学びのプラスあるふぁ:日常の気付き

人の人生、それぞれが皆オリジナル。街を歩き人に話しかけることから「なるほど」と納得できる発見がある。

一歩先の心配り

2019-11-12 15:26:39 | 日記
先週の土曜日の夜は久しぶりに女房と京都まで出かけた。娘から譲り受けた京都劇場のチケットは現在公演中の劇団四季『ノートルダムの鐘』の観劇券。僕たち夫婦が若い時に見た映画の『ノートルダムのせむし男』を思い出して、駅ビルの中にある立派な劇場での公演に胸をときめかせて二人で出かけたのである。片道1時間半の久しぶりの二人の遠出である。開演は夕刻5時半ということで、出かけるにしても余裕のある時間である。長距離を歩くことや、階段の上り下りに自信のない高齢の二人がゆっくり時間をかけて、駅ではエレベータ―を探しながら近鉄電車を二度乗り換えての小旅行であった。
手にした席は二階のS-5,6。受付を通り抜けてエスカレーターを乗り継いで出くわしたのは二階席への長い階段。何十段あるのだろうか、数える気も失せる高さが目の前に立ちはだかっている。エレベーターもエスカレーターもないとなれば一段一段登らなければならない。ヒーヒー、ゼーゼー言いながら時間をかけて登り切った。女房の方は心臓の病も抱かえている。やっと登り切って後は開演までにトイレをすますことだけである。この劇場の二階席、上段と下段に分かれていて男女のトイレも上段が男性、下が女性用。「トイレは上ですか」と聞く僕に「ハイ、申し訳ありません」と案内係りの可愛い若い女性。二人で案内表示に従って登った最上階に女性のトイレがない。男性のトイレから出てきた人が教えてくれた。「女性トイレは下ですよ。この劇場は構造上の欠陥があると思います」と彼は言った。まさか!案内嬢に確かめて階段を必死になって昇ってきた努力はなんだったのか。“おもてなし”を威張っているこの日本でこんなことが起こるのだ。気が回らない、配慮ができない若者が、社会の片隅にほんの一握り実際に存在するのだ。電車の優先座席を譲ってくれる人がいるかとおもえば、スマホに熱中して周りのお年寄りに気が付かない人を何度も目撃した。若者の代わりに僕が席を譲ったこともある。“ひとつの善行はもう一つ別の価値を生む(One good turn deserves another.)”と言う諺があって、おもてなしの本当の意味はこの諺の中に在ると思う。ブツブツ文句を言うのも聞くのも好きではない。でも、案内嬢も僕もどこかに何かが欠けていたのだろう。“誰でも人は失敗から学ぶ”のだと言い聞かせた。