

 

大きな合理性というのは、日常のミニマムなレベルで見ると、実は得てして、不合理な姿を

していると思うんですよ。


という言葉は、算数が得意になるかどうか、なんてことを超えて

生きていく上でのとても重要な指南となるものだと感じています。

 

「それをどれだけ引き受けられるか」

が結構大きなポイントということは、

子育てというそれこそ「究極の不合理の連続」とも言えるものに向き合うときに、

どの親も突きつけられる選択ではないでしょうか?

 

「すずめのお宿」で、帰り際に選ぶおみやげを

小さな損得勘定に囚われて「大きなつづら」を選ぶか、

それとも徳を感じさせる判断で「小さなつづら」を選ぶか、

それは「結果志向」か、「学び志向」かを選ぶのとも

重なるのではないでしょうか?